第4章:秋風の便り
秋風が、図書館の古い木々を揺らしている。私は読書室の窓辺で、中の様子を見守っている。
(秋は、人間が一番集中できる季節にゃ~)
合同セミナーの日が近づき、研究室は活気に満ちていた。
「この資料、面白いですね」
葉月が、空のデータを見ながら声を上げる。彼女は最近、自分の研究と並行して、空のプロジェクトにも協力しているの。
「ありがとう。篠塚さんのアドバイスのおかげで」
空の返事に、葉月は照れたように微笑む。
(若い研究者って、互いを高め合うにゃ~)
その時、千景が急いで研究室に入ってきた。
「大変です! 地下書庫から、貴重な発見が!」
その声に、全員が振り向く。
「何が見つかったんですか?」
澪が食い入るように尋ねる。
「江戸時代の写本の中から、未知の和歌集が」
千景の目が輝いている。
「しかも、デジタルアーカイブを作成している時に気づいたんです」
その言葉に、星加と椿が同時に立ち上がる。
「見せていただけますか?」
「是非、拝見したい」
二人の声が重なる。
(人間って、本当に興味があることの前では、対立も忘れるにゃ~)
私は、資料を広げる人々の様子を見守っている。
「これは……」
椿の声が震える。
「間違いない。あの歌人の未発見の作品群だ」
星加もパソコンに向かう。
「デジタル解析で、筆跡や用語の特徴を」
「ああ、従来の文献との照合も必要だな」
二人の研究者は、それぞれの専門性を活かしながら、協力し始めている。
「先生方」
澪が声をかける。
「この発見、合同セミナーの中心テーマに」
その提案に、全員が賛同の意を示す。
「伝統的な研究手法とデジタル技術、両方の視点が必要になりますね」
千景が、満足げに頷く。
「図書館として、全面的に協力させていただきます」
秋の陽射しが、古い資料と最新のパソコンの画面を同時に照らしている。
(知の伝統は、こうやって受け継がれていくにゃ~)
私は窓から外を見る。中庭では、赤や黄色に色づき始めた木々が、優しく風に揺れている。
葉月が、自分のパソコンに向かいながら、小さくつぶやく。
「私にも、できることが……」
その言葉に、空が振り向く。
「一緒に頑張りましょう」
二人の若手研究者の間に、確かな絆が生まれ始めているのを感じる。
「皆さん」
千景が声をかける。
「古い資料には、時々思わぬ贈り物が隠されているもの。でも、それを見つけ出すには」
「伝統の目と、新しい視点の両方が必要ですね」
澪が言葉を継ぐ。
「まさに、今の私たちのような」
その言葉に、椿と星加は顔を見合わせる。
「まあ、君たちの意見には、一理あるかもしれんな」
椿が、珍しく柔らかな口調で言う。
「私たちも、学ばせていただいています」
星加も、素直な態度を見せる。
(人間って、共通の目標があると強くなるにゃ~)
私は、秋の夕暮れに包まれる図書館を見つめている。この場所で、確実に何かが動き始めているのを感じるわ。




