第十一話:見えないものは元に戻せない
午前5時。
裏庭の空気は冷たく、まるで夜がまだ明けていないかのようだった。太陽はもうすぐ昇ろうとしていた。しかし、誰も寒さを気にしていなかった。震えようとも思わなかった。
最前列の男たちは、眠そうな目をしている者もいれば、戦場にいるかのように肩をすくめている者もいた。彼らは動いていた。
動かない…ただ見ているだけだった。
彼女はゆっくりとした足取りで、まるで兵士たちの隊列の隙を探すかのように、彼らの前を歩いた。彼女は一言も発しなかったが、会う者皆が心の中で何かが変化するのを感じた。
彼女はついに真ん中に立った。
彼女は言った。
>「あなたたちの中でまだ強い者はいない。誰も。」
>「でも、一番弱いのは…自分のことを分かっていると思っている者たちだ。」
>「さて、今日は一番簡単な身体検査から始めましょう。」
>「走る。登る。跳ぶ。抵抗する。」
>「そして失敗する。」
エヴァンはかすかな冷笑を浮かべ、片眉を上げた。まるでそれがそんなに「簡単」だなんて信じられないようだった。
しかし、最初の1分…彼の顔から冷笑は消え去った。
彼らは走り始めた。100メートル?いや。
50メートル?いや。
距離は定かではなかった。誰もいつ止まるべきか、いつ息を吸うべきか分からなかった。
アーロンが最初に前に飛び出し、まるで記憶の中の何かを追うかのように走った。エラは優雅な足取りでそれに続いた。息は荒かったが、安定していた。ニマは速くはなかったが、その歩調にはある種の頑固な忍耐が感じられた。
セラは数分後、息を切らしていたが、走り続けた。エヴァンは後退し始めた。
ケアンは…
彼は先頭ではなかった。
最後尾ではなかった。
目立つ中心にさえいなかった。
彼は…「そこに」いた。
走っている。息をしている。落ちていない。前に進んでいない。
オリーナは彼を二度見しなかった。
そして次の段階が始まった。壁を登ることだ。
ロープも支えもない。
それぞれがそれぞれのやり方で。
アーロンはまるで生まれながらにしてそうであるかのように、正確な動きで体を引っ張りながらジャンプした。
ニマは一度落ちたが、二度目は登った。
エラは皆を驚かせた。まるで石を熟知しているかのように登ったのだ。
ケアン?登った…ゆっくりと。
怖がっている人や訓練中の人のようにではなく…どうでもいいことをしている人のように。
「バーを少し持って」とオリーナは言った。
20秒後には、何人かが落ち始めた。
ケアン…落ちた人と一緒に落ちた。
彼はあまり抵抗せず、痛みも感じず、叫び声も上げなかった。
まるで体が倒れることを決意し…そして彼もそれに従ったかのようだった。
「彼は弱くはないが、特別な存在でもない」と、遠くから見守りながら雷電は思った。
時は過ぎた。練習に次ぐ練習。失敗に次ぐ失敗。
そしてオリーナが言った。
>「もう十分だ。」
>「明日…精神鍛錬を始める。」
>「今日のことで…あなたが思っていた以上に多くのことが明らかになった。」
彼女はセラ、アーロン、エラの順に見た。
そしてケアンを見た。
ほんの一瞬だった。
数えきれないほど短かった。
しかし、彼女の目には彼に何の反応もなかった。
夜、談話室は静まり返っていた。誰もほとんど口をきかなかった。
しかし、エラは突然言った。
—「ケアン…」
彼は頭を上げた。
—「あなたは…本当に普通ね。」
彼は弱々しく微笑んだ。
「それは良いこと?」
エヴァンは笑った。
「いいえ。こんな場所で?最悪よ。」
セラは彼らを横目で見てから言った。
「普通の人が…生き残ることもあるのよ。」
ニマは誰の顔も見ずに囁いた。
「あるいは、静かに崩れ落ちる人。」
ケアンは答えなかった。
彼は自分の手を見た。
手のひらの小さな皺を。
彼は考えた…
「もし僕が本当に普通の人間なら…どうして僕の心の中にはこんなものが詰まっているんだろう?」
しかし彼は何も言わなかった。
雷電とウレナは中庭の向こうの暗い廊下に立っていた。
ウレナは言った。
「ケイン・ヴァルミル…彼は何も見せない。」
雷電は答えた。
「だからこそ、僕は彼を監視しているんだ。」
「ニブリムの気配は全くない…影も幻覚も抵抗も。」
「人間もいない。」
彼は黙っていた。
それから彼は言った。
>「残念ながら、彼は何も見逃していない…何かを隠している。自分自身にも。」
その夜遅く…
他の皆が眠っているか、眠ったふりをしている時、ケアンは金属製のベッドに一人座っていた。背中を壁につけ、顎を膝に乗せていた。
彼は痛みを感じていなかった。
彼は泣いてはいなかった。
しかし、彼の胸に感じる感情には名前がなかった。
疑いでもなかった。
空虚でもなかった。
むしろ…何かが混乱のようで、それが内なる壁と化していた。それは前進を許さず、後退することで慰めを得ることもなかった。
彼は独り言を言った。
「私は一体どうあるべきなのだろうか?」
しかし、壁は何も反応しなかった。
監視室のスクリーンには、その日の映像が、熟練した目でゆっくりと映し出されていた。
雷電とウリーナ、そして白ひげを生やした60代の男が、彼らと共に静かに見守っていた。
男は言った。
「ケアン…どう見ても重要そうに見えないな。」
雷電は顔を上げずに答えた。
「だから…一番危険なんだ。」
ウリーナは、ケアンが梁から落ちる瞬間を映し出したスクリーンに指を置いた。
「見て…彼は抵抗しなかった」と彼女は言った。
「彼は叫ばなかった。しがみつくこともなかった。疲れているわけでもなく…まるでそこに存在すらしていないようだった。」
彼は黙っていた。
それから彼女は静かに言った。
>「彼は限界を試している人間のような振る舞いをしていない…あるいは、力を試している生き物のような振る舞いをしていない。」
>「彼はただ…演技をしているだけ。」
老人は首を横に振り、言った。
「ニブリムでも人間でもないなら…一体何者なんだ?」
雷電は低い声で呟いた。
「それが…手遅れになる前に突き止めなければならないことだ。」
翌朝…
皆は二日目の試験、メンタルトレーニングの準備を始めた。
しかし、誰もそれが何を意味するのか知らなかった。
ウレナを除いて。
彼女はただ…微笑んだ。小さく、不安げな笑みを。
メンタルトレーニング室の壁は灰色で、窓も時計も鏡もなかった。
空気さえ…味もなかった。
皆、床に四角く並んで座った。
静寂は冷たく、
呼吸さえも数えられていた。
ウレナが入り、続いて雷電が入った。彼らの前には、身元を明かさない男が立っていた。バッジを付けずに、医療用スクラブを着ていた。無表情で、目はまるで人の顔を見ているかのように、人ではなく顔を見ているように動いていた。
彼はただこう言った。
>「今日の試験は…メンタルだ。」
>「皆さんは…ほんの数分間、隔離されます。」
> 「その間、簡単な装置を起動します…内部刺激に対する心理反応を試すだけです。」
> 「あなたに害はありません。」
> 「でも、中には…入ってきた時と同じように出てこない者もいます。」
彼はほんの少し微笑むと、裏口から姿を消した。
彼らは一人ずつ実験を始めた。
ニマが出てきた。涙目だったが、何も言わなかった。
エヴァンが虚ろな笑い声を上げて、「子供っぽい夢だったんだよ、バカ。」と言った。
エラが出てきた。青ざめながら、「誰も同じようには入っていかない。」とだけ言った。
そしてケアンの番だった。
彼は立ち上がり、隔離された部屋に入った。
部屋は空っぽだった。
真ん中に…椅子が一つ。
彼はそれに座った。
最初は何も起こらなかった…。
それから、照明が変化し始めた。薄れゆく白い光、徐々に灰色に変わり、そして無色の影。
その時…声がした。
それは彼自身の声のように聞こえた。
しかし、よりゆっくりと。
そしてより深く。
そして、耳元ではなく、彼の心に響いた。
>「もし明日、君が消えたら…誰かが君のことを覚えているだろうか?」
ケアンはゆっくりと目を開けた。
彼は眠ってはいなかった。だが、完全に目覚めてもいなかった。
声は続けた。
>「もし私が死んだら、誰かがこう言うだろうか。『彼は重要だった』と。それとも『彼は平凡だった』と。」
彼の影が反対側の壁に現れた…そして、彼の体は動かないまま、影が動いた。
影は言った。
-「君はただの…不要なコピーだ。」
-「君は間違いから生まれた。」
-「君は…誰かが仕事をやり遂げなかったからこそ、存在しているのだ。」
そして、壁が近づいてきた。
いや…壁ではなかった。
彼の内側にある何かが、彼から離れるのではなく、彼に向かって崩れ落ちていくのだった。
彼は叫びたかった。
しかし、ただ…目を閉じた。
そして声は消えた。
彼は10分後、部屋から出てきた。
彼の表情は…読み取れなかった。
彼は誰の顔も見なかった。
彼は座らなかった。
彼は何も言わなかった。
彼は部屋の隅に行き、一人で壁を向いて座った。
エラは何か言いたそうに…後ずさりした。
イヴァンでさえ…黙っていた。
その日の終わりに、オリーナは再び彼らの前に立った。
彼女は言った。
>「最初の精神テストは終わった。」
>「抵抗を示した者もいれば、脆さを示した者もいた。」
>「でも…何も見せなかった者もいた。」
>「そして、これは…もっと危険だ。」
彼女はケアンを見た。
彼女は初めて、彼を…長い間見つめた。
そして彼女は言った。
>「答えを必要としない質問もある。」
>「でも、どんな答えよりも深い傷を残すんだ。」
夜…
ケアンはベッドに座り、暗い部屋の天井を見つめていた。
彼は囁いた。
-「本当に…元に戻れないんだ。」
-「ニブリムでさえ…戻れないんだ。」
それから彼は毛布を頭からかぶった。
そして彼は眠らなかった。




