別日の告白現場。
入学して少し経ってのこと。その日の放課後、私は先生から教わっていたこともあり、遅い時間になってしまいました。鞄は教室に置いています、取りに戻りませんと。
「……?」
教室に着くと、話し声がします。この状況……デジャブでしょうか。ものすごく覚えがある展開でしてよ。
仕方ありません、時間をどこかで潰しましょう。私は踵を返そうとしましたが。
「――友達として好きだよ。友達としか思ってない」
そのお声はオスカー殿のものでした。話はそこまで進んでいましたのね。
それにしても……なんて冷たい声。オスカー殿の冷ややかな声が、私の頭から離れてくれない。
「そんな……ううん、友達でもいい。友達からでもいいから! お願い、オスカー君!」
相手の婦人は前とは別の方でしょう。彼女は涙声で彼に縋っているようです。
「……ごめん、友達以外無理。それに君、貴族令嬢でしょ。もっと良いご縁があるって」
「それは……それなら、それこそオスカー君がいい! 父上にも話をして――」
「親を通されちゃ断れないけど。それでも……ごめん」
オスカー殿はどこまでも――彼女の言葉を受け入れないようです。『ごめん』、この言葉に彼の思いが込められていました。
「……っ!」
彼女の言葉にもならない声。すぐに開かれたのは教室の扉、飛び出してきたのは彼女。
「きゃっ」
私と彼女はぶつかってしまった。私は彼女を抱き留める形となった。
「アリアンヌ様……ごめんなさい」
彼女は私から離れ、またしても走り去っていきました。そんな彼女を迎えるのは、ご友人のようです。心配したのか、ついてきたのでしょう。友人に慰められながらも後をしたのでした……。
「巻き込んじゃったね……」
夕日の教室。窓によりかかりながら立つのはオスカー殿。懐かしいと思える光景。
「いいえ、私こそ覗く形になってしまいましたから。本当に……」
本当に故意ではなかった。それでも、見てしまったのは事実だったから。
「わかってるよ。そういう人じゃないでしょ」
「!」
オスカー殿ははっきりと言ってくださった。私は驚くも嬉しい気持ちに――。
「……オスカー殿」
「……」
そこまで浮かれた気持ちにはなれませんでした。オスカー殿もまた、辛そうでしたから。夕暮れの教室の中、一人憂う彼もまた、胸を痛めているのでしょう。




