6話 大胆なデレ。
「ねえねえ、ルークっー!」
「な、なんだよ……」
「さっきの授業で分かんなかったことがあったんだけど……ルーク、これ分かる?」
「フレイヤに分かんなきゃ俺に聞いてもしょうがないと思うが……いつも一緒にいる奴らに教えてもらった方がいいんじゃないか?」
「もうっ、ルークったら。…………こういうのは、好きな人に教えてもらいたくなるものなんだよ……?」
「……うっ…………分かった、どこなんだ?その分かんないってところは。」
「えっ……あ、ああ!これだよ、これ!」
そう言って、目の前にいる魔女……いや、フレイヤがノートを見せてくる。
俺のとは対照的にキレイに書かれている。その中で、一際目立つマルがあった。そこの近くには、"ここ、ルークに聞く!!"との小さい文字が。
……きっと、分からないのはここだろう。
……聞いてきた教科は俺の苦手な、さらに言えばフレイヤの得意そうな教科であったが……まあ、フレイヤの頼みなら仕方ない。
幸い、俺にもギリ分かりそうだし教えてあげよう。
「うーんと、これはルーカスが開発した魔法を5つ答える問題か……。4つは分かったけど、あと1つが分からないと……」
「う、うん……。あと1つなにか思い付く……?」
「思いついたのが1つある。……無機物意識付与魔法とかか?…………間違ってたらすまん」
「あっ……それすっかり忘れてた。……ありがとう」
「……しっかし、ルーカスってすごいよな。無機物意識付与魔法なんてもの開発して。名前を見ればどんな魔法か分かるが、やってることは結構すごいことだぞ。……まあ、教科書に載るくらいのすごーい大魔女ならこんなもん大したものじゃないと思ってそうだけど。なあ、フレイヤ?」
「う、うん……そうだね」
「……フレイヤ。なんかさっきから様子がおかしいぞ。大丈夫か……?」
フレイヤの顔を見てみると、白いはずのほっぺたは赤くなっており、耳も熱を持っているのか赤に染まっている。
……この赤さ具合を見るのは初めてじゃない。3回目といったところか。
…………そして、この赤さの原因を俺は知っている。
「フレイヤ……"自滅"したな」
「っ〜〜!」
……どうやら図星のようだ。
そして、フレイヤはいきなり顔を近づける。お互いの心臓の鼓動が聞こえそうになるくらい、また 、もう少し近づいたら唇同士が触れ合いそうになるくらいにフレイヤは顔を近づける。
「フ、フ、フ、フレイヤ……?」
「……仕方ないじゃん。ルークってば鈍感なんだもん……。……でも、好きな人に『好き』って言うのはやっぱり緊張するね。それが初めてか、初めてじゃないかなんて関係ないみたい。……こんなことをするのはルークだけだよ……?」
……昨日までの俺なら、魔女とこんなことをするなら死を選んでいただろう。
…………今では、目の前の魔女にドキドキしているが。もしかしたら、この心臓の鼓動もフレイヤに伝わっているのかもしれない。
昨日、俺はフレイヤを一度は拒絶した。
その後で、ひどいことをしてごめんって謝って、そして『好き』って告白されて……。
でも、俺はまだフレイヤに明確な返事を返したわけじゃないし、昨日は別々に帰って、この関係は静かに続くものだと思っていた。
しかし、今は教室でこんなに大胆に俺にデレている。……告白されてから翌日でこんななら、1週間後や1ヶ月後、はたまた1年後はどうなってるのだろう。
俺は、目の前の魔女──フレイヤにドキドキしながらそう思うのだった。