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ラッキーラビット道場。

 ワープゾーンは一瞬にして、私を空中にある島に連れてきてくれました。


「まあ……」


 目の前に広がるは――草木生い茂るジャングル。流れるのは広大な川。レアなダンジョンですわね。気候は熱帯、蒸し暑さに汗ばむほどでした。

 私は周囲を見渡しましたが、お二人の姿はありません。待つことにしましょう。


 冒険者達も訪れています。ダンジョン入口は流れる川の先にある為、彼らはボートに乗り込んでいます。

 といっても、手段はボートだけではありません。空を飛んで渡ったり、水上を歩いて渡っていたり。スキルによるものでしょうね。中には泳いで渡るという猛者も――。


「ん?」


 泳いで渡る、ですって? この広々とした川を……生身で。しかも。


「あの方は……」

 

 思いっきり覚えのある方でした。人目見たら忘れられない、そのお姿。頭部は狩った魔物のそれを被り、鍛えられた肉体を惜しみなく晒す方。インパクトがあり過ぎでしてよ……! 

 その方は綺麗なフォームのまま、泳ぎ去っていかれました。


「……泳げるのかしら」


 私の体はうずいてきました。ああ、一歩、一歩と。川に導かれるように――。


「……アリアンヌ様?」

「!」


 後方からイヴの声。私の体はびくっとなりました。危ない危ない、色々と。


「お待たせしちゃった……でも、仕方ないよね?」

「……」


 どうしたのです、イヴ。どうしてそうも冷ややかな目をしているのす。私を責めたいという気持ちまで伝わってきますわ……! 


「アリアンヌ様、お待たせしました」


 ヒューゴ殿も参られました。彼もイヴから渡された仮面をつけていました。それでいて、どこかお疲れの様子。


「連れてきてくださったイヴ殿には感謝ですが……ああ、お金が欲しい! ……今度こそは私も!」


 と、ヒューゴ殿。切実なるお言葉ですわね。どうなさったの? 


「アリアンヌ様……お金が大量に手に入るルートもご一考願えますか。出来たらで良いのでご検討を……!」

「ええ……ええ、そうですわね。お金は大事ですわね。私にお任せないな! 良きルートに導いてみせましてよ!」


 私は拳で自分の胸を叩きましたわ。ヒューゴ殿ははおおー、と感心してくださいましたわ!

 

「ええー……従うけど」


 イヴはげんなりとしていました。これもまた、記していたのかしら? もう、大半のことは記憶していると思った方が良さそうですわね。

 そう、『ラッキーラビット稼ぎ』ですわ! ノリノリに踊れば踊るほど、大量のお金を置いていってくれますの! 


「……なんでしょう、悪寒がします」


 ヒューゴ殿は察したご様子。まあ、苦手そうでありますものね。強制はしませんが、イヴもなんだかんだで踊ってくれましたもの。あなたもノリノリになってくれることを楽しみにしておりますわ。


「ほほほ、おーほほほほ!」


 私の高笑いがジャングルによく響き渡りました。幸先がよろしいようで、何よりですわ! 



 今回選択したのは、金策重視。宝箱も落ちていたらいいな? くらいのルートです。


 立て続きにラッキーラビットに遭遇していました。宝箱も思った以上に落ちていました。回収が捗りますわ。


「……ぴょーんぴょん」


 イヴは顔を真っ赤にしながらも踊ってくれました。相手方もそれがかえって良いと、たくさん落としてくれています。


「はいはい」


 ヒューゴ殿はうまいこと合いの手担当となりました。表情は無に等しいですが、正確なリズムは一定の評価を得ています。


「はい、ぴょんぴょんっ! はいはいっ!」


 私も負けてはいられませんわね! ノリの乗って参りますわよぉ! ああ、このバイブス! 魔物達も応えてくれています。ああ、心が通じ合うかのよう! 私とあなた達は共鳴するかのようですわぁ! 

 ええ、順調のはずでした。はずだったのです……。




「……」

「……」

「……」


 ラッキーラビット達が去った後。残されたのは大量のお金と。


「な、な、何故ですの!?」 


 私はあろうことにも……うさ耳を生やしておりました。イヴもヒューゴ殿も不自然なまでに目をそらしています。 


「ああ……」


 わあ、うさ耳! ……と、浮かれていたのは最初だけ。この耳は引っ張っても抜けもせず痛いだけぴょん。


「なんてことだぴょん……はっ!」


 こうして自我まで乗っ取られそうになって……ガクブルしますわ。


「……ふう。仲間だと思われたんじゃない?」

「仲間ですって……」


 しきりに深呼吸をしたイヴが、キリっとした顔でそう言ってきました。そうかもしれませんわね……私は彼らに同調し過ぎていたから。仲間と思われた故での現象でしたら。

 プレイ中にはこのようなことありませんでしたのに……!


「くっ……これ以上の接触は避けたほうが良いですわね」


 金策を捨てることになってしまいますが、この事態はまずいですぴょん。この耳で帰るわけには参りませんわ。どうしたものかしら……。


「ご安心ください。治療方法は存じてます。ダンジョンで材料が揃いさえすれば、私の方で治せますから」

「ありがとうございます、ヒューゴ殿!」


 私は感涙寸前でした。ああ、感謝致しますわ! 


「治してからでお願いします。ぬか喜びされてもですので」

「……ですわね」


 ああ、ヒューゴ殿。ツン成分も残ってましたのね。それもまた安心しましてよ。

「ぼ、僕の方でも治療方法探ってみるから!」

「ええ、ありがとう」


 イヴもそう言ってくれました。有難いですわね。


「……なお、調合にはお時間もかかります。あと、一時的に離脱させていただくことになりますが」

「ええ、わかっておりますわ。お願いしますわね」


 ヒューゴ殿は言いづらそうにしていましたが、晴れた顔になりました。


 ダンジョン攻略は始まったばかり。私達は最終地点、ジャングルの奥地を目指すのでした。



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