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ケアン:ネブリムの罪 (Kaern: Niburim no Tsumi)  作者: Bayan
第三章:アクシリア:忘却の炎... アイデンティティと罪の灰の間で
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第三十八話:閉幕の儀式と二重の裏切り


第六区への帰還は、単なる行進ではなかった。それは全旅程の戴冠であった。


最後の数歩は、二つの世界、一つの生と別の生との間の境界線となっていた。


空気は張り詰めていたが、それは通常の緊張ではなく、カイレンの掌にある黒い石が生み出す冷たい静寂によるものだった。


彼らは、最初に入場を拒否された、あの崩れかけた壁の前に立っていた。


しかし、今回は困惑はなかった。


アリオーン・ペリウスは、勝利が目前であることを知る軍の指導者のように自信に満ちており、一方、カイレンの瞳には、全てを飲み込んだ灰の冷たさが宿っていた。


レンジとオウリエルは、黙ってアリオーンとカイレンを見つめながら後退した。


もはや二人の間に会話も囁きもなかった。彼らは、決定的な瞬間が到来したこと、そしてそれぞれが自身の運命を選択しなければならないことを理解していたのだ。


アリオーンは進み出て、ポケットから**赤みがかった黄金のディストラ・キー**を取り出した。


石は、炎と雷の力で強く輝き、まるで最後の帰還の時が来たことを感じているかのようだった。


「最初の時、お前は怒りと不完全な火の力で門を開けようとしたから失敗した。」


アリオーンは、誇りの震えを帯びた声で言った。


「だが、今日、お前は己の力ではなく、お前の告白によってそれ(門)を開く。」


アリオーンは壁を指差した。


ディストラの紋章(火)がゆっくりと現れていたが、それは深い黒さの層に覆い隠されていた。


「この黒い灰は拒絶ではない、ヴァニーラが置いた永続的な封印だ。


いかなるディストラの子孫も、自身の傲慢を放棄し、自らの手で生み出した灰を飲み込んだことを証明しない限り、その世界を越えることはできない。」


アリオーンは頭を上げ、カイレンを見つめた。


その視線は、尊敬と支配の入り混じったものだった。


「ネブリムの傲慢に汚されていない子孫、カイレン。お前こそが、その代償を負うことができる唯一の者だ。


お前はトンネルで黒い石を運び、罪の重荷を背負った。


そして今… お前は完全な紋章を背負わなければならない。」


アリオーンは赤みがかった黄金の石を壁に置き、それからカイレンに向かって手を差し伸べた。


「黒い石を壁に置け、カイレン。


灰と火を一つにするのだ。


そして、門が開いたら、我々の世界を越える。


お前が最初だ、次に私、それからレンジとオウリエルだ。」


カイレンは黒い石を強く握りしめた。


それは死んだ静寂の塊だと感じていたが、今や彼の力の一部だった。


彼は力の鍵を持っていたが、アリオーンへの信頼の鍵は持っていなかった。


カイレンは、他の者が気づかなかったことを理解した。


アリオーンは、二つの石を壁に置くよう求めたのは、ただ開くためだけでなく、通過の最初の衝撃に耐える儀式の中心にするためだった。


アリオーンはカイレンに近づき、手を彼の肩に伸ばした。その眼差しは、献身的な導き手のそれへと変わった。


「お前が心配しているのは分かっている、カイレン。だが、私がここにいる。私はお前の補助の火だ。


お前に続く最初の者になろう。


お前が出発点であり、私が制御点だ。


一度越えれば、何も心配するな。お前は今、自由だ。」


言葉は理にかなっているように見えたが、カイレンの内側の灰の冷たさが真実を暴いた。


アリオーンは、カイレンを通過の衝撃に利用し、ディストラに入った途端に彼を完全に支配するつもりだった。


カイレンは、アリオーンが灰の代償を負うことなく、彼の世界へと押し進める燃料だったのだ。


アリオーンは、完全な支配を確実にするため、すべての力を集める必要があった。


彼は、まだ火の円の端に立っているレンジとオウリエルを見て、ポケットに手を伸ばした。そこには**青いイクォーラ・キー**があった。


「レンジ、オウリエル。時が来た。」


アリオーンは、議論を許さない声で命じた。


「青い石を私に渡せ。


我々が開く門はディストラの門だが、青い石の存在は、通過の決定的な瞬間にイクォーラからのいかなる干渉も防ぐだろう。」


その瞬間、オウリエルが先に動いた。


彼女の動きは攻撃ではなく、沈黙の拒絶だった。


「師よ。」オウリエルは、アリオーンが彼女からは慣れていない鋭さで言った。


「この鍵はあなたのものではありません。


これはイクォーラの鍵、私たち二人のものです。


帰還を確実にするため、あるいは強引に開く可能性のあるいかなる門をも閉じるために、私たちと共に留まるべきです。」


アリオーンは増大する怒りで彼女を見たが、レンジが隠れた雷のオーラを彼女の周りにまといながら、オウリエルを支持するために介入した。


「師よ、私たちはこれを保証として必要としています。


通過への信頼は完全ですが、私たちは、あなたがお持ちでない忠誠のための別の選択肢を持たなければなりません。」とレンジは言った。


アリオーンは、今、力ずくでは青い石を手に入れられないことを悟った。


青い鍵をめぐる争いは、延期せざるを得ない。


「よかろう!持っているがいい!


だが、それを使用すれば、その結末は死という裏切りになるぞ!」アリオーンは叫んだ。


アリオーンは最後の鍵に対する支配を失ったが、彼はまだディストラ・キーと**灰のカイレン**を所有していた。


カイレンは頷いた。決断の時だ。


カイレンはアリオーンの罠にはまるつもりはなかった。


カイレンは両手を上げた。


右手に**黒い石(灰)を、左手に赤みがかった黄金の石(火)**を強く握った。


儀式が始まった。


カイレンの存在から白い忘却の火が流れ出し、赤みがかった黄金の石から燃え盛る火の力と合流した。


そこには争いはなく、完全な融合があった。


まるで、ディストラの古代の歴史がヴァニーラの罪を認めているかのようだった。


壁の上の黒い紋章が崩壊した。


光の爆発は起こらなかった。


むしろ、門は、深い黒さが巻き付いた混乱した緋色の炎の形で開いた。


それは単なる火ではなく、ヴァニーラの灰が埋め込まれた純粋なディストラの火だった。


「開いた!」アリオーンは叫び、彼の瞳は輝いた。


「ディストラよ、世界が戻ってきたぞ!」


カイレンは、二つの石を強く握りしめ、忘却の火を周りに燃やしながら、門に向かって突進した。


彼は、今アリオーンが入れば、カイレンは支配されてしまうことを知っていた。


門の端に触れた瞬間、カイレンはアリオーンの方を振り向いた。


彼は微笑んでおらず、その顔は灰の冷たさで凍てついていた。


「私の導き手にはならない、アリオーン。」カイレンは言った。


「お前には、代償を支払う覚悟がなければ、ディストラの世界に入る資格はない。」


そして、彼は冷たい白い忘却の火を門の縁に向けた。


それは、飲み込まれた灰によるエネルギーの障壁を作り出すことに似ていた。


この火は、黒い石を携帯していない者が通過するのを防いでいた。


白い火はアリオーンに衝突した。


彼を傷つけはしなかったが、彼のエネルギーを凍結させ、最後の通過への突進を妨げた。


「何をしている、愚か者め!止めろ!」アリオーンは叫んだが、手遅れだった。


カイレンは、黒い石と赤みがかった黄金の石の両方を持ち、ディストラの門の内部へと完全に突入し、消えた。


カイレンが放った忘却の火に支配され、門は彼の背後で激しく閉じた。


壁は静寂に戻ったが、今や灰の封印が組み込まれた完全なディストラの紋章を宿していた。


アリオーンは呆然と立ち尽くした。


彼の黄金の鍵は失われ、灰の鍵も失われた。


最も重要なことに、支配が失われた。


「くそっ!」アリオーンは叫んだ。


「なんて愚かだ!奴は鍵を盗んだ!金と黒が失われた!」


怒りと絶望が彼を襲った。


もはや論理はなく、何が何でも帰還するという狂気だけがあった。


アリオーンは、赤い瞳を狂気で点滅させながら、レンジとオウリエルを見た。


彼らは彼の失敗の証人だった。


「残された道は一つしかない!」アリオーンは叫んだ。


「力ずくでイクォーラの門を開かねばならん!


オウリエル!お前が橋となるのだ!」


アリオーンはオウリエルに向かって突進し、彼女のポケットに手を伸ばして青いイクォーラ・キーを掴もうとした。


オウリエルは最初、アリオーンの狂気にショックを受け、ゆっくりと動いた。


だが、彼女は青い石をポケットではなく、手のひらに持っており、その存在を知らせていなかった。


「だめです、師よ!」オウリエルは叫び、遠ざかろうとした。


「強制的な通過はあなたと私を殺します!


新しい計画を考えなければ!」


「考えるな!忠誠は絶対的な服従だ!」アリオーンは叫び、彼女をエネルギー的に服従させるための、火と雷のエネルギー波を攻撃として放った。


目的は殺害ではなく、完全に無力化し、彼女のイクォーラのエネルギーを強引な通過のために制御することだった。


火と雷の波はオウリエルに激しくぶつかった。


彼女を傷つけはしなかったが、彼女は気絶して地面に倒れ、彼女のエネルギーは暴力的な通過のために強制的に準備された。


レンジは恐ろしいほどの遅さでこの状況を見ていた。


彼は、アリオーンのカイレンへの裏切りを見て、そして今、オウリエルを死に至る橋として利用する覚悟を見た。


もはや忠誠はなかった。


残された選択肢はただ一つ。オウリエルを救い、彼女に代わって代償を支払うこと。


稲妻の速さで、レンジはオウリエルに向かって進むアリオーンの前に飛び出した。


「僕が代償を払います!彼女を連れて行かせません、アリオーン!」レンジは叫び、それから体内に残っていたすべての雷のエネルギーを放出した。


彼はアリオーンを攻撃せず、カイレンが通過した閉じた門に向けて雷を放った。


目標は、封印を揺るがし、彼らが強制的に通過できるエネルギー的な裂け目を生み出すことだった。


閉ざされた門は叫びを上げ、そして狭く混乱した黒い裂け目がその中に現れた。


それは門ではなく、死に至るエネルギーの亀裂であり、虚無のディストラのエネルギーが流れ出ていた。


レンジは、「何をしている、愚か者め!私たち全員を破壊するつもりか!」と熱狂して叫ぶアリオーンの混乱を利用した。


そしてその決定的な瞬間、レンジは超高速でオウリエルを抱え上げた。


片腕で彼女を抱き、もう一方の腕を燃え盛る裂け目に向けた。


「中に入るぞ、オウリエル!」レンジは囁き、それから二人で狭いエネルギーの裂け目の中へと突入した。


犠牲は完遂された。


レンジとオウリエルは、閉ざされたディストラの地獄の中で姿を消した。


エネルギーの裂け目は即座に閉じ、壁は静寂を残した。


アリオーンは、息を切らしながら一人立ち尽くした。


彼は人間世界に取り残され、三人の弟子もおらず、三つの鍵もなかった。


彼の手元に残ったのは、オウリエルが突き飛ばされた瞬間に彼女の手から落ちた青い石だけだった。


★★★


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!


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