プレゼントのお返し。
「へー、ここがねー」
ある日の放課後、私はオスカー殿に呼び出されました。彼はきょろきょろしています。来る機会がなかったとも仰ってました。
場所は温室近く、学園の外れの方になりますわね。こちらで私は定期的にサロンを開いています。内心は複雑ではありますが……現状、何も起きてはいませんものね。つつがなく催されています。
「そうそう、これ。渡しておきたくて。いつももらってばかりだからさ?」
オスカー殿は抱えていた包みを開かれました。出てきたのは――あまりにも馴染みがあるもの。
「オスカー殿……こちらは」
小さめな宝箱たち。いずれもダンジョンで手に入るものでした……何故?
「ん? だって、集めるのが趣味なんでしょ? ヒューゴと話していた時にさ、アリアンヌ様が集めているって教えてくれて」
その後、しまったとか呟いていたけど。オスカー殿はそう加えられていました。
「まあ、おほほ……」
ヒューゴ殿としては失言だったのでしょうか。私としましては、ダンジョン通いがバレなかったので問題ありませんが……。
「オスカー殿、大変ではありませんでしたの? そちらは――」
『ダンジョンで手に入れましたの!?』
と、喉まで出かかりました。危ない。どうして私が知っているのかという話になりますものね。
「全然? ほら、あのダンジョンで取ってきたんだけど、慣れたものだし。ほら、怪我とかもしてないでしょ?」
「ま、まあ……そうでしたの――」
『あなたもダンジョンに通いますの? 例の地下室行きましたの? それからそれから』
と、食いつくところでした。私はこうして平静を装うのが精一杯です。オスカー殿は不思議そうに見ていましたが、
「とりあえず、もらった分。これでお返しになるはずだから。そうそう、色の好みとかあった?」
「色……」
オスカー殿は私が差し上げてきた分と同数、それも四色も偏りなくでした。ええ……緑色も含まれておりました。本来の用途はあなたに差し上げるものですのに。
「……いいえ? 満遍なく好みましてよ? ありがとうございます、オスカー殿」
せっかくですもの、ちゃんといただきましょう。今回は他者に渡すこともなく、私の方で保管させていただきましょうか。オスカー殿からの贈り物なのですから。
「そう? 良かった。ほら、微妙にサイズ違ったり、鍵穴の形も違ったりするからさ」
「まあ、ほんとうですわね」
オスカー殿に教えられて、今気がつきましたわ。こんな細かく違っていましたのね。私ときたら、便宜上とはいえ、集めるのが趣味と言っておきがながら――。
「……我ながら変わった趣味ですわね」
令嬢の趣味として良いのでしょうか。私は思い悩みました。
「なんで? 普通にいいと思うよ?」
「……!」
なんてことないと、さらりと。オスカー殿は屈託のない笑顔を見せてくださいました。オスカー殿、あなたという方は――。
「……あの。冒険譚、聞かせてくださるかしら。私、興味がありますの」
「へえ、そうなんだ! うん、いいよ。ほら、座って座って」
ダンジョンに興味がある令嬢であろうと。オスカー殿は笑って受け止めてくださる。私の椅子を引いて座らせてくれた。
「俺も座ろっと」
横に座るのはオスカー殿。自然と距離が近づきますが……そこは、まあ。にこにこ笑顔のオスカー殿も特に気にしてないようですし。
「でさ、即興でパーティー組んだりしてさ? その人らと意気投合して、一緒に食べに行くかぁって。で、帰り道に絡まれている女の子を一致団結して――」
「まあ、そうでしたの……ふふ」
楽しそうに語ってくださるオスカー殿。私の口元も綻びます。
「……っ」
オスカー殿の話は止まってしまいました。ですが、それは少しの間だけ。彼は話を再開したのでした。
本当に、本当に楽しそうなオスカー殿。人に囲まれて、笑い合って。あなたはそのような方。
なのに、そんなあなたにも影が差す。これだけ朗らかなあなたにも――暗い影はある。
ねえ、オスカー殿。私達は友人ということでよろしいのでしょうか。そうですわね、あなたは私を友人だと思っていてくれるからこそ――ここまで気兼ねなく接してくれるのでしょうね。
改めて、私は彼との友愛という形をとろうと思いました。彼もきっと、望んでくれていることでしょう――。
私は就寝準備を済ませ、バルコニーまで出てみました。春の風が心地よいこと。
このまま、順調だと思いつつも。私の中にあったのは『彼女』の存在。
そう、この時期でした。彼女は――ブリジット様は、転入してきたのですから。
……ブリジット様の入学によって、また、婚約破棄されようとしても。
「大丈夫。前を向けますから――」
私は月夜を見上げた。
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