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ケアン:ネブリムの罪 (Kaern: Niburim no Tsumi)  作者: Bayan
第三章:アクシリア:忘却の炎... アイデンティティと罪の灰の間で
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第三十二話:燃え盛る始まり


ケアンとウリエルの間には沈黙が続いた。まるで言葉の一つ一つが、新たな怒りの火花を燃やす燃料となるかのようだった。ケアンが唸り声を上げ、ウリエルが見開き、反抗的な目で見つめる中、アリオン・ベリウスは静かに二人の間に立った。彼の手はまだかすかな温かさを放ち、周囲の空気はほんの少し前に起こった地震を彷彿とさせた。


「ケアン」アリオンははっきりとした声で言った。「今は他に選択肢はない。」

ケアンは肩の痛みを無視し、拳を握りしめた。


「自分の道は自分で決める!一体誰が私に強制すると思っているんだ?すぐに石を返せ。仲間の元へ戻らせてくれ。彼らは私を必要としている!」ウリエルは軽く笑い、掌の中の青い石を振り回した。


「仲間か? 灰と化すのを見届けるために戻ってきたのか? 我が主が介入していなければ、冷たい『波』のせいで、お前はこの丘でただの水蒸気になっていただろう。」


ケアンは歯を食いしばり、アリオンの方を向いた。その目は抑えきれない怒りで燃えていた。


「なぜこんなことをする? 一体私に何を求めているんだ?」 アリオンはケアンを見ずに、蒸気の残骸が立ち上る地平線を見つめた。そして静かに言った。


「炎の音を聞かせてやりたい。お前の力は単なる遊びではない… 古の闘争の一部なのだと理解させてやりたい。備えなければ、ヴァイオラ全土を脅かすことになる闘争だ。」


「何だ?闘争か?」 ケアンは深い疑念を込めた声で尋ねた。


「ニブリム同士の闘争だ」 アリオンは答えた。赤い目は真剣な表情で輝いていた。 「あなたは火の神エニルの末裔です。あなたが倒したカルダーは水の神ミラーラの末裔です。そして、火と水、デストラとイクラの間のこの争いは、今に始まったことではありません。」



ウリエルは興奮して飛び上がった。まるで説明に加わりたいかのように。

「私もミララの血統…だが、師匠と共にいる!私は『イコラ』に分類されるが、師匠の思想を信じている!」


アリオンはウリエルに耳を貸さず、ケアンに視線を集中させた。

「この石が鍵だ、ケアン。ただの水晶じゃない。第六地区で君が探している第三の門の封印だ。君の中に、君が持つべき炎の力…君が制御すべき力を見出せなかったために、君を拒絶した門だ。」


ケアンは拒絶された瞬間を思い出し、カルダーの強大な力の前に自身の炎がいかに弱かったかを思い出した。疑念が忍び寄り始めたが、彼は屈しなかった。

「仲間は…彼らはどうなるんだ?」彼は声を潜めて尋ねた。


アリオンは静かに頷いた。

「彼らは大丈夫だ。彼らの力は君ほど弱くはない。氷、空気、そして水はカルダーの波からすぐに回復するだろう。レンジを遣わして彼らの様子を確認し、無事に元の場所へ送り届けさせたのだ。」


「レンジ?」市場でウリエルと一緒にいた若者を思い出しながら、ケアンは囁いた。


「今は問い詰める時ではない」とアリオンは声を荒げて言った。「ケアン、問題は簡単だ。君には二つの選択肢がある。アカデミーとヴァイオラに戻り、イコラに追われ続け、無知と弱さゆえに遅かれ早かれ死ぬか。それとも…私と一緒に来なさい。君の内なる炎に耳を傾け、それを使ってポータルを開き、想像をはるかに超える力を得る方法を教えてあげよう。」


アリオンはケアンを深く見つめた。

「石は、君がそれを運ぶ準備ができるまで、戻ってこない。決めるのは君だ。」


ケアンはウリエルの手の中の青い石と、カルダーが蒸発した場所を見つめた。それから、かつて見たこともない力で、毅然と立ち尽くすアリオンを見た。彼はかつて心に誓った約束を思い出した。「もし第六管区が何かを隠しているなら…我々はそれを突き止めなければならない」ネロとアリシアのことを思い出した。


もしこれが力と知識への最速の道なら、彼はそうするしかなかった。


ケアンはかつての自分の一部を捨て去るかのように長いため息をつき、落ち着いた、しかし苦々しい視線で頭を上げた。

-「私も共に行く」



ウリエルは興奮して手を叩いた。

「ふぅ!うまくいったわね!でも、ケアン、私は君の友達じゃない。君をじっと見張っているんだから、忘れないで!」


ケアンは冷笑的に彼女を見た。

「弟子にはならないけど…この戦いのパートナーにはなる。必要なら一人でも戦うわ。」


アリオンはかすかに微笑んだが、目には浮かばなかった。それから彼は遠くの丘を指差した。

「よかった。時間を無駄にしている暇はない。君を拒絶した門はすぐに開けられるだろう。ミララの血統が再び我々に追いつく前に、四つ目の石を見つけて残りの扉を開けなければならない。」


アリオンが最初の一歩を踏み出し、ウリエルがケアンに悪戯っぽい笑みを浮かべながら続いた。

ケアンは少しの間立ち止まり、振り返って廃村の方角を最後に一瞥した。 地面に倒れたレイナーの顔、そしてニラ、ルクス、レオノールの疲れ切った顔を見た。彼は心の中で誓った。「レイナー、全てを解き明かすために戻ってくる。そして、自分のものを取り戻すために戻ってくる。だが、戻った暁には…決して弱気にならない。」


それから彼はアリオンとウリエルに追いつくべく急いだ。灰も、弱さも、そしてつい最近の過去も、全てを後にした。彼の前には、炎の末裔の炎に燃える新たな道が広がっていた。


ケアンの力への道は始まったばかりだった。しかしそれは、彼の意志に反して、彼がこれまで直面したどんな敵よりも危険かもしれないマスターの炎の下で始まったのだ。


アリオン・ベリウスはケアンの更なる反応を待たなかった。彼は丘の端へと力強い足取りで歩みを進めた。彼の手はまだかすかに輝き、まるで彼らを導く炎の羅針盤のようだった。


ウリエルはケアンの傍らを歩き、ニヤリと笑みを浮かべながら彼に寄り添っていた。

-「どうやら『アカデミー』を去る決断をしたようだな。賢明な判断だ、この愚か者め。」


ケアンは彼女を見ずに、アリオンの背中に視線を釘付けにし、かつてニブリムをあっさり倒したこの男の強さを分析していた。


「私は何も見逃していない。真実への近道を選ぼうとしている。そして、それが分かったら…怠っていたことに戻る。」


「では、まずは弱い炎を制御することから始めてくれないか?」ウリエルは皮肉を込めて尋ね、大きく息を吐いた。「怠惰な弟子ではないことを願う。我が師アリオンは愚か者には我慢ならない。」


「私は誰の弟子でもない。」ケアンは低い声で鋭く答えた。


「その通りだ。」ウリエルは軽く笑い、掌からブルーストーンを引き抜き、彼の目の前で揺らした。「だが今は…鍵を持つ者に従い、道を知る者の計画に従うのだ。」


重苦しい沈黙が訪れ、それから彼らは足早に歩き出した。



旅は約1時間かかり、それは並大抵のこととは程遠いものだった。ケアンがかつて感じたことのない速さで、まるで足元で距離が縮まっていくかのようだった。村や幹線道路を避け、見慣れない道を進んだ。ケアンは初めてニブリムの速度を体験した。それは彼が経験したことのない力であり、普通の人間をただの鈍重な生き物に変えてしまう、隠された力だった。


彼らはヴァイオラから遠く離れた岩場に到着した。そこには二つの巨大な岩の間に隠された入り口があった。アリオンが手を振るや否や、岩はカーテンのように動き、広くて暖かい家に通じる狭い通路が現れた。


家の中には、落ち着いた表情で、黒っぽい実用的な服を着た若い男が待っていた。それは二日前に市場で一行が出会ったレンジだった。彼は古くて丸めた地図を握りしめていた。


「師匠」レンジは敬意を込めて言ったが、その目は好奇心に満ちた様子でケアンに釘付けだった。


「レンジ」アリオンはケアンを指差して答えた。「こちらはケアン・ヴァルミル。先ほど話したエニルの末裔だ。今は我々と共にいる。」


ケアンはレンジを鋭く見つめ、低い声で尋ねた。「仲間たちに何をしたんだ?」


レンジは突如として襲い掛かってきたことに驚きもせず、静かに頷いた。


「廃村に戻った。波の影響は甚大だったが、彼らは無事だった。氷、空気、そして水…彼らは回復力に優れている。彼らを安全な場所から移動させ、あなたが探索任務に出発したため、彼らは航行を続けられないと伝えた。」


「探索任務?」ケインは歯を食いしばった。


「誘拐されたとか逃げたとか言うよりはましだ。彼らに疑問を残しておいた方が、彼らの一時的な安全のためには良いだろう。」 アリオンは厳しい口調で言い、レンジの方を向いた。「アカデミーとヴァイオラはどうなった?何か報告はあったか?」


「今のところ何もない。カルダーはアーカルやヴァニラの注意を石に向けたくないのだ。彼らにとっては、石の消失は単なる出来事としか思えないだろう。だが、急いで行動を起こさなければならない。」


---


三つの石…そして三つの扉


アリオンは時間を無駄にせず、家の中央にある木のテーブルを指差した。そこには地図が山積みで、オイルランプが備え付けられていた。


「これで石が三つになった」とアリオンはテーブルに両手を置きながら言った。「最初に見つけた二つの石では、今のところ一つの門しか開けられなかった…アーカルの門だ。」


「アーカルの門?」ケアンは信じられないといった様子で尋ねた。


「守護者と巨人の門、地上のニブリムの門だ」とアリオンは簡潔に説明した。 「今は我々の関知するところではない。だが今、お前が持っていたエニルの石のおかげで、鍵が三つ手に入った。残る門は三つ、デストラ、イクラ、そしてヴァニラだ。」


アリオンはコートのポケットに手を伸ばし、さらに二つの石を取り出した。一つは柔らかな赤金色の光を放ち、もう一つは深いエメラルドグリーンに輝いていた。彼はその二つの石を、ウリエルが渡した青い石の隣に置いた。


三つの石は、まるで互いに語りかけるかのように明滅した。


「赤金色の石はデストラ(アニル/ゼリック)の門の石。エメラルド色の石はアルカル(アルゴン)の門の石だ」とアリオンは石を指差しながら言った。


「そして青い石は…イクラ(ロマ/ミララ/セヴィル)の門石だ」とウリエルはケアンを見ながら付け加えた。


ケアンは凍りついた。三つの石。三つのニブリム。 あと三つの門。


「第六地区の門だ」アリオンは屋敷の静寂を突き破る声で言った。「彼女はエニルの支配力を必要としていたから、君を拒絶した。そして君がエニルの血統だから…おそらくデストラの門、炎と雷の門だろう。」


「どういう意味だ?」ケアンが尋ねた。


「憶測に時間を費やすなということだ。」アリオンはきっぱりと答えた。「計画は単純だ。イコラがカルダーの死と石を手に入れたことに気付く前に、今すぐ第六地区へ向かう。イニルの石を使って第三の門を開ける。」


アリオンはケアンを深く見つめ、不安とためらいを天秤にかけた。


「レンジ、ウリエル、そして私が外からの護衛を務める。だが、門に入るのは君だ。」


ケアンは空気が重くなるのを感じた。門に入るため…ニブリムの領域へ。


「なぜ私が?」 ケアンは尋ねた。


「お前が鍵だからだ」とアリオンは答え、鋭い笑みを浮かべた。「そしてお前は火の子孫だからだ。大いなる戦いを始める前に、お前は自らの火を取り戻さなければならない。そしてそれは、お前の祖先が築き上げたディストラの世界に踏み込むことによってのみ可能となるのだ」



レンジは青い石を手に持ち、テーブルへと歩み寄った。


「準備しろ。月明かりが弱まり次第、移動する。今夜、第六地区は空っぽではない。カルダーの襲撃後、イクラがこの地域を監視しているかもしれない。」


ケアンは両手を握りしめた。怒り、不安、そして興奮が彼を包み込むのを感じた。もはや選択の余地はなかった。争いは始まった。好むと好まざるとに関わらず、彼自身もその一部となってしまったのだ。


「わかった」ケアンは落ち着いた声で言った。「いつ移動するんだ?」


「今から1時間後だ」アリオンは黒マントを羽織りながら答えた。「これは、君が自分の力を制御する最初のチャンスだ、ケアン。情熱を冷まさず、自分自身との約束を破るな。」


アーリエルは彼を挑発的に見つめ、それから振り返った。


「君が思っているほど愚かではないことを証明してくれるといいがな。」


ケアンは沈黙したまま、テーブルの上の三つの光る石を見つめていた。


彼の目の前には、地面に横たわるレイナーの姿と…強くなるという約束だけが残っていた。


今夜…ケアンは新たな道への第一歩を踏み出す。これは、燃え盛るディストラの世界への最初の一歩となるのだろうか?

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