表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/438

私はアリアンヌ様。

 それから月日は流れて。


 わたくしは、齢五歳となりました。両親や兄、姉からの愛情を受け、健やかに育っておりますわ。

 顔立ちもそう。ぱっちりとしたお目目も、ぷっくりとした唇も愛らしさそのもの。成長した時はさぞ、美しい貴婦人となるのでしょうね。


――ああ、中身は小川結衣です。アリアンヌ様ではございません。


 ええ、そうです。生後間もない私が喋り出したこと、両親は大層驚いておりました。まあ、驚きはしましたが、そこまでの大騒動ということもなく。私は言葉の習得が早い子と、そう結論づけられました。


 そして、私の喋り方について。つい、前世の話し方が出てしまう。家族も身内のだけならば、そうは言ってはくれました。ですが! 

 私は自分の性質を理解しておりますの。身内の前だろうと徹底しないと、ボロを出してしまうだろうと。そんな器用に立ち回れない。悲しい性質ですわね。

 私は貴族の娘。お腹ペコペコだの。ガチってる、だの。公の場でもらすわけには参りません。


 それにです。早過ぎる時期から話したことにより、親はより期待をしていると申しましょうか。神童、とも囃され始めておりまして。淑女としての教育に加え、学業にも力を入れ始めておりますの。


 今日も家庭教師の先生にみっちりしごかれましたわ……疲れましたわ……。


「はっ!」


 そういう時は、こうですわっ! 授業を終えて、ようやく私の自由時間がやって参りましたわ! 屋敷の裏手、私有地でもある草原へと駆け出しますの。

 今日も護衛の方々、いえ、者達がですわね。私についてきてくれているわ。ご苦労様。体力づくりだと思って、見守ってくださいませ。離れないようにはしますわ。




 ああ、こんなにも走れる。息を切らしながら、笑いながら。私は草原の中を駆け回っておりました。


「……まあ、これは」


 護衛達との距離が大分出来ておりました。いけませんわね。少しペースを落としましょう。休憩がてらに私は速度を落とし、歩くことにしました。


 川のほとりまでやって参りました。水車小屋がありますわ。あまり使われなくなっていたと聞いています。結構遠くまで来てましたのね。


「……ん?」


 人の話し声がしますわね。なにやら不穏な気配がしますわ。

 あら、護衛達もあからさまに私に寄って参りましたわ。無謀にも私が飛び出さないかと、見張っておられるようね。ええ、今の私はか弱き令嬢。自重は致しましょう。


 でもね、覗きはしますわ。私はそこいらにあった木箱を土台として、窓から様子を見ることに。耳をそばだてると、話し声も聞こえてきました。


「……なぜ、言う事を聞かない!? 何の為にお前を側につかせていると思っているんだ!」


 荒ぶる男性は、手にムチを持っております。言う事? 送り込む? 気になる言葉を述べておりますが、私はその前の少年の方が気になってしまい――。


「……ごめんなさい、ごめんなさい! でも、どうしても僕はスパイなんて……!」


 体を縮こまらせて、暴力に耐えている少年。その彼は、私が存じている人物でした。

 イヴ・ポルト。務め始めたばかりの、一個上の私の従者。

 暑かろうと長袖長ズボンの彼は、いつも何かを隠しているようでしたが……まさか、こうだったとは。このようなことが……常態していたというのね。私の預かり知らないところで。


 私の背後で見ていた護衛達も頷きあっていた。突入して彼を助ける算段でしょう。裏手に回って扉を開けるようです。私もついていきましょう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ