周回特典と一緒にリスタート!
「……」
懐かしい夢を見ました。私の前世、小川結衣の頃の。
あれからどれくらい経たのか。木崎君はお元気かしら?
私はゆっくりと体を起こす。カーテンの隙間から朝日が差し込む。ああ、もう朝ですのね。いつもの起床時間ですわ、起きなくては。
「……?」
冷えますわね。いえ、冷房的なものではなく。私の寝間着もまた、厚着ですわ。
厚着……厚着!? 私は部屋のカレンダーを確認しました。確認後、私は。
「さ、さ、三月ですの……!?」
大層慌てふためきました。突然過ぎましたもの! 心の準備もなく、巻き戻っているのですから!
「……すうはあ。落ち着きましょう」
私は深呼吸をして、現状を整理することに。
今は三月――リスタートしたばかりと、そう捉えましょう。一から、ですわね。仕切り直しですのね。おそらく――私以外、記憶を有していない状態で。
「ええい……!」
私はありとあらゆるものを探し回りました。こう、何かありませんの? 周回特典とか! 好感度を引き継ぐとか……いえ、それは良いですわね。バツ印ですもの。ああ、怖ろしや怖ろしや。
「……ん?」
黒く禍々しい気配の『ソレ』。私の机に置いてあります、ソレ。私はソレを見た瞬間、ベッドから飛び起きて――天にソレを掲げました。
「ああー……ああー……! 素晴らしき特典ですわ!」
私が愛してやまない『ダンジョン』! それに必要不可欠な――冒険者ライセンスでございました! また取得し直しかと思っておりましたところに、ですわ!
「なんと、所持金額まで!」
稼いだお金も継続されていました。バッドエンディングでは無かったこの仕様、これは良きスタートダッシュですわ。チート様様ですわね!
「あとは……あとは……」
他は……特には無さそうですわね。ええ、十分ではございます。
「……。ええ、ありませんのね」
思い浮かんだのは、ヒューゴ殿からいただいたもの。異様に長持ちした花々。そして、夜。二人で眺めた月の花。そちらから生じた宝石。それらは……ありませんでした。
「当然のことでしょう」
もし、ヒューゴ殿と未来を紡いでいたのなら。私は手にしていられたのでしょう。そうではないのですから。
「……新たなルート、ですわね」
私はカーテンを開いて、外の景色を眺めた。草木が生い茂る、春の季節。
さあ、此度も張り切って参りましょうか。




