第三十一話:全てが燃え上がり… 避けられない選択
アリオン・ベリウスは高い岩の上に立ち、左手は燃え盛る炭のように赤く燃えていた。彼は弱々しく微笑み、カルダーを見上げた。カルダーは、まるで大地そのものが怒りをぶちまけたかのように、突然周囲に燃え上がった炎を消そうとしていた。
カルダーは冷淡さを消し、驚きに変わり、叫んだ。
「お前…お前はエニルの末裔か!」
アリオンの表情は変わらなかったが、声は剣の刃のように鋭かった。
「そしてお前は…ミラーラの失われた波に過ぎない。方向を見失った水は…泥と化していく。」
彼が手を振ると、大地の下から巨大な炎が湧き上がり、鞭のように空気を鞭打った。カルダーは激しい波動でそれを打ち返し、轟音とともに炎に激突した。 濃い蒸気が辺りを覆い、視界は遮られたものの、猛烈な熱気は隠せなかった。
霧の中心から、青い剣のように水が裂け、カルダーの手の中で昇り、アリオンは渾身の力を込めてそれを振り下ろした。しかし、炎は生きた盾のようにアリオンの体を包み込み、水の剣の一撃を火山の火口に落ちる雫のように溶かした。
アリオンは軽く笑った。
「水の剣? 鋼鉄を溶かすのは私だ…一滴の雫が私を傷つけられるとでも思っているのか?」
カルダーは怒りに燃え、両手を天に掲げた。地の底から巨大な水柱が立ち上り、巨大な渦を巻き、まるで海が全てを飲み込んだかのように、奔流のようにアリオンを襲った。その光景は、全てを消し去ろうとする洪水のようだった。
しかし、奔流の中から炎が昇った…いや、炎ではなく、小さな太陽だった。 赤黒の炎の玉が、触れた水滴をことごとく飲み込んだ。炎の洪水は瞬く間に蒸気へと変わり、蒸発する蒸気の悲鳴が辺りを満たした。
カルダーは衝撃に叫び声を上げた。
「だめだ…火が水を呑み込むはずがない!こんな…ありえない!」
アリオンは一歩前に出た。その目は燃えさしのように輝いていた。「お前はいつも不可能なことを言う…火の末裔がやって来て、お前の法は私には関係ないことを思い知らせるまでは。」
すると彼はその場から姿を消し、カルダーの背後に現れた。彼が手を上げると、地面から燃え盛る炎の渦が噴き出し、カルダーの体を生きた枷のように包み込んだ。炎は彼を焼き尽くすだけでなく、彼の水を飲み込み、飲み込み、彼が水に変わろうとするほどに強くなっていった。
「ああ!」カルダーは蒸気で声を詰まらせながら叫んだ。「これはただの火ではない…これは…イニルの火だ!」
アリオンは近づいた。穏やかながらも槍のように鋭い声で。
「いつの時代も、水の末裔は我らの炎を嘲笑う…そして真実に気づくのは遅すぎる。水は我らを消し去るのではない。むしろ、我々は水に養われ…そしてより明るく燃えるのだ。」
彼は手を上げ、周囲の炎を全て集めた。炎は空気を呑み込み、巨大な球体へと渦巻き、まるで空に昇る第二の太陽のように輝いた。その下では大地の熱さえも震えていた。
カルダーは最後の必死の叫びを上げ、体から純青の水の巨大な波を放った。その波はミララの古の力を宿していた。しかし、それはまるで不滅の残り火の壁にぶつかったかのように、近づく前に砕け散った。
「炎…波よりも強い」アリオンは冷たく言った。
そして、彼は炎の玉を放った。
それはカルダーの体に叩きつけられ、その場は赤と白の光に包まれ爆発した。続いて熱波が岩を焦がし、地面を黒いガラスに変えた。カルダーの叫び声が、彼から聞こえた最後の言葉となった…そして彼は蒸発し、灰となって風に舞い散った。
辺りは静まり返った。焼け焦げた大地だけが残った…そしてアリオンは、まだ燃える手と穏やかな笑みを浮かべながら立っていた。
ケアンは呆然と立ち尽くした。彼は目の前の光景が信じられなかった。たった一人の男が、これほどの強大な力で、ニブリムを一瞬にして倒したのだ。その力の痕跡は、熱く、生き生きと空気中に漂っていた。
その時、彼は柔らかく、かすかな声を聞いた。
「大丈夫か?」
ケアンは背筋に震えが走り、ゆっくりと振り返った。目の前に少女が立っていた。足音も気配も感じなかった。彼女の目は海のように大きく見開かれ、髪は太陽の光のようだった。彼女は手を伸ばし、柔らかな手がケアンの手に触れた。
彼は心臓が高鳴るのを感じながら一歩後ずさりした。
「あなた…市場でばったり会ったあの子ね!」
彼女は一瞬目を見開き、かすかに微笑んだ。それから、まるで傷以外何も見ていないかのように、ゆっくりと血を流す彼の傷ついた手を見下ろした。
「痛いでしょうね…あなたの手はひどく傷ついています。」
ケアンは拳を握りしめ、彼の手を振り払おうとした。怒りが彼を襲った。
「私たちを見ていたのですか?私たちに何の用があるんですか…石のことですよね?あなたたちはそれを狙っているのですか?」
ウリエルは何も悪いことをしていないかのように、視線を揺らさず静かに頷いた。
「ええ。もし私がその石を狙っているなら…渡して。傷の手当てをしてあげるわ。」
彼女は素早く彼の手から石を受け取った。石はまだ光っていたが、まるで彼女がそれを鎮めたかのように、彼女の手のひらに収まった。
ケアンは信じられないというように目を大きく見開き、後ずさりした。
「誰がお前にそれを持って行く許可を与えたんだ?!返せ!」
ウリエルは彼を冷静に見つめ、そして言った。
「石のことは心配するな…私が守るから。」
ケアンは苛立ちながらため息をつき、そして叫んだ。
「何だって?!」
「ああ、ところで、私はウリエル・レーン。あの人は私の師匠、アリオン・ベリウスです。彼はあなたを弟子にすることにしたんです。そういえば、聞くのを忘れていました…あなたの名前は?」
ケアンは怒りで顔をこわばらせた。まるで彼女の言葉ではなく、「弟子」という言葉だけを耳にしたかのようだった。
「あなたには関係ない!私は彼の弟子にはなれません!誰が私の師匠になるんです?」
アーリエルは軽く笑い、嘲るような笑みを浮かべながら眉を上げた。
「生意気な人ね。」
ケアンの表情が硬くなった。
「石を返して邪魔をしないで!」
アーリエルはゆっくりと首を振り、真剣な表情に戻った。
「まずはお礼を言うべきでしょう。」
ケアンは、もはや手に入らなかった石を握りしめるかのように、両手を握りしめた。
「なぜ私が?」
「だって、あなたを救ったんだから。」
ケアンは怒りがこみ上げてくるのを感じ、苦々しく首を振った。
「ああ、そうだな…ごめん。下がって。」
アーリエルの口元が苛立ちで引きつり、目が細くなった。
「おい!謝れなんて言ってない。感謝しろって言っただろ!」
ケアンはまるで子供を相手にするかのように冷たくアーリエルを見た。
-「同じだ!」
-「何だって?!」アーリエルは叫びながら一歩前に出た。「え、同じってどういうこと?!全然違うじゃないか!一体どうしたんだ?本当に馬鹿だな!」
ケアンは歯を食いしばり、叫んだ。
-「何を言ったんだ、馬鹿野郎!」
-「馬鹿野郎、俺が言ったんだ!」ウリエルは大声で言い返した。「それに、俺と師匠に感謝しろ!」
ケアンは降参したように、大きく息を吐いた。
-「わかった、師匠には感謝する…だが、お前には感謝しない。お前は俺を救ってくれなかった。」
ウリエルの心の中で、新たな葛藤が始まった。「なんてこった、こいつを殺したい!本当に馬鹿で、愚かで、狂人だ!うわぁ…どうしてこの馬鹿が師匠の弟子になろうとするんだ!師匠は師匠に何を見出したんだ?ただ…」
ウリエルはケアンから顔を上げると、彼が眉をひそめてこちらを見つめていた。
会話は宙に浮いたままだった。アリオンは丘の頂上に立ち、燃え盛る手を静かに握りしめ、秘めた笑みを浮かべながら全てを見守っていた。 この闘いは始まりに過ぎないことを知っていた…全てを変える長い旅の始まりを。
アリオン・ベリウスは静かに彼らへと歩み寄った。周囲の地面は彼の炎でまだ温かかったが、彼は涼しい風のように感じられた。かすかな笑みが顔に浮かんだが、その目はケアンとウリエルの間の緊張をじっと見つめていた。
「ああ…どうやら二人は仲良くなりつつあるようだな」アリオンは冗談を言うように静かに言った。
ウリエルは意地悪そうに笑い、ケアンを指差した。
「師匠!あの子が一緒に行くって言ったんだぞ!」
ケアンは慌てて叫んだ。
「おい!そんなこと言ってない!仲間はまだここにいるぞ!」
アリオンは静かに振り返った。
「心配するな…大丈夫だ。そうすれば家に帰れる。」
ケアンは鋭く首を横に振った。
「家じゃない…アカデミーだ!」
アリオンは軽く驚き、眉を上げた。
「あ…本当?アカデミーで勉強してるの?」
ウリエルは何かを思い出したように、突然手を叩いた。
「そういえば!まだ名前を教えてくれないのね!」
彼女は明るい笑顔で一歩近づいた。
「さあさあ…名前を教えてくれ。もうチームじゃないのか?」
ケアンは拳を握りしめ、そして諦めたように息を吐いた。
「ケアン…ケアン・ヴァルミル。」
ウリエルは軽く名前を繰り返した。
「ああ、ケアン…なんて名前だ。…うーん…ちょっとかっこいい。」
「ちょっと?」ケアンは緊張した様子で答えたが、アリオンは謎めいた笑みで緊張を破った。
「あのね、ケアン…仲間のところへ帰るんだったよね?」
「もちろん」とケアンはきっぱりと言った。
しかし、ウリエルの声が再び場の空気を破った。
「だめだ」
ケアンは驚いて彼女の方を向いた。
「何だって?」ウリエルは腰に手を当て、反抗的な視線を向けた。
「だめ!あなたは私たちと一緒に来るのよ。あなたは私のトレーナーの弟子になるのよ…あのアカデミーとは違って、あなたはとても強くなるわ」
ケアンは震えた。怒りと驚きが入り混じった声だった。
「何だって?!」
アリオンはしばらく黙り込み、鋭い視線をケアンに釘付けにした…まるで、この子供じみた言い争いの裏に、運命的な決断が隠されているかのように。




