5歳の見習い魔女は謎の魔法を使う
少しでも、笑っていただけたら嬉しいです。
因みに、ジャギー様は、こちら。
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とある森の中に、ひっそりと佇む一軒の丸太小屋があった。それは、魔王軍の幹部、闇の魔女ジャギーの隠れ家だった。
そこには、天才的な素質を持つ見習い魔女、ノアール(5歳)が住んでいた。
「ジャギーさま、しばらく帰ってきてない……でも、いいつけは守らなきゃ。お部屋の掃除に、ジャギーさまのローブの洗濯、魔法の練習……やることいっぱいあるわ」
ノアールは独り言をつぶやきながら、魔法でホウキを呼び出し、せっせと部屋の掃除を始めた。
と、そのとき……
ジャギーの財宝を狙い、4人の山賊たちが小屋に近づいてきた。
「アニキ! ここっすよ、闇の魔女ジャギーの隠れ家! 勇者にやられたって話だから、もう誰もいないはずですぜ!」
「ああ、よし……手早く探して、さっさとズラかるぞ!」
「アニキ……その前に、いつものアレ、お願いします」
「チッ……お前ら、怖じ気づいてんのか? しょうがねぇな~!」
そう言って、アニキは突然跳びはね、テンションを爆上げした。
「ヒャッハーッ! 今日も任務完遂すんぞ! ビビってるやつなんて、いねぇよな!? ヒャッハーッ!!」
山賊たちが気合いを入れたそのとき
ギィィィ……
丸太小屋の扉が開き、ノアールが姿を現した。
「ちょ、ちょっと! あなたたち、何者!?」
山賊たちは、まさか人がいるとは思っていなかったらしく、一瞬だけ驚いたが……
「お、お嬢ちゃん……オレたちはな、泣く子も黙る山賊だ! 怖い目に遭いたくなかったら、大人しくジャギーの財宝を出しな!」
だが、ノアールはニッコリと笑いながら言った。
「私はジャギーさまの一番弟子、闇の魔女ノアール! あなたたちこそ、今のうちに逃げることね!」
ノアールは、ハッタリを言った。
本当は、ジャギーの586番目の弟子…… 「見習い」ということも言わなかった。
そして、オシッコをチビりそうなほど、ビビっていた。
「ア、アニキ、ど、どうしやす……?」
「落ち着け! チビっ子にビビって逃げたなんて、お頭に知られたら会わせる顔が無え! 縛り上げちまえ!」
「「「へい!」」」
(くっ……やっぱりハッタリじゃダメだったわ……仕方ない! 私の魔法を見せてあげる!)
「闇よ、こいつらを懲らしめてやりなさい! ダーク・レボリューション!!」
ポンッ!
ノアールの魔法とともに、1メートルほどのスフィンクスの置物が現れた。
(……え、何これ? 初めて見る……失敗?)
ノアールは才能こそ一級品だが、実力は未熟。
魔法を唱えても、何が起こるかは本人にも分からない。
(でも……見た目は強そう! 山賊たちもビビってる! これはイケるかも……!)
「な、なんだこれは……!? 召喚魔法か?」
「フッフッフ……さあ、 山賊たちをやっつけなさい!!」
ノアールは、スフィンクスに命令した。
シーン……
……何も起こらなかった。
だって、それ……ただの置物だから。
「ハッハー! なんだよコレ、ただの飾りじゃねーか!」
山賊がスフィンクスの顔をペチペチと叩いた。
すると……
ガ……ガガ……ガ
スフィンクスの口がゆっくりと開いた。
中には、ちっちゃいオジさんが入っていた。
「オマエ、コロス」
ガ……ガガ……ガ
口が閉じた。
(え、えええ!? それだけ!? 攻撃とか、しないの!? ……ダメ、失敗ね! じゃあ、もう一発いくわよ!)
「闇よ、すべてを包み込め! ダーク・レクイエム!!」
シーン……
何も起こらなかった……。
そのころ
ジャギーの隠れ家から数100km離れた、とある村。
1人の老人が驚いて腰を抜かしていた。
なぜなら、80歳の妻の入れ歯が全て銀歯に変わっていたからだ……。
「ぜ、全部、銀歯に変わっとるぅぅぅぅ!!」
老人は叫んだ。
そう……
それは、ノアールが唱えた「ダーク・レクイエム」の効果だった。
(な、なにも起きなかった……また失敗!? でも、私は……あきらめない!!)
「今度こそ! 闇よ、全てを飲み込め! ダーク・グラデーション!!」
シーン……
「ハーハッハ~ また何も起こらなかったナリ~」
「……お前、いま『ナリ』って言った?」
「な、なんか語尾が勝手に『ナリ』になってるナリ!」
そう……
「ダーク・グラデーション」の効果。
それは語尾が「ナリ」になる呪いだった。
(また失敗……もう、こうなったら最終奥義よ!!)
「闇よ、全てを破壊して! ダーク・デストロイ!!」
スポーン!
ノアールが呪文を唱えると、アニキのカツラが大空へと舞い上がった。
「ぬあああああ!!」
「あ…… アニキ、ヅラだったナリか!?」
顔を真っ赤にしたアニキは、涙を浮かべながら叫んだ。
「うわああん!! 誰にもバレてなかったのに!! 野郎ども、ズラかるぞ!!」
「アニキ、ヅラだけに『ズラかる』ナリか~」
そんな声が、遠くから聞こえたような気がした……。
(ふぅ~……さすが、ジャギーさまの一番弟子ノアール! 見事に山賊を撃退したわ!)
ノアールは、自信満々に胸を張った。
最後までお読みいただきありがとうございます。
誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。
続編を書いたので、よろしければお読みください。
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