第十三話:最初の出発
彼はメモを残さなかった。別れの言葉も言わなかった。持ち運べるものだけを古い布切れに包み、その目はもはや一ヶ月前に訓練に入った者たちのそれとは似ても似つかなかった。
外の空気は澄んではいなかったが、より誠実だった。規則も、笛も、スクリーンで測定される精神鑑定もなかった。ただ通りがあるだけ。そして、どこへ向かうのか分からない足音が響いていた。
ケアンは歩き続けた。歩き続けた。そして、必要以上に歩いた。
初日、彼は町外れに着いた。建物はまばらになり、道路はひび割れ始め、標識は剥がれ落ちていた。二日目、彼の体は苦しみ始めた。足はむくんでいた。胃がゴロゴロと鳴った。眠りは短い間しか訪れず、休息というよりは気絶のようだった。
三日目、彼は倒れた。
彼は二つの森の間の小道を歩いていた。風が葉を揺らし、まるで何かを囁いているかのようだった。しかし、彼の耳はもはやよく聞こえなかった。空腹…疲労…孤独…すべてが彼の目から血を吸い取ろうとしていた。そして、彼はただ立ち止まった。
膝は耐えられなかった。彼は倒れた。
そして、久しぶりに…彼は涙を流した。
誰かに傷つけられたからではない。ただ…これからどうしたらいいのか分からなかったからだ。
彼は土の上、名前も聞かなかった木の陰に座り込んだ。
すべてが静まり返っていた。思考さえも。
四日目の夜、彼は夢を見た。
彼はネロが川辺に立って、彼をもっと近くに招いているのを見た。しかし、彼が手招きするたびに、その距離は遠ざかっていった。そして、彼が泣くたびに、彼の声はかき消されてしまった。
その時、ネロのそばに人影が現れた。彼の母親だ。しかし、彼女の容貌ははっきりとしていなかった。彼女は光のようだった。それとも炎のようだったのだろうか?
彼女は彼に言った。
「他の誰かの中に自分を探しなさい。」
彼は目を覚ました。心臓は爆発しそうなほど激しく鼓動していた。
五日目、彼は再び歩き出した。
しかし今回は…場所を探していたのではない。意味を探していたのだ。
彼はほとんど人がいない村を通り過ぎ、行方不明の少年のことを尋ねた。誰も彼の名前を知らなかった。しかし、彼はある話を耳にした。ネロという名の少年が、数ヶ月前に南の禁断の地の近くで目撃されたという話だ。
それが彼かどうかは分からなかった。しかし…それは彼を南へと駆り立てるのに十分だった。
数日が過ぎ、そして数週間が過ぎた。
ケアンは変わり始めた。顔つきは鋭くなり、目は大きく見開かれた。彼の魂はまだ砕けていた…しかし、その破片が光を反射し始めた。
彼が通る先々で、彼は物語を耳にした。
神話の生き物の話。変身した人間の話。囁く壁、笑う影。
そして彼は尋ねた。
> 「ニブリム…は存在するのか?」
ある者は笑い、ある者は沈黙し、少数の者は震えた。
そしてそのたびに、彼は答えを思いつかなかった。しかし、彼の内側で何かが…作り変えられつつあった。
ケアンは…もはや逃げていなかった。
彼はただ…自分が誰なのかを思い出すのを待っていた。
旅の二ヶ月が過ぎた頃、彼は廃墟の近くにある古い倉庫に辿り着いた。
中で、彼は奇妙なものを見つけた。
壁には絵が描かれていた。古代の文字。そして…名前。
「ヴァルミール」
それは壁に刻まれていた。彼と同じ筆跡で。
彼は凍りついた。
誰が書いたのか?以前ここに来たのは誰なのか?
隅に、一冊のノートがあった。埃っぽく、破り取られていた。しかし、たった一ページだけ開いていた。
> 「火は、それ自身を燃やさない。」
ケアンは何も言わずにノートを閉じた。しかし、その一文は持ち帰った。
彼はその一文の前に数秒間立ち止まった。まるで、自分が書いた以上の何かを物語っているかのように。
それから彼は残りのページを一枚ずつ開き始めた。
どのページも…白紙だった。
最後のページさえ…破れていた。
しかし、表紙の端には、より鋭い筆致で、鋭利な道具で刻まれた一文を見つけた。
> 「灰の間に生まれた者は…火に属さない。」
彼はそれを読み、低い声で繰り返した。
> 「彼はどんな火にも属さない…」
まるで誰かが彼の人生について冗談を言ったかのように、彼は軽く、苦々しい笑みを浮かべた。
それから彼は冷たい床に座り、壁に背を向け、バッグを開けた。
彼は小さなノートを取り出した。釈放されてからずっと持ち歩いていたノートだ。そして開いた…一ページたりとも書かれていなかった。
今日まで。
彼は最初の一文を書いた。
>「私は自分が何者なのか分からない…でも、他人が私に選んだものにはなりたくない、ということだけは分かっている。」
それから彼は少しの間沈黙した。
彼は付け加えた。
> 「もし私が灰でできたなら…燃えない何かを作るだろう。」
翌朝、彼の足取りは再び速まった。
彼は以前ほど弱ってはいなかった。以前ほど強くはなかったが…より確固としたものになっていた。
彼は歩きながら、まるで世界が目の前で形を変え始めるかのように辺りを見回した。傾いた木々、破壊された家々、忘れ去られた廃墟…すべてが彼に囁いているようだった。
> 「まだ終わっていない。」
彼は移民のキャラバンとすれ違った。彼らは彼に同行を申し出たが、彼は断った。
その時、彼は道端に座り込み、「目に見えない炎から生まれた者たち」についての詩を朗読している盲目の男に出会った。
ケアンは彼にニブリムのことかと尋ねた。
盲目の男は笑って言った。
> 「あなたが理解できない者は皆…伝説になる。」
それから彼は手を伸ばし、優しくケアンの顔に触れた。
彼は囁いた。
>「息子よ、君の顔は燃えている。だが、火は火ではない…昔からの問題だ。」
ケアンは理解できなかった。しかし、忘れはしなかった。
三ヶ月目の二度目の旅の終わり頃…天候が変わった。
時々雨。
熱い風。
まるで何かが…その上で息をしているかのように、空は不安定だった。
ある夜、彼は声で目を覚ました。
人間ではない声。
しかし、獣の声ではなかった。
動物の声でもなかった。
その声は…まるで誰かが彼の周りではなく、彼の内側で泣いているようだった。
彼は立ち上がり、声の源に向かって歩いたが、誰もいなかった。
突然、彼は胸に熱がこみ上げてくるのを感じた。
右手が震え始めた。
しかし、寒さのせいではなかった。
しかし、何か別のものから…彼には理解できなかった。
彼は胸を押さえ、ひざまずいた。
彼は再び声を聞いた。
>「ネロを探しているんじゃない…自分自身から逃げているんだ。」
彼は叫んだ。
「誰だ?!」
しかし、返事はなかった。
ただこだまが響くだけだった。
翌日、太陽が昇ると、彼の目は疲れていた。
しかし、彼は歩き続けた。
今、彼が求めていたのはただの答えではなかった。
彼は顔を求めていた。場所を求めていた。人物を求めていた。
ネロ…どこにいる?
出発から4ヶ月後…
ケアンは「忘れられたカイラス」として知られる国境の町に入った。
そこで、彼は初めて、真新しい落書きで覆われた壁を目にした。
その中に…子供の絵があった。
彼の髪は乱れ、目は大きく見開かれていた。
そして、その上の見出しにはこう書かれていた。
>「捜索:子供ネロ。最後に目撃されたのはカイラス近郊。」
ケアンは叫ばなかった。微笑みもしなかった。
ただ…
彼は腕を胸の前で組んだ。
彼は呟いた。
「まだ終わってないんだ。」
それから彼は空を見上げて言った。
「ネロ…まだここにいるなら…行くよ。」
そしてついに…
埃が目に染み込んだが、彼は瞬きもしなかった。
それから彼は崩れかけた道を歩いた。
まるで彼の足取りは…彼自身よりも道をよく知っているようだった。
「忘れられたカイラス」の埃に覆われた街は、まるで時が止まったかのようだった。街は氷ではなく…失望によって凍りついていた。人々の顔は青ざめ、家々は半開き。まるでそこにあるものすべてが、二度と戻らない誰かを待っているかのようだった。
ケアンは誰にも気づかれることなく路地を歩いた。あるいは…誰も誰かに会いたがらなかったからかもしれない。誰もが自分の束の間の生存に気をとられていた。
しかし彼は古い壁の一つの前で立ち止まった。そこには子供っぽい落書きがたくさんあった。ハート、円、奇妙な顔。しかし、その真ん中に奇妙な絵が一つあった。
子供の顔…ネロと同じ形をしているが、その横には背の高い、特徴のない男の影があった。
その下に書かれていた。
>「彼は影が私を守ってくれると言った。」
ケアンは指を上げて最後の文字に触れた。
彼はじっと立ち尽くし、胸の中で何か熱いものが動くのを感じた。
痛みではない。
恐怖でもない。
しかし…何かが生まれつつある。
その時、かすかな笑い声が聞こえた。子供の笑い声だ。
彼はすぐに振り返ったが、誰もいなかった。
彼は反対方向に走り、狭い路地に入った。小さな足音が聞こえた…そして何も聞こえなくなった。
全てが消えた。
まるで誰かが彼の痕跡を…存在を残さずに残そうとしているかのようだった。
彼は絵に戻った。
彼は絵の向かいに座った。
そして囁いた。
「ネロ…ここにいたのか?」
彼は目を閉じた。
彼は自分の声がこだまするのを聞いた。
>「近づいている。だが、何から?」
そして彼は盲人の言葉を思い出した。
>「火は火ではない…それは昔からの疑問だ。」
彼は再び目を開けた。
そして彼は絵の下に絵を描き始めた。
ただ一言。
>「ケアン。」
そして彼は立ち上がった。
そして壁に背を向けた。
そして数ヶ月ぶりに微笑んだ。
勝利の微笑みではない。
希望さえも感じさせなかった。
ただこう語る微笑みだった。
>「私は…まだここにいる。」
そして彼は再び歩き出した。
さらに、さらに深く。
まるで壁は絵ではなく、扉のようだった。
まるで街が目的地ではなく… 標識のようだった。
そしてその日、日が暮れ始めると…
風が再び強くなった。
彼らは埃と戯れた。
そして、彼らと共に、壁の落書きの多くは消えていった。
二つの言葉を除いて。
「影が私を守ってくれる。」
そして…
「ケアン。」




