生まれ変わったから、今度こそ。
話、長くなっちゃったね。アリアンヌ様はまだ目覚めない。
「……」
従姉が作ったゲームの登場人物、しかも主役。そんなアリアンヌ様に一回ね、転生していたんだね。今の現状となると……もう終わってしまったのかな。
私、あなたが好きなんだよ。努力してきたことも。ひたむきだったことも。辛いことも我慢して堪えてきたことも。もちろん、どこか憎めないところも。
なんか、他人とは思えないとこもあって。完璧令嬢相手にでもそう思っていたんだ。
「真麻さんが考えていた結末と違ってしまったなら……私がやったことによって、歪んでしまったのなら」
原因なんてわからないよ。私がダンジョンをやり込み過ぎたから、くらいしか。でも私にも一因があるって、何故かそう思えてならなかった。
「……このままじゃ、いやだな」
このまま終わらせたくなんてない。
転生するまでのあの場所は温かな場所だよ。アリアンヌ様だって、きっと迎えてくれる。
でも、アリアンヌ様の心に傷は残ったまま。私と一緒で……故意があって殺されたんだ。
「あの中の誰かが……ってことだよね」
役目を放棄してまで、警備の人が殺すかな。距離的にもそう。近くにいたのは、攻略対象の四人と、従者。それからヒロインの――。
「あれ……」
頭がぼやける。あれだけ重要なポジションだった彼女のことが、今になって思い出せなくなっていた。どうして。頭を抑えながら私は思い出そうとするけど、だめだ。思い出せない。
「……いやだ」
こういうゲームのはずじゃなかったんだ。歪んでしまったんだ。アリアンヌ様は巻き込まれてしまったようなもの。
「……本当にいやだ」
私はまた、同じことを口にした。本当にね、嫌なんだ。このまま救いも何もないなんて。
私もアリアンヌ様も。勝手に誰かに命を奪われて――終わってしまうなんて。
「……お願いします、どうか」
私は祈った。たとえゲームキャラだろうと、私には血が通った人間も同然だった。
アリアンヌ様があまりのも報われなさすぎる。何かの救いはないか、そう。
「――もし、やり直せるのなら。あの結末を迎えなくて済むのなら」
私がつけていたバレッタが淡く光った。私は祈りを続ける。
「……タイトルにある、恋愛遊戯。それにだって打ち勝ってみせます」
バレッタが強い光を放った。やがて私達をを包み込んでいって――。
目を覚ましたらそこは、ゆりかごの中だった。
きょろきょろと見渡すとまず、豪華なシャンデリアが目に入ってきた。煌びやかで調度品ばかりの部屋。私を包む布だってきっと、高級品だと思った。質感からして違う感じ。
私は手を伸ばす。小さな手。うん、そうだ。今の私はきっと、赤ん坊なんだ。
「――ああ、起きたのだな。おはよう、私達のアリアンヌ」
優しそうな男性の声。隣にいる女性もまた、愛しそうに私を見つめてくれていた。わかるよ、この人達はアリアンヌ様のご両親だ。
どうやら私は、赤ちゃんの頃に戻ってきたようだ。それもアリアンヌ様として。
「……」
私の中にいるはずのアリアンヌ様の意識。それはまだ閉ざされたまま。本来なら、彼女が受け取るべき愛情だったのに。でも。
やり直せるのなら。
あんな結末を迎えなくて済むのなら。
幸い、私には前世の知識がある。あんなエンディング、迎えさせはしない!
いつかはアリアンヌ様に返す体だとしても、私はただ――アリアンヌ・ボヌールとして。
今度こそ、生き抜いてみせるんだ。
「お父さん、お母さん。よろしくね。それとね……お腹ペコペコなんだ」
私は笑いながら、舌ったらずな声で話しかけた。あ、やらかしたかも。目の前の二人は仰天していた。
「……あ」
乳幼児の手に届かないところに、壁に飾られていたもの。不格好な形のバレッタ。
――木の葉の形をしていた。
きっと、そう。私は手にしたまま生まれ変わったんだ。
「……」
頬に涙が伝った。




