新たな風が吹く。
キーンコーンカーンコーン。
昼休み、多くの生徒が弁当を持って廊下に出ていく。
だが今日はいつもと違う。
千世の周りに、人だかりができている。
どうやら円華の忠告は無視されたらしい。あの男、威厳なさすぎである。
「直也行くわよ。」
「痛え!?」
美咲はとりあえず直也の耳を強引に引っ張り集団の中に入っていく。すると美咲と直也の顔を見て生徒たちは目をそらして千世から離れていく。この二人の組合わせは不穏すぎる、確実に良くないことが起きる。
まったく触らぬ神に祟りなしである。
「羽月。言いたいことがあるならちゃんと口で言えよな。肉体言語を使っていいのはリングの上と商店街の特売だけだぞ。」
直也は自分の耳をいたわりながら美咲を恨めしそうに視線を向ける。
美咲は一度直也を殴って吹っ切れてしまったのか、直也に対して結構雑な扱いをするようになってしまった。
「なによ。私が耳ひっつかんでなきゃアンタ逃げたでしょ。」
「…。」
「図星か。」
「?」が頭の上に出た千世がまじまじと直也を見ている。
「千世、コイツは直也、ガラは悪いけど頼りにはなるはずよ。学校のことで分からないことがあったらコイツに聞けばいいわ。」
美咲が直也の背中をたたく、自己紹介をしろという意味だ。
「はぁ。よろしくな上月。俺は、北條直也。一応生徒会長だ。」
一応とついてしまうは、ひとたび校内でトラブルが起きてしまうとその場に偶然?居合わせた美咲に場の主導権を強奪され、ただの駒として使われてしまうからである。
直也が生徒会長としていられるのは退屈な書類仕事をしているときのみである。
直也は千世の手を取って握手の形を作る。
「よろしく直也君。」
そう言って千世は手を握りかえした。
「直也でいいぜ。俺も千世って呼ぶからな。」
「分かった!」
なんて言って二人とも笑顔で友好の握手をしている。
シチュエーションだけならまさに男同士の熱い友情を感じる一幕。
だが実際には、片方はとても可憐な少女の見た目をしている。まさに雰囲気はぶち壊しだ。
「ふふっ。」
それを見ていた美咲はこらえきれず笑いが口から洩れる。
「ていうかお前ら知り合いだったのかよ。羽月、お前俺が転校生がどんな奴か聞いた時、はぐらかしたな?」直也の口調には少し美咲に対する非難が混じっている。
「まあね、だってコレよ?見た方が早いわ。」
直也は千世に向き直ると、美少女が上目遣いで見てくる。かわいい。
「たしかに、な。これはかなりパンチが効いてる。」
直也は納得してしまい顎をすくめると、美咲がでしょ?というようにうなずく。
「なあ、千世。お前ほんとに男か?」
直也は信じられないといったように感心している。
「そうだよ?信用できない?」
「ああ。」直也は断言する。実際、ここまで可憐な少女が実は男ですなんて言われても信用なんてできない。
「そっか、なら仕方ない。」
言って、今度は千世から直也の手を取った。
そのまま。
そのまま、直也の手を自分の胸に押し付けた。
「「!!!!!!」」
美咲と直也、二人に衝撃が走った。
「どう?わかった?」
逆に、千世はなんでもなさそうに直也に確認している。
別に大したことはない、男の胸に男の手が触れただけ。
ただそれだけなのだ。
だが、見た目が大変よろしくない。
「ちょ、おま!ぶぐぉえっ!」
先に口を開いたのは直也の方だった。しかし、言葉は途中までしか紡がれなかった。
なぜか、
それは直也の体は宙を舞っていたからだ。
美咲の拳が直也の右頬を正確に打ち抜き、吹っ飛ばした。
まさにとばっちり。理不尽以外の何物でもない。
「千世!何してんの!」
直也を宙に打ち上げた張本人はというと、直也には目もくれずに千世に肉薄し説教を始めていた。
教室にいる生徒たち全員の目が三人に降り注ぐ。
____混沌。
_____________________________________
「じゃあそろそろ私は行くわ。直也、次体育だから更衣室に案内してあげて。」
美咲がふたりをおいて離脱する。
「おう。」
右頬をぱんぱんに腫らせた直也が恨みたっぷりの視線を返しながら答える。
「じゃあ、ついてこい千世。」
「ん。…わかった。」
千世を後ろに連れて直也は歩き出す。
千世の声には元気がない。千世はまだ自分のせいで直也が殴られたことを気にしていた。
____。
__________。
直也は少し進んだところで立ち止まった。
「気にすんなよ。悪いのは全部あの猛獣だからな。それに、
俺はもうすでにあの鉄拳を一回食らっている。一回と二回にそれほど差はない。」
「ふふっ。いったいなにしたの。」
一瞬、千世の顔に笑顔がのぞく。「あ、ごめん…。」だがすぐにそれは消えて眉が顰められてしまう。
「いいんだよ笑えば。失敗も後悔も全部笑い飛ばしてやれ。沈んだ顔したやつに幸せはめぐってこない。人間、結局楽しんだものが勝つようにできてるんだ。」
直也の言葉には不思議な魔力がある。
言っていることはただの楽観主義の主張、でも、確かにそうなんじゃないかと思わせる重みがある。
千世にはわかる。
この男は一つの大きな後悔を今も背負っている。
大きな後悔を背負い、人一倍過去と向き合った。それでもなお後悔は消えず今も彼を苦しめている。
だが、彼は同時に人一倍今と向き合って生きている。
絶望の底で生きているからこそ他人の心を響かせる言葉を紡ぐことが出来るのかもしれない。
千世の胸に自然と発生した感情は憧憬。
こんな強くて折れない心を持った人間になりたい。
ただ単純にそう思った。
千世の胸にあった小さな後悔は、直也の後悔に呑まれて消えた。
「そっか。そうだよね。」
「ありがとう、直也。」朝日の笑顔が咲き誇る。
「いい笑顔だ。やっぱりお前には、笑顔が似合う。」
そういって直也は歯を見せて笑い返す。
今度は、千世は直也と並んで歩きだした。
今日の体育はバスケだった。
現在直也は体育館脇で千世の出ている試合を見ている。先程大活躍を終えてきた後だ。
でも、千世もどうやら身体能力が高いようだ。
今も、自分よりも一回りは大きい男子をフェイントで抜き去り大跳躍の後に上から叩きつけるようにダンクを決めている。
「フィジカルモンスターかよ。どんだけ跳ぶんだよ。」
直也は小さく漏れてしまう。
そこに
「なにあれ、フィジカルモンスター?」直也と全く同じことを言って美咲がやってくる。
美咲は自身の汗をタオルで拭っている。
女子の方もバレーの試合をしているみたいで、美咲は休憩中なのだろう。
「やっぱそうだよな。あれおかしいよな。垂直にあんな飛ぶやつテレビでも見ねえよ?」
「そうね。元は何かスポーツしてたのかしらね。」
あ、と美咲は思い出したように。
「そんなことより、アンタあの子とうまくいってるの?」
美咲は訝しげに直也を見つめる。
「まあな。あいつが世間知らずなのも、生粋のトラブルメーカーであることも理解した。さっきも更衣室で滅茶苦茶気まずかったんだ。見た目美少女のやつが女もんの制服脱ぎだすんだぞ?」
千世には配慮というものが足りていない節がある。そして自分の外見の魅力の凄さも理解できていない。
「…。アンタ、見たの?」
多分、見たなんて言ったら殺される。そんな覇気を美咲は今纏っている。
「見てねえよ。ついでに見ようとしたやつも成敗した。」
体育館の袖には一つの死体。では無いが男子生徒が転がっている。
「ナイス。」
美咲が親指を突き立てる。
二人は自分では気づいていないが完全に千世の保護者と化している。
試合を終えて千世が二人に近づいてきた。
直也は千世が寄ってきたのを見て立ち上がり、景気の良い音を鳴らしてハイタッチした。
__パンッ!
それを見ていた美咲が唖然としている。
「アンタ達、急に仲良過ぎない?」
今日会わせたばっかりの二人が息ピッタリのハイタッチを決めている。
「多分相性がいいんだよ。な?」
「うんうん!相性バツグン!」
二人は本当に仲がいいみたいだ。
ここまで早いと何故か少し妬けてしまうが、それでも千世に友人が出来たのはとても良い事だ。
気の置けた友人が居るだけで高校生活にも箔が付く。
「そう。良かった。
それと千世?貴方肌着のシャツはちゃんと着なさい?男どもが気まずそうに困ってる。」
千世の体操服は少し大きいようで首から方の辺りがチラチラと見えて、また汗を吸った体操服が張り付いてボディラインを軽く浮き上がらせている。
「う、ごめんなさい。」
千世はまたやってしまった。と言うように反省する。だが、笑顔は崩さない。
それに直也は満足そうに頷いている。
「何よニヤニヤしちゃって。直也、気持ち悪いわよ。」
「ひっでえ!?」
「ふふふ。」そんな2人を見て千世が笑う。
7限、古典。
円華はチョークを走らせ今日の授業の要点をまとめている。
しかし、それを聞いている生徒はほんのひと握りであり、残りは円華の声を睡眠導入剤として夢の世界へ旅立ってしまっている。
キーンコーンカーンコーン。
授業の終了を知らせる鐘が鳴る。
パタンと円華は教員用の教科書を閉じた。
「今日の授業はここまで。では皆さんまた明日会いましょう。」
「せんせ。さよーならー。」
生徒達が教室から出ていく。
千世は頭の中を必死に整理している。
おそらく義務教育すら受けていない千世にとって高校二年生の学習内容についていくにはかなりの努力が必要だ。普通、ここまで置いてけぼりになってしまえばあきらめてしまうのが人間というものだ。
だが、千世にとって勉強はそれほど苦では無かった。
なにか知らないものを知ることは楽しい。そう思う程の深い探究心を千世は持っていた。
それに、
「せっかく美咲が学校に行けるようにしてくれたんだ。頑張らなきゃ!」
千世は人知れず決意を堅固にした。
そこに、「千世、ちょっとついてきてくれ。」
直也が千世の机に近づいて話しかけてきた。
「いいけど、何かあるの?」
「着いてからのお楽しみだ。」
千世は今日まとめたノートを閉じると二人は並んで廊下を歩き出した。
目的地は北館2階の隅。南館の陰に隠れて日の当たらない位置にあるその部屋の周りは薄暗い。
千世が目的地に近づいてくると、「生徒会室?」部屋の扉に取り付けられたプレートが目に入った。
生徒会室、それは変人達が集まる魔窟、日々生徒達の厄介事を解決する為に使われる作戦会議室。
噂に寄れば、その部屋にはこの学校の陰謀が眠っていて、いつか生徒会がこの学校を牛耳るのだとか。
生徒達は見て見ぬ振りをしてこの部屋には近づかない、近づいて良い事がある筈が無い。
つまり、これは明らかな罠。
だが、今日初めて学校に来た千世にそんな事分かるはずがなかった。
直也の顔が愉悦に浸る。それに気づかずに千世は扉に手を掛け、引いた。
______。
中にあったのは暗闇だった。
千世が扉を跨ぐと直也が後ろに控える。
「今だ!」
ガタッガタガタ!
直也が叫ぶと物音を立ててロッカーの中に隠れていた伏兵達が飛び出し、千世を取り抑えようとする。
その手には1枚の紙が握られている。
「直也、騙したなぁ!?」
素っ頓狂な声をあげる千世。
これは貰ったと二人の刺客が千世に手を触れた瞬間。
視界がひっくり返った。
そのまま二人は地面に伏され、千世の足元に転がった。刺客の手にあった紙は、今千世の手にある。
刹那の攻防に勝利を挙げたのは千世だった。
「ぐえー。」1人は完全に床にのびている。
「センパイ!こんなの聞いてないっスよ!」
もう1人は千世の足下に敷かれ、直也を糾弾している。
「ふう。えーと、なになに?生徒会参加のご案内?」
千世が紙に書かれた内容を読み上げる。
「説明。ある?」
千世がやや呆れ気味に言う。
「ドゥドゥ。落ち着け千世、騙したのは悪かったから。まず、そいつらを解放してくれ。」
千世は足を退かして二人を肩を貸して立たせてやる。
どうやら、直也は千世を生徒会に入れたかったらしい。強行手段に出たのは、千世が生徒会の噂を知っていたら断られてしまうかもしれないと思ったかららしい。
「言ってよ、別に断らないよ。」
千世は直也が頼むというのなら断らない。それほどまでに千世は直也を信頼していた。
「マジか、?悪ぃ二人ともどうやら俺は読み違えたらしい。」
床に転んだことで汚れたスカートを払っている女性徒二人に謝罪する。
「もう、全くっスよ!」
女生徒の一人が直也を責めたてる。
「まーまー、落ち着いてよ真ちゃん。取り敢えず自己紹介しないー?」
もう1人は真という名前らしい女生徒を宥めて、提案を持ちかけてくる。
「お、そうだな。じゃあまず真から。」
「私からっスねー?改めて1年4組の新庄真っス!ここでは書記をやってるっス!」
ロングボブという程の長さの赤茶色の髪をピンでとめた少女が元気よく自己紹介をしてくる。
言葉のとても歯切れが良く、身長も千世よりかなり低く150cm程しかない。何とも後輩属性の強い少女だ。
よく見ると確かに一年生を示す赤色のスリッパを履いている。
ただ少し疑問もある。違和感の正体を探ろうと熟考しようとして、
「私は2年5組の水瀬香織ー。しがない下っ端役員だよ。よろしくねー!」
なんておっとりとした少女の自己紹介が始まってしまい思考を切り替える。
髪を美咲程ではないがかなり長く伸ばしており、胸上当たりまでの淡く青の入った黒の髪を三つ編みにしてねじりお団子のように纏めている、時間のかかりそうなヘアセットだ。
千世の感想としては正に天然、他人から可愛いがられるタイプの人間だ。
「上月千世です。2年3組です。」
また、やってしまった。何か変な日本語になってしまったことを悔しく思いながら千世は自己紹介をする。
千世はある事に気づいた。
「あれ。副会長はいないの?」
千世の手元にある紙には、参加の意志を尋ねる文章と共に参加した場合の役職欄がある。そこには確かに副会長という役職が書かれているがこの教室にその人物の影は無い。
千世の問いに周りにいる3人の顔が引き攣る。
「あぁ…。それは、だな…。」
直也が何とも微妙な顔で歯切れの悪い言葉を発した。
「もしかして美咲?確かに、こういうの似合うかも。」
「今美咲って言ったスよね!?美咲センパイのこと知ってるんスか?どういう関係スか!」
ぬるりと千世の視界の中に真が飛び込んできた。
「うわぁ!ビ、ビックリした。」
「おい今はそう言う時じゃねえ。
悪ぃな千世、コイツは美咲に憧れているらしくて、美咲という言葉を聞くと止まらなくなっちまうんだ。」
そう言って直也が真の頭を小突いた。
真が「ちょっとくらいいいじゃないっスかあ。」なんて漏らしながら渋々引いていく。
千世はまだ大きく鳴っている心臓をおさえつける。
「そ、それで結局だれなの?」
「ああ、それはだな?」
その問いに直也はまっすぐ千世を指さした。
「は、…。ハアアアア!?」
千世の喚声が教室に響き渡った。
今、千世は直也と向き合って生徒会室のソファに腰かけている。生徒会メンバーの二人はその脇にある机の上に腰を預け話を聞いていた。
「それで?なんで僕を副会長にしたいの?」
「ああ、それはだな。ただ単にうちの生徒会の人員的に副会長が出来るやつがいないんだ。まずメンバー自体も少ないしな。」
「嘘だ。香織さんがいるじゃん。」
「いや、香織は部活があるからな。副会長としての仕事量は正直多くてな、部活をしながらじゃどっちも中途半端になっちまうんだ。」
「美咲は?」
「アイツは正式な生徒会メンバーじゃない。俺らをこき使う悪魔だ。」
うんうんと脇の香織がうなづいている。
恐らくは美咲のせいでかなりの不幸な目にあっているのだろう、可哀想に。
「でも、直也。君はそんな事で誰かを無理矢理に役目を押し付けるような人間じゃない。」
千世は断言する。
「いや、それだけだ。」
直也が少し目を逸らした。
「嘘ツキ。」
「いいじゃないッスかー?言っても。」
真が直也の方を小突いた。
「はぁ、しょうがねえ。千世にんな事言われちゃ黙ってらんねえよ。」
少し直也は嬉しそうだ。
今日会ったばかりとはいえ千世がこんなに信頼を向けてくれている。それは何とも得難き友情というものだ。
「勝手だとは思っているが、お前はこの仕事をするべきだと思ったんだ。」
「どういう事?」
「千世、お前はここのことだけじゃなくて常識というものもわかっていない。それじゃこの先いつか痛い目に遭う。」
「そうか。僕を思ってくれてのことなんだね。ありがと。
でも、なんで僕はその仕事をすると色んな事を知れるんだ?」
直也が少し顔をしかめた。
「生徒会は羽月にほぼ支配されてると言って過言じゃねえ。だが、アイツのやってる事はいつも正しくて学ぶことも多い。生徒会ならお前は羽月と一緒に活動でき、そして物事の道理というものを身につけられる。」
あとは分かるだろ。と言うように直也は返事を待っている。
千世は少し考える。
今の自分というものを客観的に見る。
いつも誰かに助けられている自分。一般常識というものも知らない自分。
美咲に恩を返そうとしている千世にとって、それはあってはならない事だ。
なら、
「正式に、僕を生徒会に入れて欲しい。」
千世は覚悟を決め、自分から嵐に踏み出した。
「ようこそ。私立桜ヶ丘高校生徒会へ。」
直也は待っていたと言わんばかりに手を差し伸べた。
今日二回目の硬い握手をする。
千世は生徒会の参加届にサインをした後、今日は何も仕事は無いと言うので直也と並んで昇降口に向かっていた。
昇降口には美咲が待っていた。
「あら、遅かったわね?」
そう言って二人の顔を見回した。
「直也。アンタ千世になんかした?」
「別に、生徒会に入れただけだ。」
「そう。」美咲の反応は意外と淡白なものだった。
「千世が納得してそうだから何も言わないわ。」
「なんかお前ホントに親みたいだぞ?」
「何よ、アンタこそ千世のこと気にかけちゃって。アンタの方こそ保護者見たいじゃない。」
二人の間にはバチバチと電流が走っている。
「もう、喧嘩はだめ!ほら、美咲帰ろ?まだ道が怪しいんだ。」
美咲の手を引いて千世が前に出る。
「はいはい。」
千世と美咲の様子を見ていた直也が違和感を覚える。
「いや、お前らその言い方だと千世の家を羽月が知ってるってことか?そんなに前からの付き合いだったのか。」
「いいえ?ちょっと前から私の家に千世が居候してるのよ。」
「駄目だな、お前たちと絡んでると感情がジェットコースターみたいになっちまう。」
直也の目は遠い所を見つめている。
今日だけで何度驚かされたことか。心臓に毛を生やした方が良いのでは?
校門を抜けると直也は用事があると言って街の方へ歩き出した。美咲達は直也と逆、住宅街に向かって歩き出す。
「千世?」
「なぁに?美咲。」
「どうだった?学校。」
「とっても。とっても楽しい!」
千世は満開の笑顔を美咲に向ける。
「そう、良かったわ。」
こうして千世の大波乱の学校生活一日目は幕を下ろした。
2つ目のエピソードが更新されているのは、後書きをいじったからです。