わたくしと彼女達の誇りにかけて。
「ブリジット様! 皆様も! 全くもって誤解でありますわ! 仮に私がヒューゴ殿を好いていたとしましょうか。ですが! このような卑怯な手を使いませんわ!」
私は言い切ってみせた。周りは白けた目で見てきますが、私は譲りませんわよ! 現に何もやっていませんもの!
「あなたに危害を加えるなんて、どうして……」
私を敵視しておられるようですが、私、あなたのこと心配してますのに……。
「……」
ブリジット様は口だけ動かしていた。ただ、それは聞き取れないもの。聞かせるつもりでもなかったよう。
「……まあね。アリアンヌ様、休まれていたからね。だから知らないだろうけど、あなたが休んでいる時、ブリジットはまた誘拐されそうになっていた。……アリアンヌ様御本人は実行は出来ないだろう。でも――」
また危ない目に遭いましたの、ブリジット様。次期王族夫人だからでしょうか?
それに、オスカー様。あなた、今なんて仰ったの。『かつての私の取り巻きなら、実行できるんじゃないか』、ですって!?
「アリアンヌ様、孤立しているけど。ほら、それでも名門の令嬢じゃん? 家柄を使って、無理にでも命じればって。あとは彼女達にも言質をとればって」
「……そう」
痛いところつかれましたわね。私は彼女達からそっぽ向かれています。そして、そのような関係とも思われていた。実際……そうだったのでしょうね。家柄だけの関係だったと。
誰かが、私を追い詰めようとしているのかしら。誰かが――。
私はただ、伝えたいことがあった。また笑われようと、嘲笑われようと、言わずにはいられなかったこと。
「……大した侮辱だこと」
私はうんざりしながらも、そう告げた。私はアリアンヌ様のようには振る舞いきれない。彼女達は慕ってはくれたけれど、どこまで本当だったかもわからないけど。でもね。
「……彼女達が離れていったのも、私に思うところがあってのこと。だとしても、私は彼女達を信じております。共に過ごしたからこそ、彼女達に誇りがあるとわかっております。あの乙女達は、そのようなことはしません。たとえ、私が命じたとしてもです!」
人を信じるしか出来ませんわ。そうだっていい。私、自分の気持ちに正直にありたいのです。
「それに、言質ですって? 聞き捨てなりませんわ。無理にでも犯人に仕立て上げようというのかしら。ならば、私は立ちはだかるまでですわ!」
彼女達こそ謂れのない罪ですわ! 私は見過ごせなくてよ!
私はどこまでも堂々としております。さあ、いくらでも笑いなさい。
「……」
「……」
彼らから嘲笑が返ってくることはなかった。どう言い返そうか、そう考えているようね。彼らにはまだ、私に対する敵意は残ったままだから。かといって、私のかつての友人を巻き込ませはしませんわよ!
「はははっ、啖呵ときたかぁ」
「オスカー殿……助かりましたが、笑われるとは」
オスカー殿は一人、笑っておられます。この空気感の中でしてよ。とはいえ、彼は中立でいてくださったのでしょうね。それには感謝したいところです。
「で、でも! 他に頼んだりとか……! だって、だって……! アリアンヌ様、私のこと嫌ってるし、憎んでいるから……!」
「ブリジット様。そのようなことありませんわよ?」
私は否定した。あなたがそこまで敵視することは、面白くはありません。ですが、嫌ったりや憎むなど、どうして。
「ううん、そんなことある……! だって、ヒューゴ様が私のこと――」
「……?」
威勢の良かったブリジット様が、急に大人しくなりました。その理由もすぐに判明しました。
「――ごほっ、ごほっ。遅くなってすみません、アリアンヌ様」
やってきたのは、ヒューゴ様。マスクをしてますし、まだ完治もされてません。
心配する私に対し、手で制してきたのもまた、ヒューゴ殿でした。彼が手にしているのは複数枚、大量の書類でした。
「……その、入るタイミングが中々なくて」
「あー、アリアンヌ様の啖呵に聞き惚れて?」
「オスカー! ……ごほん、彼は放っておきましょう。本題です」
オスカー殿に茶々を入れられましたが、ヒューゴ殿は相手にするのはやめたようです。
「……ブリジットへの襲撃。私なりにも助力させていただきました。まず、怪しまれるのはアリアンヌ一派。――ちらほらと噂され始めていましたから」
「……」
なんてことでしょう。噂が立っていたのですね、私がブリジット様へ敵意を抱いていたと。だから、彼女へ危害を加えようとした。それも、私が裏で手を引いてけしかける形で。
「疑いをもたれた彼女達、一人ひとりを洗いました。家の者やプロの力も借りながらですが。――結果、彼女達は潔白でした」
ヒューゴ殿はしかと断言された。積み重なった書類も、彼らが必死に集めてくれたものなのでしょう。
「……ありがとうございます、ヒューゴ殿」
本当に、本当にありがとうございます……彼女達の疑いを晴らしてくれて。私が感謝の気持ちを込めていると、ヒューゴ殿も優しく微笑んでくれました。
「……肝心の黒幕は、中々尻尾を出さないようですね。プロの力をもってしても」
ヒューゴ殿は同時に調べていたようです。彼はどこまでも真剣でした。
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