ヒューゴ殿が仲間に加わりました!――ダンジョン攻略開始。
周回特典として、手にしているのは冒険者ライセンス! ならば、赴くまでです!
本日は休養日となっています。私はイヴと共に首都にあるギルドにやって参りました。イヴが受付にて正式な手続きをしています。
私は壁際にて待機しておりました。服装は冒険に相応しいパンツスタイル、長い髪もまとめていますわ。身に着けているのは仮面です。こちらの仮面は特殊であり、互いに強い思いや仲間意識がない限り、本人として認識されないものだとか。
「……あら?」
私達同様にダンジョンへと向かう方々。その中に見知った人物がおられるではありませんか。
「――はい、こちら頂戴しました。日数は二日ほどいただきますね」
「ふふ、いつも悪いわね」
ヒューゴ殿ではありませんか。彼は受付ロビーの片隅にて、女性から袋に入った何かを受け取っておりました。密談めいておりますこと。相手の婦人が仲間の方と合流し、ヒューゴ殿はお一人に。
「……ん?」
ヒューゴ殿に気づかれたのか、彼はこちらを見てきます。現時点では面識はありませんし、モブとしてしか認識されていないと思われますが。
「……アリアンヌ様?」
「!」
な、何故ですの。ヒューゴ殿は私の名を呼びました。どうやら公爵家のアリアンヌとおわかりのようです。ああ、こちらにやってきました。
「……。ボヌール家の、アリアンヌ様ですよね? 何故、このようなところに」
こちらも何故と問いたいです。何故、あなたは私だと認識できるのでしょうか。ひとまず、まだシラを切れますでしょうか?
「……人違いではありませんの? 公爵家のご令嬢とあろう方が、そんな、ねえ?」
シラ、切れてますかしら。若干苦しくもありますわね。
「……私は誤魔化されたのでしょうか。口外する気などないのに」
「いえ、誤魔化しも何もありませんわ」
「……信頼に足らない人物だと、そう思われているのでしょうか」
「いえ、そんな」
ヒューゴ殿は落ち込んでいるようです。私の胸は痛む一方です。
あなたの好感度は底をついてますのに、何故でしょうか。これはもしかして、前の周の影響が出ているのでしょうか。彼、好感度のページにて薔薇を手にしていましたものね。
「……ご内密に願いますわね」
「……はいっ」
「!」
驚いてしまいましたわ。ヒューゴ殿、あなた無邪気な表情で笑うのだから。
「……」
そうですわね、ヒューゴ殿は信頼できる方。それは私もわかっていること。
はっ! 確か、従姉がこうも言っていましたわ!
『ほら、攻略しようよー? 無事エンディング迎えたらさ、次の周から手伝ってくれるようになるからさー』
従姉は確かにそう言っていました。今になって思い出しました。あー、スッキリしましたわ。これもまた、周回特典ということでしたのね。
「私、ダンジョン通いを密かな趣味にしておりますの。コレクション目当てでもありますわ」
「コレクションですか」
「ええ、色とりどりな宝箱です。デザインも優れてましてよ」
中身のことは……言いづらいですわね。ヒューゴ殿を信頼していても、こればかりはですわ。幸い、それ以上聞かれることはありませんでした。私達は別の話題に移ります。
「――ふふ、そういうことでしたの」
「はい、それで――」
それにしても不思議な感覚ですわね。ヒューゴ殿と楽しく会話が出来ておりますわ。かつての日々のようにでした。
「私もですね、自分でも採りにいけたらと。常日頃考えておりました」
聞けばヒューゴ殿は薬草を冒険者から譲り受け、その代わりに調合した薬をお渡ししているようでした。草花お好きですものね、
「――アリアンヌ様、お願いがあります。私も連れていってくだいませんか」
「ヒューゴ殿……危険でしてよ?」
私が言うのもって話ですが、彼もまた貴族。魔物も普通に徘徊していますからね。
「承知の上です。私の培ってきた技術や知識で、お役に立てたらと」
「……そうですの」
ヒューゴ殿はお覚悟が決まっていました。あなたのお覚悟、受け止めましょう。
「かしこまりました。よろしくお願いしますわね」
「はい、こちらこそ」
話がまとまりましたわ。丁度、イヴも戻ってきました。彼にこの話をすると一瞬苦い顔はされましたが、反対はされることはありませんでした。
「でもさ、ヒューゴ様って年齢足りているかな」
イヴはヒューゴ殿の年齢を心配しているようです。確かにそうですわね。私と同い年ですし、誕生日も迎えてませんわね。ちなみに敬語を使ってませんが、あの書でタメ口で良いとでも記しているのでしょう……推測ですが。
「駄目で元々、話でもしに参りましょうか」
ライセンスはお持ちではないヒューゴ殿。私がお世話になった、例の地下室。そちらでの手続きを試みましょう。
「……年齢制限? うちは大丈夫だよ」
隠された地下室に到着し、先方に話したところ。このような返事が返ってきましたの。
「そ、そうでしたの」
拍子抜けしたと申しましょうか。ええと……? あくまで正式な方が年齢制限があると? 乗り物の関係もあるということ? 確かに私も年齢が満たないのに、有効になっておりますものね。
「――ふむ、把握しました。手続きの方、よろしくお願い致します」
ヒューゴ殿はしっかりと契約書面を確認し、その後お願いしておりました。
なにはともあれ、これでダンジョンへと出掛けられます。
「乗り物、二人乗りなんだよね。人数増やすには年数が必要なんだって」
「そうですのね、イヴ。現状ですと、あなたのみですわね」
そう、ダンジョンには空飛ぶ乗り物が必要となります。それか、高額な利用料のワープゾーン。
「では、私が利用しましょうか。お先に失礼しますわね」
資金には余裕がありますもの。ダンジョン前で落ち合いましょう。私はライセンスをかざし、ワープゾーンの陣を踏みました。
「え」
「え」
去り際に見たお二人、彼らはぽかんとした顔をしていました。




