第四十一話:深紅の炎の末裔と痛ましい真実の暴露
上階の広間に緊張が張り詰めていた。
オウレルを抱えたカイレンは、新たな敵と対峙している。
深紅の男のエネルギーは“生きて”おり、
ディストラの炎の不動性やカイレンの灰の冷たさとは異なっていた。
—「ザール!レンギ!準備しろ!」
カイレンは疲弊した声で命じ、胸の冷たい怒りを動かした。
彼には聞いている暇も、分析している暇もなかった。
カイレンはオウレルをそっとレンギに渡し、
黒い石から“忘却の炎”による電光石火の一撃を放った。
それは殺すための攻撃ではなく、逃げるための隙を作る一撃だった。
冷たい白い炎が敵の胸に向かって放たれる。
だが深紅の男は静かに立っていた。
彼の周りには液体のように流れる深紅の炎のオーラ。
それは密度の高い炎で作られた、柔軟な盾のようだった。
深紅の炎は、白い忘却の炎を吸収した。
まるで灰の効果を無効化しているかのように。
—「無駄な攻撃だ、灰を持つ者よ。」
男の声には、レンギとオウレルにとって聞き覚えがあった。
だが、それが誰のものか特定できなかった。
男はカイレンから視線を外し、
ショックと不安を抱くレンギに集中する。
—「また騙されたのか、レンギ。
お前はこの二人の侵入者を信じるのか?
それとも、お前を追い詰めている“秘密”を知る者を信じるのか?」
レンギは激しく震えた。
周囲で点滅していた微かな雷が止まる。
──どうしてこの男が、雷の秘密を知っている?
その疑問が、彼の記憶の壁を揺さぶった。
レンギが答える前に、城全体が激しく揺れ始めた。
それは幻ではなく、本物の揺れだった。
遠くの塔から轟音が響く。
純粋な炎ではない、雷と燃焼の混じった爆発音。
—「くそっ!」
ザールは紫の目を点滅させ、叫んだ。
「内部反乱だ!
裏切り者たちが我々の脱出を利用している!
イナーに反対するディストラの勢力だ!」
赤い警報が城中に鳴り響く。
炎の兵たちは反乱の源へと集まり始めた。
深紅の男はその混沌を見て、苦い笑みを浮かべた。
—「今が潮時だ。」
「私はこの内部の混乱を待っていた。
私はお前たちの敵ではない。
計画が始まる前に、お前たちが死ぬのを防ぎに来たのだ。」
—「計画だと?」
カイレンの手の中で、灰の石が微かに震えた。
—「そうだ。
ディストラは今、外の裏切り者と戦っている。
我々は内部に進まねばならない。」
男は手を伸ばし、深紅の炎を操って扉を封じた。
それは攻撃ではなく、退路を閉ざす“保護”のための炎。
—「私について来い。
今の目的は脱出ではない……
もっと深く潜入することだ。
安全に話せる場所がある。」
カイレンは躊躇しつつも従った。
信頼はしていなかったが、直感が告げていた。
──この混乱の中で生き延びる唯一の道は、彼と行くことだ。
彼らは複雑な通路を抜け、
やがて中庭を見下ろす広いホールに辿り着いた。
そこはディストラの城とは思えぬほど静かで、
木製の家具と奇妙な植物が並んでいた。
まるで“人間の血”を持つ者の住まいのようだった。
カイレンはオウレルをソファに寝かせ、
レンギとザールは警戒を緩めない。
深紅の男はため息をつき、椅子に腰を下ろした。
—「レンギ、オウレル。
無事でよかった。
だが、なぜここに?」
—「あなたは誰ですか?」
オウレルが青い目を細める。
—「私たちを知っているのですか?」
レンギが問う。
男は苦い笑みを浮かべた。
—「何を言っているんだ?
……それより、ハナはどこだ?」
レンギとオウレルの身体が硬直する。
—「ハナ……!
あなたもハナを知っているの?」
オウレルが呆然と声を漏らした。
—「彼女はアーカルの世界に入った。」
レンギが慎重に言う。
男の顔に怒りが走った。
—「アーカルの世界だと?
なぜだ?無謀なことはするなとあれほど言った!」
—「何を言ってるんだ!」
レンギが怒鳴る。
「どうしてあんたがそんな口をきく!」
—「裏切り者だ!」
オウレルが叫ぶ。
「彼女をアーカルの門に導いたのは裏切り者よ!」
—「裏切り者……?誰のことだ?」
—「先生アリオンのことよ!」
男の顔が凍りついた。
—「アリオン……?
なぜ彼を先生と呼ぶ?」
レンギが怒りで声を荒げた。
「彼は俺たちの先生だったんだ!」
—「だった……?今は違うのか?」
—「そうよ!彼は裏切ったの!」
オウレルが叫ぶ。
「私たちを壊そうとしたの!」
男は深く息を吐き、二人をまっすぐ見た。
—「誰が彼を君たちの先生だと言った?
本当に覚えているのか?」
—「もちろん!」
オウレルが反発する。
「子供の頃からずっとそうだった!」
—「……分かった。」
男は静かに頷いた。
「だが、ハナはいつからアーカルの世界に?」
—「二ヶ月半前だ。」
レンギが答える。
—「心配するな。
アーカルの世界は危険ではない。
彼女は受け入れられる。」
—「どうしてそんなことを知っているの?」
オウレルが不安げに問う。
—「理由は後で話す。
だがまず、どうやって君たちはここに来た?」
レンギは黄金の石とゲートの出来事を説明した。
話を聞き終えると、男は深く首を振った。
—「まさか君たちがそれを使うとは……。」
レンギが言葉を遮る。
「あなたはいったい誰なんです?」
男は立ち上がり、静かに言った。
—「信じられないかもしれないが……
私は君たちの本当の先生だ、レンギ、オウレル。
私の名は――ジン・ヴァリオ。
君たちが“アリオン先生”として覚えている存在は、
アーカムが作った幻影だ。」
沈黙。
レンギは冷たい笑いを漏らした。
「冗談だろ……?
俺たちが信じると思うのか?
そんなバカな話があるか!」
—「レンギ、落ち着いて!」
オウレルが叫ぶ。
ジンは悲しそうに微笑んだ。
—「怒って当然だ。
だが、時間がない。
真実はすぐ明らかになる。
私は君たちを守るために離れただけだ。」
そして、ジンはカイレンに視線を移した。
—「灰を持つ者よ。
お前はこの力の中心だ。
我々はさらに奥深く進む。
アーカムに立ち向かい、
ディストラ――そしてお前から盗まれたものを取り戻すために。」
★★★
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