表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/438

生身の戦闘。

 新たなるルート。ここからは魔物も徘徊しています。お見かけした冒険者達も戦っていました。

 ……血生臭い匂いがします。現実なのですね。


「……極力、戦闘は避けてでしたわね」


 こちらのダンジョン突入前に、イヴに釘をさされました。イヴの案じる気持ちもそうですし、私も強く反対することはありませんでした。

 ゲームでは普通に倒していたりもしましたが、実際そうするとなると――殺めるとなると。魔物相手といえ、私は重く思えたのも確かでしたから。


 戦闘を避けつつ、私達は宝物を回収していました。もちろん、紫のも。


 今回のルートでも終わりがみえてきました。無事探索を終えられると思っていましたが。


「――なんですの、あんたら。うちら以外にも『ソレ』手に入れようなんて」

「!」


 お出ましですわね。私達を取り囲むのは、異国の服装の集団。リーダー格の女性は、胸部がはだけた着物のような恰好をしています。

 彼らもまた――宝箱を狙っている人々。争奪戦は避けられそうにありませんわね。


「走りますわよ!」

「はい!」


 先手必勝で私達は駆けだしていきました。追う彼ら。


 彼らも何らかの目的があって、宝箱を回収しようとしている。イヴがかつて言ってくれたように――私への妨害目的も考えられます。

 おいそれと邪魔をされるわけにはいきませんわ! 



「くっ」


 魔物を回避しながらの、宝箱を奪取。手こずっている状況ともいえました。


「イヴ、虹色の宝箱は諦めましょう」

「え、いいの?」

「……良いのです」


 苦渋の決断ではありますが、致し方ないことと思っています。

 なんというか、虹色の宝箱はどれもいやらしい所に置かれていました。取得するにも労するような場所に。それに虹色の宝箱――王太子殿下の攻略は時期尚早とも考えておりました。それ故です。


「あんた達、気張りな! 虹色のやつ、手に入れる好機やで!」

「へ、へい、姉さん! ……ひいひい」


 彼らは四苦八苦しながらも、虹色の宝箱を手に入れています。おかげで、それ以外の宝箱が入手できてますから……良しとしておきましょう。


 そうこうしている内に、最終地点がみえてきました。


「!」


 安心してはいられませんでした。今回、門番たる存在――魔物が陣取っていたのですから。

 沼地から這いよりし、泥の魔人。その者が立ちはだかっているのですから。


「お下がりください!」


 イヴが前に立ってくれるも、私は短剣を構えた。倒さない限りは――。


「ひいひい……あんたら、先には――」


 リーダーの女性が息を切らしながら、やってきました。相当体力を消耗しているようで。


「ひっ!」


 魔人は女性に狙いを変えた。彼女は足を掴まれ、沼地に引きずり込まれようとしていた。


「……!」


 何を迷っているの。魔物は人に危害を与えてきた。このダンジョンに出現する魔物だってそう。地上に降り立っては害しようとしている。


「――はあ!」


 身体が本当に軽い。私は跳躍し、魔人との距離を詰めた。短剣に力を込め――引き裂いた。


「……はあはあ」


 聞こえるのは断末魔――沼の魔人は消滅しました。私は荒い呼吸を整えながら、眺めていました。手にかけてしまった……でもこれで良かったのだと、言い聞かせるかのように。


「……立てますか」


 私は横たわった女性に手を差し出した。彼女の目線は私のうさ耳に。


「……けったいな姿してますなぁ」

「うっ……」


 まじまじと見られては、落ち着きませんわよ。それにしても、女性は中々手をとろうとはしませんわ。


「……おおきに」 

「え……」


 辛うじて聞き取れた声。女性は私の手を頼りに立ち上がりました。


「姉さーん!」

「む! 姉さんに何をしようってんだ!」


 彼女の仲間たちがやってきて、私を睨みつけてきました。誤解されるような状況なのかしら。

「……やめとき」


 諫めたのは女性でした。そして。


「借りを作るんは癪やし。今回はこのまま下がりますわ。今回だけやで!」

「ええー、姉さん!?」 


 私が声を掛ける暇もなく、女性は撤退スキルを使って去っていかれました。その、良いのでしょうか? 最終地点に着かなければ、得た報酬も無駄になってしまいますのに。


「……借りと仰ってましたし」


 彼女なりのケジメだったのでしょうね。ならば、私も心配することもないでしょう。


「アリアンヌ様、お怪我はありませんか!?」

 

 駆け寄ったイヴは、私の手元やら皮膚やらを確認していた。手にも触れられてますが、彼の必死な様子を見てしまっては、指摘することは出来ません。


「心配かけましたが、私は何ともありませんわ」

「……そっか。良かった、良かったけど」

「無理はしません。その約束は守りますからね」


 それは心得てますから。私とて、あなたに心配をかけずに済むのなら。そう思っておりますから。


「うん……って、ごめんなさい!」

「良いのですぴょん、イヴ」


 イヴったら、今になって私の手を握りしめていたことに気づいたぴょん。慌てながら私から手を離したぴょん。


「……え」


 イヴが目を見開いているぴょん。大きな瞳をぱちくりとしてるぴょん。彼が見ているのは私の顔、それから私の手で――。


「な、なんということだぴょん!」


 私の手が、手が……モコモコ、モフモフしているぴょん! ウサギの手になっているぴょん! それから顔を触れてみると、ウサギの髭も生えているぴょん! 

 というか、語尾が、語尾が……ぴょん! 


「……ぴょん。ぴょーんぴょん、ぴょんぴょん!」


 な、なんでしょうぴょん。急に踊りたくも歌いたくもなってきましたぴょん。もう何も考えることなく、ずっと歌って踊って――。


「アリアンヌ様!」


 血相を変えたイヴは、私を抱き上げていたぴょん。そのまますぐ近くの最終地点までなだれ込み、脱出してくれた……気がするぴょん。そこからの意識はなかったぴょん……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ