宝箱争奪戦は続きましてよ!
「――アリアンヌ様、気づかれましたか」
「ん……」
ジャングルの開始地点にて、私は目を覚ましました。顔を覗いてきたのはヒューゴ殿。
「……その、もう少し安静にしてくれていても」
頭上からはイヴの声。私は……彼に体を預けてもたれていました。
「……え、ええ! ご心配かけましたが、私は、私は全くもって大丈夫ですわ……!」
私はさっと体を起こしました。後ろにある木を背に、座り直します。
私からうさ耳は消失し、元通りになりました。何より精神、精神が通常になりましたわ。
「この度は面倒をかけましたわね……お二方、ありがとうございました」
深く感謝しますわ。私は頭を下げました。お二人は萎縮してますが、そこはきちんとしませんと。
「……とりあえず、続ける?」
「ええ、続けたいですわ」
「私も出来れば」
イヴの問いに、私もヒューゴ殿もそう答えました。皆、体力面にも問題無さそうですし、時間もありますもの。
「わかりました。でも……状況次第で強制帰還はするから、ね?」
「!」
イヴは私に笑顔を向けてきましたが、目が笑っていません。あなた、帰還スキル使えましたのね……! 先程は偶々出口間近だったからで……。
「アリアンヌ様……貴女の従者殿は本気のようですね」
「ええ……」
ヒューゴ殿は喉を鳴らされていました。ええ、イヴの目がそう物語っていますもの……。
その後もダンジョンにて探索をしておりましたが。
「――あら、また会いましたなぁ」
「あなた方は……!」
しれっと現れたのは、あの集団でした。
「言うたやろぉ? ――今回だけやって?」
女性の一声に、彼らは大声を上げて笑っています。
「まあ……ほほほ、おーほほほほほ!」
私も負けじと高笑いをしました。彼らはぎょっとしています。
「ええ、よろしいですわ! 引き続き、争奪戦と参りましょうか!」
負けるつもりなどありませんわ! 私は彼らを見据えました。
「はい!」
イヴ、良い返事ですわね。強制帰還は怖ろしいですが、力になってもらいましてよ、イヴ!
「あ、私は一人で採取しておりますので。お構いなく」
ヒューゴ殿……ヒューゴ殿? あなた、一人だけ冷静過ぎではなくて? と思っている間に、彼はマイペースに採取に取り掛かっていますわ。
「と、とにかく。参りますわよ!」
ここは仕切り直して。さあ、参りましょうか!
夢中になっていたダンジョン探索も終わりの時間。日が落ちようとしていますもの、帰らないと。
帰還時、ヒューゴ殿はお金が貯まったからと、一人ワープゾーンを使用されました。私はイヴの後ろに乗ることになりました。イヴは終始ニコニコしていました。ダンジョン、色々ありましたが楽しかったのかしら。
「山分けで良かったのかしら……」
私たちの分け前は山分けとなりました。ただ、私はプレゼントの分をいただいているわけでして。それも私用目的ですから。
「それでいいんです。後腐れもありませんから」
ヒューゴ殿はそう仰っていました。宝箱は私に利があるばかりですのに……せめて宝箱にて計画的に還元して参りましょう。
ギルドから出て、私達は帰るばかり。
「本日はありがとうございました」
「こちらこそですわ」
ヒューゴ殿はご自宅に帰ります。ここでお別れですわね。笑顔でさようならをしようとしていましたが。
「……また、機会がありましたら。ご一緒できたら」
この日この時、そう確実なお約束ではありません。お互いの都合もありますものね。それでも嬉しいお誘いには変わりありませんから。
「ええ。そうさせていただけましたら」
「……はい!」
ヒューゴ殿も嬉しそうにしてくださいました。
ヒューゴ殿。あなたから思い出は消えてしまいましたわね。あの日々は無かったものだと。
だとしても。どこかで残り続けてくれているのだと。そう思えてならないのです。
春休みはまだまだ続きます。さあ、有意義なものにしていきましょう。私は夕焼け空を見上げました――。
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