大量プレゼントですわ、怖いかしら?
学園へ向かう馬車の中、イヴがこっそりと話しかけてきました。
「……複雑ですけど。効果、あるといいですね」
彼が言っているのは、私が渡す予定のものでしょう。ヒューゴ殿への贈り物ですわね。
「……」
「……アリアンヌ様?」
「……ええ、そうですわね!?」
いけない、黙ってしまったあげく、声まで裏返ってしまいましたわ。ああ、イヴが不安そうにしています。私は笑顔で誤魔化すことにしました。
そうでしたわ。イヴには中身のことを伝えておりませんでした。
ダンジョン攻略で得た紫の宝箱たち。昨日、自室で開封作業を行いましたのよ。ランダム要素がありますの。開けるまでのお楽しみでしたが……。
『なんてこった!』
私、自室で思わず叫んでしまいましたわ……おほほ。はしたなくですわ、おほほ。何がお楽しみですの……!
どれもどれも、ノーマルばかりでした。ノーマルとは名ばかり、上昇値は微々たるもの! あんまりではなくて!?
――と、嘆くのもそこまでにしておいて。私、夜な夜な個包装しておりましたの。一つ一つを黙々と。こんな地道な作業をする必要がありましたのね……簡単操作の頃が懐かしいですわ。
ええい、物量作戦ですわ。今では開き直ってもおります。塵も積もれば山ともなりますもの。
「そう……こちらだけ」
一つだけ。あの輝いていた宝箱でしたわね。中身が違っておりましたの。こちらはあまりにも意外なものでしたが、きっと大切なものなのでしょう。
何はともあれ。イヴの協力もあってのプレゼント達。今は私の鞄の中に仕舞われてます。
受け取ってくださることを願って。
私は教室に着いて早々、ヒューゴ殿をお呼び立てしました。
場所はかつての私のサロンの場所。すっかり……人寂しくなってしまいましたわね。
「お越しいただきありがとうございます。お時間はとらせませんから」
「それは別に……あの、お話って何でしょうか」
ヒューゴ殿は心がざわついておられるよう。しきりに私の方を見ていらっしゃいます。ああ、警戒されているのでしょうか。関係は改善をされていると思いましたのに。
「――突然ではございますが。贈り物がありますの」
「……贈り物、ですか?」
あ。今は目に見えて警戒されてますわね。これは私にも伝わりましてよ。それでも受け取ってもらいますわ。
「以前、花束をいただいたでしょう? そのお礼にと」
「そんな、いいのに……。私があげたくて――」
ヒューゴ殿が口を噤まれました。後半がよく聞き取れなかったのですが、ご本人は話す気はないようです。
「受け取るだけしてくださるかしら? あとの処分はお任せしますから」
受け取った時点で、好感度は上がりますから。受け取ってさえくだされば。なのです。その後は、いかようにも。……寂しくはありますが、贅沢は言ってはいられませんもの。
「処分なんて!」
「!」
お、驚きましたわ。ヒューゴ殿が大声を出されるなんて。目をぱちくりとしている私に、彼はすみませんと呟く。そして。
「……贈り物、なんでしょう? 有難く受け取りますから」
「!」
ヒューゴ殿がなんと――はにかんでいるではありませんか。私は信じられなくて、高速で瞬きをしてしまいましたわ。ああ、彼が不服そうな顔をしておいで。渡しましょう、そうしましょう。
「こちら、お礼になりますわ。さあ、受け取ってくださいまし」
「こ、こんなにですか……?」
私は鞄からテーブルの上へ、プレゼント達をばさぁと並べた。ええ、たくさんのプレゼントでしてよ? 怖いかしら?
「……一つ一つにラッピングまで。大変だったでしょう。今度お礼をさせてくださいね」
「……まあ」
あらやだ。私の方が好感度が上がりそうになりましたわ。ぐんっと。こちらの労力を知って、そして心を配ってくださるとは。あなたという方は……。
「いえ、お気になさらないで? 私があげたくて用意したまでですから」
「……そう、ですか」
ヒューゴ殿はしんみりとしています。ともかくドン引きされなくて良かったですわ。
「本当にありがとうございます。開けてもよろしいですか?」
「……。ええ、どうぞ」
この場で開封なさるのですね。良いでしょう……薄い反応だろうと渋い反応であろうと。私は受け止めるまでです!




