第二十七話:大地の音…そして人の足音
ヴァイオラに夜が訪れ、街の中心部から離れるにつれて街灯は薄暗くなっていった。第六地区へと続く道は、まるで外界から隔絶された第二の都市の一部であるかのように、いつもより静まり返っていた。
ケアンはためらいがちに歩いた。コートのポケットに入れた青い石が、一歩ごとに胸に軽く当たって、まるでここから後戻りできないことを警告しているかのようだった。
レノーア、ニラ、そしてルクスが彼の後を追った。レイナーは、まるでこれから何が待ち受けているのかを熟知しているかのように、しっかりと先導した。
彼らが壁に到着すると、それは沈黙の怪物のように彼らの前にそびえ立っていた。巨大で灰色、表面には時の亀裂が刻まれていた。周囲の空気は通りよりも冷たく、まるで地底から何かを隠しているかのようだった。
レイナーは身振りで示した。
「ここだ。」
皆が慎重に近づいた。散らばった瓦礫の隙間に、暗い空間が現れた。岩の間に細い隙間があり、そこからかすかな青白い蒸気が漏れ出ていた。湿気はベタベタとしていて、匂いはまるで錆びた金属のような、何か奇妙なものが混ざり合っていた…まるで土そのものが腐っているかのようだった。
ラックスは鼻を拭きながら、恐る恐る笑った。
「ええ…本当に…まさに死への入り口ですね。」
ネラは唇を噛み、視線を強張らせた。
「冗談じゃない。これは普通の穴じゃない。」
レナーはひざまずき、開口部の周りの石に手を触れた。持ち上げると、指は粘着質で湿っていて、月光にキラキラと輝いていた。彼はレイナーを冷たく見つめた。「普通じゃない。これは…生き物の皮みたいだ。」
ケアンは心臓がドキドキするのを感じた。その光景は、第六管区の記憶、彼が埋めようとしたすべてのものを思い出させた。
彼はさらに近づき、入り口の脇の壁に手を置いた。一瞬、まるで石が皮膚の下で脈打っているかのようだった。
彼は素早く後ずさりし、目を見開いた。「何か…動いている。」
レイナーは彼をまっすぐに見つめた。
「言っただろう。これはただの穴じゃない。」
彼は一歩前に進み、声を落とした。
「この戸口の向こうには…我々が耳にするどんな話よりも大きな何かがある。」
重苦しい沈黙が彼らを包み込んだ。空気は不気味な感覚で重くのしかかり、まるで暗闇の向こうから何かの視線が彼らを見つめているかのようだった。
突然、ニラが息を呑んだ。
「止まれ…人がいる。」
皆が慌てて振り返った。
瓦礫の近くの影の中、数人の人影が軽やかに動き、遠くから彼らを見ていた。顔ははっきりとは見えなかったが…ただの通行人ではないことは明らかだった。
レノーアが囁いた。
「言ったでしょ…ここに興味を持っているのは私たちだけじゃない。」
レイナーは彼の手を掴み、目を細めた。
「つまり…第六地区は人々にとっての伝説ではない。他の地区も…同じことを狙っている。」
ケアンは息を呑み、暗い入り口を見つめ…そして、彼らを見守る影を見た。
彼は、この夜が単なる探索ではないことを理解し始めた…これは静かな戦いの始まりなのだと。
ラックスは首を掻きながら、不安げに微笑んだ。
-「それで…どうすればいい? 石を投げて、正体を探るんだ?」
ネラは彼を睨みつけた。
-「動くな。近づきたがらない…でも、俺たちは奴らに見つかっていることを確かめたい。」
レナーは影に視線を釘付けにした。落ち着いた口調でありながら、緊張感に満ちていた。
-「奴らのやり方は明白だ… 静かな監視だ。もし攻撃するつもりなら、最初からそうしていたはずだ。」
レイナーは彼らから目を離さず、低い声で言った。
-「そして、それがさらに恐ろしい。相手がこちらを見ているだけで満足している時、先にこちらを動かさせる理由がある。」
ケアンは歯を食いしばり、暗い開口部と遠くの二人の人影の間を視線で行き来した。
心臓の鼓動が早まった。今夜、一歩一歩が彼を渦の中へと引きずり込んでいくようだった。
-「それで、計画は?」 彼は不安そうに尋ねた。
レイナーは彼の方を向き、表情を真剣なものにした。
「計画は変わっていない。我々は入り口を探索するためにここにいる…もし彼らが我々を監視したいなら、見せてやろう。もしかしたら、彼らが誰なのかも突き止められるかもしれない。」
ラックスは軽く息を呑んだ。
「レイナー、我々が入った途端、彼らは姿を消すかもしれないって分かっているか?そして…出てきたら、何を待たなければならないか神のみぞ知る。」
ネラが彼の言葉を遮った。ささやくような声で、しかし確信に満ちた声で。
「もし出てきたら。」
その言葉は二人の心に石のように突き刺さり、再び沈黙が訪れた。
風が瓦礫の中を吹き抜け、乾いた葉が彼らの頭上を舞い、闇の中へと消えていった。
遠くで、二人の人影はまだ立っていた。ほとんど動かず…まるで夜そのものの一部であるかのように。
ケアンはついに拳を握りしめ、言った。
「わかった。もしこれが道の始まりなら…我々は歩まなければならない。たとえ誰かが見ていても。」
レイナーは軽く頷き、そして入り口へと一歩踏み出した。声は落ち着いた。
「さあ…始めよう。」
> 影の中で、二人の男は静かに視線を交わし…そしてその場に留まり、壁の前にいる若者たちが何を選ぶのかを待った。
レイナーは入り口へと一歩踏み出し、暗い瓦礫へと手を伸ばした。
突然、重苦しい空気が彼の脇を吹き抜けた。肌を焼くような冷たさだった。
彼は眉をひそめ、一歩後ずさりした。
レナーは入り口脇の地面に触れようとしたが、石が指の下で震え、慌てて後ずさりした。
「これは普通じゃない。入り口自体が…私たちを通してくれない。」
ネラは震えながら、コートを強く握りしめながら囁いた。
「まるで生き物みたい…私たちがその一部ではないことを知っているみたい。」
ラックスは場の空気を和らげようと、ぎこちなく微笑んだ。
「穴でさえ、誰が入り、誰が出ないのかを決めているのか?すごい…」
しかし、彼の笑い声はすぐに静まった。
ケアンはポケットの中の青い石を握りしめ、一歩前に出て近づこうとした。
端に触れた瞬間、強烈な感覚が胸を突き刺した…まるで見えない壁に押し戻されたかのようだった。
彼は息を呑み、自分の手を掴み、目を見開いた。
「彼女は…僕を拒絶したんだ。」
皆が静まり返った。
ピットは静まり返っていたが、周囲の空気は脈動し、まるで「今じゃない」と明確に告げているようだった。
レイナーは彼らを一人ずつ見回し、嗄れた声で囁いた。「それなら…戻らなきゃ。」
遠くから彼らを見ていた二人は、短い視線を交わし、ゆっくりと振り返り、影の中へと消えていった…一行は答えようのない疑問に苛まれながら、宙ぶらりんになった。
> 壁の向こう、第六地区は静まり返っていた…しかし、その静寂は平和ではなく、警告だった。
ラックスは大きく息を吐き、足を踏み鳴らした。
「あんなに歩き回ってストレスを抱えていたのに…ピットがついに戻れと言っているなんて!?」
ネラは震える声で彼を鋭く見つめた。 「冗談じゃないわよ、ラックス。ここは…まるで近所みたい。私たちを拒絶することに決めたのは、あの人たちよ。」
レノーアは黙ったまま、冷たい湯気がまだ立ち上る入り口を見つめていた。しばらくして、彼は静かに言った。「単純な拒絶じゃない…はっきりしている。メッセージはシンプル。まだ私たちの時間じゃない。」
ケアンはポケットに手を突っ込んだ。青い石が奇妙な熱を帯びて脈打っていた。心臓が激しく鼓動し、この石が入り口に直接繋がっているという内なる叫びが聞こえた…しかし、皆の前で口を開きたくなかったので、彼は黙っていた。
レイノーは入り口に背を向け、表情を強張らせた。「彼らが戻ってきたわ。もし今夜泊まるとしたら、全員が戻れないかもしれないわ。」
ネラはコートを握りしめ、素早く頷いた。
ラックスは諦めたようにため息をついた。「わかった、わかった…石に飲み込まれる前に戻ろう。」
帰り道は、これまで通ってきた道よりも重苦しかった。人影のない通りは、より広く、より冷たく感じられた。まるで闇が一歩一歩、彼らを追ってくるようだった。
ケアンは壁から離れながら、最後にもう一度振り返った。穴は、まるで一度も動いていなかったかのように、じっと動かなかった。しかし、心の中で彼は知っていた…その向こうにあるものは、沈黙などしていない。それは「待っている」のだ。
…
彼らは街の端に着き、それぞれがゆっくりと散っていった。レイナーは立ち上がり、低い声で言った。「誰にも言うな。今夜の出来事は、単なる失敗した冒険ではない…もっと大きな何かの始まりだった。そして、我々は備えをしなければならない。」
ラックスは笑うふりをして手を振った。
「ああ、ああ…危険な秘密だ。だが、もし今夜悪夢を見たら、君の声を聞いたあの時のことを呪うぞ、レイナー。」
ナイラは笑わなかったが、独り言のように囁いた。「きっと…あの二人以外にも何かが私たちを見ていた。私の予感は間違っていなかった」
レノーアはナイラに謎めいた視線を向け、そして立ち去った。残りの言葉は宙に浮いたままだった。
…
カイレンはしばらくそこに立ち、曇り空に頭を上げた。指はポケットの中の青い石を握りしめていた。
彼は自分にしか聞こえないささやき声で呟いた。
「今夜でなければ…その時が来る。そして私は…次は逃げない。」
> 遥か彼方、第六管区の端で、彼らを見守っていた二人が再び丘の上に立っていた。一人が低い声で言った。
「大地のささやきは彼らを拒絶した…だが、彼らは戻ってくる。」
もう一人はかすかに微笑んだ。
「問題は…彼らが戻ってきた時、準備ができているかどうかだ。」




