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粉砕された好感度……?

 私は自室にて療養をとっておりました。熱にうなされ、意識がはっきりとしたのは数日を経てのことです。

 ええ、今は本調子になりました。一日経過を診てましたが、問題もなさそうですわ。看病してくださった方々あってこそですわね。


 私は窓際の席に座り、読書をしておりました。明日には学園にも復帰できそうです。

 感染対策万全なイヴからも話を聞きました。ヒューゴ殿も風邪を引かれたとか。私に因果関係があるようで……いえ、ありますわね。戻る為に、雨の中強行してくださったのですから。


「登校したら、お詫びしなくては」


 彼がいつ復帰できるかは、わかりかねます。お見舞いにもいけたら望ましいですわね。


「……なるほど。薬草学も奥が深いのですわね」


 私はヒューゴ殿を見習って、薬草学や草植物にまつわる知識を学んでおりました。


「なるほどなるほど……」


 思えばダンジョンにも草が生えておりましたわね。採取スキルが存在するくらいですから、価値があるものも多々あったのでしょう。はあ、学ぶことはまだまだありますわね。


「さ、寝ましょうか」


 私は肩にかけていたブランケットを、椅子の背もたれへ。このまま寝ることにしました。




「ああ、復活しましたわ!」


 朝一番、私は全快しました! 朝食や支度も終え、あとは学園に向かうばかりですわ! もちろん、時間にゆとりもありますもの。読書でもしようと思っておりましたが。


 遠慮がちなノックの音。イヴと名乗っておりました。私は招き入れることにしました。


「おはようございます。どうなさったの?」

「……うん、おはよう。体調良さそうだね」

「ええ、おかげ様で。あなたも献身的に看病してくれたとか」

「……それは別に」


 私は労おうとしたのですが、イヴは手にした本をしきりに気にしていました。


「……復活したっていうなら、話さないとって」

「……イヴ」

「……言いづらいけど、ちゃんと伝えるから」


 病み上がったというのに、私の体は冷えていくかのようでした。歓迎できない話であることは明白でしたから。ですが、大事なことなのでしょう。私は彼の言葉を待つことに。


「……うん。見てもらった方が早いかな。大丈夫になったら言ってね?」


 イヴは心の準備が出来たのでしょうか。今度は私の準備が整うを待っているようです。ですが――。


「ええい、ままです! ……イヴ、私は勢い任せに動くタチなのです。さあ、さあ……!」


 私はイヴに迫りました。この勢いがある内に、さあ早く……! 


「わ、わかったから。はいっ!」


 慌てふためいたイヴは、勢いよく該当のページを開きました。そちらは――好感度が記されたページ。


「……こ、これは」


 オスカー殿も、殿下も、殿下付きの彼も。こちらの三名は、バツ印がなされていました。

 ゲーム時にはなかったものです。好感度が底面なのは、結衣の時でも見ていました。ですが、このようにバツ印がなされるなど。


 いえ、これまでも予測できなかったことが発生し続けてますから。イレギュラーの連発でもありますから。こちらは――フラグが成立しなかった。好感度が足りなかったから。今はそう思っておきましょう。何より。

 何よりです。私が愕然としてしまったのは。


「ヒュ、ヒュ、ヒューゴ殿……?」


 良い関係を築けたと、そう仰ってくれたのに。なんて、なんてことなのでしょう。


「そ、そんな……」


 彼にはバツ印はありません。全くの別物となっておりました。

 好感度を示すハートは、いわばハート型の器だったのでしょうか。中身も液体でしたから。それが、それが……。


 粉々になっておりました。割れたそれが、残骸となって表示されていました。

 液体はもれている状態です。元の数値がわからなくなるほど。どれだけ液体が、好感度があったのかが。


 ああ、何故なのでしょうか。一体、何がどうしてこうなった! プレゼント攻撃がまずかったのでしょうか? 時間差がありますから、それが今になって? 上限突破してしまったのでしょうか、プレゼント責めのせいで? 物量作戦もあったから? ……ああ! 


「はっ! ヒューゴ殿の精神に悪影響は……」

「それは大丈夫そうだけど……」


 割れて粉々でしてよ? なんらかの悪影響を与えているのでは? 顔面蒼白の私に対し、イヴは指で示しました。そちらはヒューゴ殿のイラスト――普段通りの彼。

 わかりません……! デフォルメキャラとなったヒューゴ殿が通常運転なのが、かえって怖いくらいです……! 


「……本当に何これ。あんなに抱きしめておいて」

「……」


 ええ、そうでした。あの現場はイヴ達もいましたから。はっきりと見られていますからね。ええ、しっかりしましょう。


「……私にとっても不明ではありますが。駄目ならバツ印があるはず」


 と、思うしかありません。私は確かに抱きしめられました。あの時の彼の鼓動、言葉も。前のような私に対する嫌悪は感じられなかった。関係は確かに良くなったのだと。


「――学園に向かいましょう」


 決戦の日は着々と近づいてきています。数日休んだことにより、何らかの変化もあるかもしれません。私は覚悟を決め、登校に至りました。




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