微睡む昼下がり、隣には謎の殿方。
「ん……」
この声、私はアリアンヌ・ボヌールですわね。まどろみの中から、目を覚ましましたわ。
心地の良い眠りでした。暖かさに包まれるかのような、幸福に満ちた眠り。
「ふふ……」
くすぐったいですわ。もう、どなたですの? 私の髪をくるりと、いじられているのは。
「――くすぐったかったか?」
「ええ、その通りです――」
私は寝起き直後、多大なる衝撃を受けました。
ええ、ブランコ、二人乗りのブランコですわね。そちらに乗って寝ていたまでは、記憶にあります。その後の大樹の元でのやり取りも……ですが!
「おはよう、アリアンヌ様」
何故ですの! 何故、見知らぬ殿方が、私の隣に座っておられるのです!
「あ、あ、あなたは……!」
ええ、存じない方です。体格の優れた精悍な顔立ちの方。黒い髪は前髪が長めですわね、目元が隠れていてもったいない気も致しますわ。
「……いえ、御見苦しいところをお見せしましたわ」
知らない方ではあります。ですが、この方の身なりからしまして、由緒正しき方とお見受けしました。父の招待客ということでしたら、失礼のないようにしませんと。
「……いや、愛らしかった」
「へ」
私は間抜けな声を出さずにはいられなかった。その方は、私の手の甲にく、く、口づけたのです。……いいえ、落ち着くのです私! 社交界では慣れているではありませんか! 不意打ちに驚いただけですわ、ええ!
その方の名を知ることもなく、去っていかれました。
「……なんなのでしょう」
私のこの感覚、なんなのでしょうか。彼とは初対面のはずなのに。こうも――懐かしく思えますのは。どこかでお会いしていたかしら?
「お父様が招いた客人の一人、でしょうが」
私が専念すべきは、攻略対象の殿方。
「そういえば、隠しキャラって……」
従姉は隠しああだこうだ言ってましたが、あの彼が隠しキャラというのは、いささか……。
「……いえ、念には念を重ねましょう」
その後、私は探りをいれることにしました。丁度、居間に両親が揃っておりました。二人はなんなく教えてくださりました。
なんとまあ――他国の王族の方で在らせられました。
私、冷や汗が止まりませんでしたわよ。粗相働いてませんわよね、大丈夫ですわよね?
私からの質問も受けてか、お二人は上機嫌でもありました。
私の婚約破棄のこと、気にしてくださってましたからね。これ以上のない良縁であると、前向きな姿勢であられました。
いえ、私パンクしてしまいますわ。これから、他の殿方との付き合いがありますのに。ああ、私は何を申しているのでしょうか……。
この時はひとまず、のらりくらりと対応させていただきました。ごめんなさいまし、お父様、お母様。




