表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/438

彼は人気者。

 さあ、七月に入りました。夏の始まりでしてよ。学園ではすっかり、軽やかなお姿の皆様。夏服がよくお似合いでしてよ。

 学園は魔力によって冷房も効いておりますの。これも、大樹の力の恩恵ですわね。ええ、寒がってなどいませんわ、恩恵に対してそんな。


「うう……」


 ぶるっと震えてしまいました。さあ、学年が違うイヴとも別れましたし、教室にさっさと入ってしまいましょう。


「ごきげんよう、皆様」


 私から挨拶をすると、ぽつぽつと返事が返ってきました。ある時期に比べれば、前進してましてよ。


「……」


 それにしても静かな朝ですこと。私は教室の中央を見ました。前までは、賑わっていたところです。級友達がそこに集まっていましたから……『彼女』と話をしたくて。


 ブリジット・ジェルネ。大国の王女にして聖女。そして、我が国の王太子の現婚約者であられますわ。私は元の方でございます。破棄された方でございます……! 

 殿下との正式な婚約発表後、ブリジット様は休学されることに。来年の殿下の卒業をもって婚姻となりますのに、今の時期とのことでした。準備やご事情があるのでしょうね。


 ブリジット。かつて結衣が共に過ごした少女と同じ名前。姿も似ておりますが、私とは面識がないご様子。それどころか……まあ、色々ありまして。

 ええ、色々ありました。ですが、改めて彼女の凄さを実感します。彼女一人がいるだけで、教室内が華やぐということ。皆、笑顔が溢れるということ。それが、ブリジット様の素晴らしさであるのでしょう。


「……っと、アリアンヌ様? すみません、ご挨拶が遅れまして」


 私に気づいたのは、教室の隅の方に座っていた男子生徒。夏服をきっちりと着こなした彼は、読書中のようでしたが、立ち上がりました。


「おはようございます、アリアンヌ様」

「ごきげんよう、ヒューゴ殿」


 彼はヒューゴ殿。私がエンディングを迎えた相手でいらっしゃいます。といっても、友愛。甘い関係ということもありません。


「そうだ、アリアンヌ様。この前の本で――」

「ええ、良書を薦めていただいて――」


 ヒューゴ殿が私の元へやってきたので、そのまま雑談をしていました。なんと、手にした本も貸してくださると。有難いですわ!


「――おはよう、みんな」


 よく通るお声。晴れやかな笑顔で教室に入ってきた彼は、一斉に注目されます。


「って、遅刻じゃないよな? なら、おっけーってことで」


 悪びれもなく言う彼の名はオスカー・フェル。武勲を立てた男爵家の令息であらせられます。


「よっ、オスカー! いんや、ギリギリだし? 遅刻だ、遅刻」

「そうそう。叱られちゃえー」


 来て早々、生徒達に絡まれていますわね。続々と人が集まってもいます。

 そんな人気者である彼。サラサラの黒髪も遊ばせていますわね。背丈と体格もあって、爽やかな笑顔が似合う彼。制服はヒューゴ殿同様、きちんと着られてます。上のボタンまで留めていますの。何気にそうなのですね。


「っと、ヒューゴもおはよう。アリアンヌ様もごきげんようっ」

「ごきげんよう、オスカー殿」 


 朝から気持ちの良い挨拶ですわね。私、笑顔になりますわ。


「ええ、おはようございます。オスカー……今の内に席に着きなさい。先生が来られる前に」

「はいはーい」


 ヒューゴ殿もその流れで、席に着きました。意外と話がわかりますものね。ご本人が夜間、学校に忍び込むところもありますし。オスカー殿も嬉しそうに席を着いておりますわ。

 あ、ちょうど予鈴が鳴りました。ええ、セーフですわね、セーフ。

 私も着席し、オスカー殿をちらりと見ました。後、すぐに視線は前に戻しております。バレてません、バレてませんわ。


「……」


 オスカー・フェル殿――攻略対象の一人。


 とても人当たりの良い方ですわ。慣れない環境の私に普通に声をかけてくれたのもそう。クラスで孤立していた時もそうでしたわね。彼は中立であろうとしてくれました。私としても、好ましい方であります。

 ええ、好ましい方ではあるのですが……。


「!」


 視線を感じる方に、向いてみると――オスカー殿と目が合いました。それから彼は小さく手を振っていました。私も振り返してみました、笑顔で。ちゃんと笑顔になっていたかしら……。


「ははっ」


 オスカー殿は小さく笑いました。その、殿方相手でも愛らしいとは思いましたが……。


『うん、それもあるけれど――――あなたの伴侶選びもあるって』

『……良い機会だなって。お近づきになれたらって』


 ああ……そうでしたわ。そ、そう言って、わ、わた、私の腰を抱き寄せたではありませんか……! 私の父も言ってなかった、ならばオスカー殿も父君にしてやられたのでしょうか……? 


「ぷっ」


 思い出し赤面している私を見て、オスカー殿は笑われました。……私を見て。教師が来られたので、さすがに前方に向きを戻してはいましたわね。


 おっと、隣の女子生徒に絡まれてますわね。小突かれそうになるも、オスカー殿は笑顔で回避してます。頬を膨らめる少女の肩に触れるのはオスカー殿。女子生徒は満更でもなく、はにかんでいます。あまりにも手慣れたご様子に、私、実況してしまいましたわ。

 オスカー殿、あなた。なんともまあ……フレンドリーの化身ですの? 


「……っと」


 バツ印の烙印も押されてますが、この日々を無駄にはしないように。もちろん、オスカー殿に対してもそうなのです。

 前世でのプレイ時、攻略失敗をしていたオスカー殿。従姉の早口アドバイスがあっても、把握しきれていないオスカー殿。あなたの人となりも知っていこうではありませんか。




お読みいただきまして、ありがとうございました!

明日も投稿予定です。

気に入っていただけましたら、高評価・ブックマーク等をしていただけますと

大変励みになります!よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ