首謀者だと疑われて。
馬車での送迎後、イヴと連れ立って歩いておりましたが。どうも……どうもなのです。
婚約破棄の後、私を嘲笑する視線はありました。ですが、今回はそういったものではなく。敵意ある視線に晒されながらも、学年を分かつ階段へ。
「……僕は」
イヴは心配してくれているからこそ。私を一人にするのを躊躇っているようです。付き添わせるわけにはいきませんわね。
「私は大丈夫ですから。お行きなさい」
「……ですが」
イヴは今回ばかりは下がらない。あなたも感じているのでしょうか……この、今までにないほどの嫌悪の眼差しを。
「――でしたら、昼食。たまには一緒にとりませんこと? あのテラス席でも食事をしたくて。励みにもなりますわ。命令……ともいいましょうか」
「……かしこまりました」
イヴは一礼して、去っていった。もっと上手い言い方もあったのでしょうね……。
「……さて」
一人になるとより、視線が集中しますのね。ですが、私には道理がありませんから。このような扱いを受ける道理など。堂々とするまでです。……昼食を励みに。
「ごきげんよう――」
刺すような視線は、教室に入ると一層強まりました。級友達は、私に対して嫌悪の表情を隠すこともしません。
ヒューゴ殿のお姿はありません。彼はまだ療養中なのでしょうか。
「……ヒューゴ様を探してるの?」
発せられたのは、ブリジット様でした。口語ですが、険しい顔つきからして、この方が自然なのでしょう。私への恐怖心は……?
「ええ、そうですわね。お姿が見えませんから」
「……」
ブリジット様は黙秘されてます。顔を背けてもいます。答えてくださらないようです。
「ヒューゴはお休みだよ。風邪引いたってさ」
代わりに教えてくださったのは、オスカー殿でした。彼は教室中を一瞥すると、意を決したようです。
「……はあ。俺から聞いておくね。こういうの、本人にも訊いとかないとだし」
何か、言いづらいことを言う。そうみてとれました。
「……ふう。ヒューゴと一緒に風邪、ねぇ。実はさ、二人がデートしていた。でも、ブリジットが乱入してきて、流れてしまった。合ってる?」
「……ええ、そうですわね。乱入というのは、その」
助けを求めてきた、ですわよね? ほら、ブリジット様も口を尖らせていますわ。オスカー殿はそんな彼女に軽く謝っていました。
「……問題はその後。聞けばさ? ヒューゴは怯えるブリジットを振り切って、途中で広場に戻ったってさ? もちろん、アリアンヌ様に逢う為に」
「……!」
振り切ったのですか、ヒューゴ殿。私はどういった表情をしたら良いのでしょうか。いえ、お答えしなくては。
「……確かに、ヒューゴ殿は戻ってきてはくださいました。ですが、それは約束をしていたからです。彼はそれを守ろうとしただけ。その後は、おわかりでしょう? 私達は熱で寝込んでいたのです。密会しようもないでしょう?」
「その風邪もね? アリアンヌ様が移したんじゃないかって。まあ……ご想像にお任せ、というか」
「!?」
危うく噴き出すところでしたわ。な、な、なんてこと! ああ……いけませんわ! このように心が揺れていては、怪しまれてしまいますわね。
「……やっぱり。ヒューゴ様のこと好きなんだ」
吐き捨てるかのように言ったのは、ブリジット様。それに賛同するかのように、級友達も。「やっぱり。思った通り」
「だからか。だから、あんな――」
そう口々にしております。あら……だからか? 何が、だからだと言うのです?
「……あー。アリアンヌ様がですね? ヒューゴのことが好きで?」
相変わらず、教えてくれるのはオスカー殿でした。そんな彼でも、言いにくそうにはしています。
「……でも、ブリジットがいるじゃん? だからさ、ブリジットのことが気に食わなくて。邪魔になって」
――危害を加えようとしていたんじゃないかって。
オスカー殿ははっきりとそう言われました。
「なんですって……?」
私がですって? 一連のブリジット様の危機、私が首謀者であると? そんな馬鹿な話ありまして!?




