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そういう方だから、信頼しています。

「ね、ねえ、ヒューゴ様?」


 焦った様子なのはブリジット様。席を立った彼女は、愛らしい顔で近寄ろうとしていましたが。


「――ブリジット。貴女の身も案じています。ですから、私にも犯人捜しを協力させてください。そして、進言させてください。――ご自宅で待機されては?」

「ヒューゴ様! でも……!」

「……誰かをいたずらに疑うより、その方がいいかと思います」


 ヒューゴ殿は変わらず彼女に優しい。ですが、どこか一線も引かれているかのようで。


「……それって。アリアンヌ様の取り巻きの人達が白だったってだけで。アリアンヌ様は!」


 ブリジット様はまだ引き下がらない。ヒューゴ殿は一度彼女を見た後。


「ええ、そうですね。アリアンヌ様の身辺も調査しないとですね。構いませんか?」

「ええ、もちろんですわ」


 私の方も伺う。ご丁寧に本人確認ですわね。


「……そうですね、そういう方だから」


 ヒューゴ殿は優しい表情をしてから、級友達に目を向けた。


「本心を言わせていただくならば。彼女は調べるまでもなく――潔白だと思っています」

「……ヒューゴ殿?」


 ヒューゴ殿は曇りない瞳で、そう宣言してくれた。私はただ、驚いて。


「私個人として。アリアンヌ様を信頼しているからです」


 そう、迷いなく言ってくれたのです。


「ああ……」


 ヒューゴ殿。あなたは、あなたは信じてくれるのですね。疑いの目を向けられる中、あなたは潔白であると。私の心は満ち足りておりました。


 教室は静まり返りました。ブリジット様もそうです。体をわなわな奮わせておりますが、私というよりはヒューゴ殿に向けて。

 ほどなくして、次の授業の先生が来られるでしょう。気まずい空気の中、席についていってます。


「ごほっ、ごほっ……」

「お体の方は大丈夫ですの?」

「ええ、単なる風邪ですから……本来は登校も控えるべきでしたが」


 ヒューゴ殿は今になって咳き込んでいます。無理をして来られたのですね。プレゼント責めの影響かとも危惧しましたが、風邪で良いのかしら……。


「ヒューゴ殿、此度はありがとうございました」

「いえ、別に……!?」


 私は彼の背中をさすっておりました。そう……懐かしく思いました。前世の弟も、幼少の頃はよく咳き込んでいましたから。懐かしさのあまりと、申しましょうか。つい、とも申しましょうか。


「……」


 切れ長な瞳の彼の目が大きく開かれていた。私は今になって気がつきました。慌てて、その手を離したのです。


「あの、ヒューゴ殿……」


 どう謝ろうかと思っておりましたが。


「……もう、止めるんですか」

「!」


 名残惜しそうに言われました。あなた、どうなさったの……。


 それに、ほら。


「……」


 ブリジット様からも睨みつけられてますわ。あなたの角度からは気づかないでしょうけど。


「……ごほっ。ええ、無理はよくありませんね。移すのも良くありませんし、やはり早退させていただきます」

「ええ、承知しました。お大事になさってくださいね?」

「はい……ごほっ。迎えが来るまでは救護室で休んでます」

「そうですわね。付き添いますわよ」

「いえ、お構いなく。……甘えるわけにもいきませんから」


 提案したものの、それは遠慮されました。


「まあ。なんて殊勝なことを……送りますわね」

「いや、遠慮していたでしょう……!?」


 ほら安静になさって。彼はまだ不満そうにしていましたが、私は構わず付き添うことに致しました。ほら、今ふらついたではありませんか。


「このままじゃ……」


 扉を閉めた時、聞こえてきたのは焦るブリジット様の声でした。




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