表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/438

逆らえないって思っていたのに。

 春休み最終日。私の骨も休めて良い日でありますが、男爵領に向かっておりました。さすがに新学期前ですから、イヴには休暇を与えました。


 やってきましたは、男爵領。あの廃屋は変貌を遂げておりました。詰めの作業をオスカー殿の方で進めてくださったようです。


「ごきげんよう、オスカー殿」

「……おはよう」

「完成しましたのね。お見事ですわ」

「……うん」


 オスカー殿は心あらずですわね。先日の件を引きずっておられるのでしょう……。


「……この前はありがとう」


 と、オスカー殿が切り出されました。


「……はあー、なっさけな。俺、前からあの人達には何も言い返せなくて。抵抗……だって出来なくて」


 オスカー殿は空を仰ぎながら、そう口にしていました。頼まれごとも結局やったし、とも。


「抵抗、出来ていたではありませんか」

「……」


 あなたは私を庇ってくれた。相当勇気が必要だったことでしょうに。


「あんなので……?」

「あんなのとは何です。充分ではありませんか」

「……はは。不思議だ」


 力なく笑うのはオスカー殿。


「もう逆らえないって思っていたのに……なんでだろ」


 彼は私の瞳を見つめて、そして。


「――アリアンヌ様がいてくれたからかな」

「……オスカー殿」


 はにかんでいました。私もまた、その目からそらせず。

 しばらくは見つめ合ったままでしたが、そらしたのはオスカー殿の方から。


「……。今日、時間もあることだし。案内するよ」


 彼は何事もなかったかのように、そう提案してきました。今はまだ……核心には触れられませんのね。


「ええ、お願いしますわ」


 私もその誘いに乗ることにしました。そうですわ、今の内にプレゼントを渡しておきましょう。


「オスカー殿、こちら。どうぞお受け取りくださいまし」

「プレゼント? うん、ありがと」


 すんなりと受け取ってくださったわ。これはよきこと。


「――へえ、万年筆。書き心地も良さそうだね。普段使いに……そうだ!」


 オスカー殿はご機嫌になったようです。それから、明るい顔を私に向けてます。


「アリアンヌ様、アリエスじゃん?」

「ええ、そうですわね」

「そうだ、そうだった。うわぁ、楽しみ」

「!」


 オスカー殿はご満悦そうでした。やった、とまで仰ったのですから。私の思い違いではないはず、あなたも喜んでくださるのだと。ああ、私、小躍りしそうですわ。


「あとはだなー、同じクラスになれたらいいけど」

「きっと、同じクラスになりますわよ」


 私が確信めいたよう言うと、オスカー殿は驚かれました。それでいて、興味津々でもあります。


「なにそれ、予言?」

「ええ、そうですわ。的中しましてよ」

「……はははっ、なにそれすごい」


 私達は同じクラスになる。本当は知っていたから言えたことですが、ご容赦くださいませ

 確認した好感度も器の半分ほどに。オスカー殿と親しくなったと思って良いのでしょうか。

 幸先が良いこと。私の気持ちも上向きになっておりました。




 来る四月、入学式ですわ。講堂にて代表挨拶も終え、私は自分のクラスへと戻ることに。


「――ごきげんよう、皆様」


 私の入室と共に、教室は沸き立つ。『きゃあ、アリアンヌ様よ!』とか。『麗しいですわ、お近づきなれたら』とか。ああ、久しい反応ですわ! 皆々様も歓迎していだだけるようで――。


「……」


 この刺すような視線はなんですの。一体、どなたが……。


「……ああ」


 ヒューゴ殿……? 何故、と言いたいところですが、原因は思い当たりますわ。

 結局、ダンジョンにも行くこともなく。あなたに会いに訪れても、今度はあなたがいないという。なんという間の悪さですこと。


「……ふう。よろしくお願いします、アリアンヌ様」

「ええ。よろしくお願いしますわ」


 溜息はついたものの、ヒューゴ殿は私に挨拶をしてくれました。その後、雑談にも加わってくれました。彼は大人ですわね……。


「――って、遅刻じゃないよな!?」 


 勢いよく教室の扉が開かれました。発言の主はオスカー殿。


「残念ながら遅刻です。入学式は終わってますよ?」

「まじかぁ……」


 ヒューゴ殿がすかさず指摘をすると、オスカー殿はがっかりしていました。


「……オスカー殿」


 こうして遅刻することが度々ありましたわね。今になって思うのです。あなたは無理を強いられていたからと――。


「……」


 ああ、周囲の目がありますわ。どれも緊張したもの。私が怒鳴りつけるのか。叱責するのかと。そう思われていますのね。


「よろしくお願いします――同じクラスになれましたわね?」

「……っ! うん、そうだね。よろしく!」


 私はにこやかに彼を迎え入れたのでした。





お読みいただきまして、ありがとうございました!

明日も投稿予定です。

気に入っていただけましたら、高評価・ブックマーク等をしていただけますと

大変励みになります!よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ