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転生待機中の日々。

 どれくらい経ったかはわからない。私は大樹の近くで日々を過ごしていた。今日もそのへんの散策に出掛け、帰ってきた。


「どうもです。お疲れ様です」


 私は黒い人に挨拶をした。その人は会釈をしてくれた。彼は、大樹の番人なんだって教えてくれた。ずっと守ってくれているんだって。

 あまり喋らない人のようで、私とはちょっとした雑談程度。結構付き合い長いんだけどね。


 そう、長いんだ。私は前の人生を終えてから、結構ここにいる気がする。


 その人が言うには、『私達』は転生に時間がかかっているんだって。

 言われてみればだった。すぐに現れては消える、あの白い光は人の魂なんだって。それがほとんど。

 たまに人の形となって訪れてきて、交流を交わす、でも、その人達はすぐに転生していく。


 私達だけがずっとここにいる。穏やかな場所。変わり映えがないって言われたら、そうだとしか。でも、綺麗な場所だし、落ち着きもする。不安も訪れることもないところだから。うん、私は満足している。

 私と同じく、転生を待っている――彼女達の存在もあるんだ。おしゃべりに夢中だった二人は、私に気づいて笑いかけてくれた。


「おかえり、ユイちゃん。今日もお散歩の話、聞かせてくれる?」


 ほんわかとした口調の、おっとりめの子。茶色の髪を二つしばりにしている、小動物のようで守ってあげたくなる女の子。というか、美少女。肌も艶々で、顔のパーツ一つ一つがお人形さんのようで。本人は照れて否定しているけど、絶対に美少女だって。

 彼女はブリジット。番人さんがいうには、遥か昔の時代の人なんだって。


「ねね、ユイ! なんか、目新しいものあったー?」


 身を乗り出してくる、明るい子。肩くらいまでのワンレングス、背もすらりとしたモデルみたいな。私も結構あると思っていたけど、私以上。でもって、知的好奇心の塊。聡明そうって印象。実際にそう。

 セレステ。番人さん情報で、なんとまた驚いた。遥か未来の人だとか。


 過去から未来まで集ってくる。それが大樹なんだって。何でもありなんだなぁ。


 私はどうやら、彼女達が暮らしていた世界と違うみたい。それは、彼女達の話からわかったことだった。二人もまた、私の世界の話を興味深そうに聞いていた。


 私達はたくさん話した。生い立ちも異なる私達だけど、時間はたくさんあったから。

 変わらない世界の中でも、彼女達は潤いを与えてくれていた。


「えーと、話と目新しいこと――」


 いつもの雑談が始まる。他愛なくて大切な時間。



 ある日のこと。

 セレステが何かを持っていた。木材と工具セットだった。番人さんからだろうな。あの人、何気に色々貸してくれたりするから。


「前に話していたやつ。お揃いでなんか作らないかって。それもアクセサリー! ブローチとか、バレッタとか」


 前にしてくれた、セレステがしてくれた提案は素敵なものだった。私は二つ返事をした。


「うん、すっごくいいね! 私も作りたいっ」


 大人しめなブリジットも、この時ばかりは大はりきりだった。


 おしゃべりをしながらも、それぞれの形のアクセサリーが完成した。ええと……私のは、あれだ。不器用さが反映されてしまったけど、うん、いいよね! 上出来! 

 自分達の他にもあるのは、もう一つ。誰となく番人さんにも作らないかって、自然とそういう流れになっていた。受け取ってくれるかどうかはわからない。


「……うーん。ブリジット、いってみようか。あんたがおねだりすれば、いけるはず!」

「えっ! ……ええと、渡すだけ渡してみるね。それじゃあ、行ってきます」


 セレステからの指名にブリジットはすごく驚いていた。彼女は信じられないだろうけど、私も彼女が一番適任だと思っていた。


 セレステもだけど、ブリジットは不思議な子だ。なんだろ、人の頑な心を溶かすっていうのかな。これ、従姉の受け売りです。実際に説明文にあったのをパクって――。


「……?」


 変な感じがした。なんだったんだろ、今の。私は意識を戻した。


 そう、ブリジット。彼女が多分、番人さんと一番打ち解けている。二人で何やら親密そうにしているのを、私達は目撃している。一番成功率が高いのも、ブリジットでしょう。


「どうかな?」


 私はバレッタにしてみた。さっそく髪に留めてみた。セレステが似合ってると親指を立ててくれた。嬉しい。


「セレステのもいいね! 似合ってる!」

「へへー、ありがとー」


 私もお返しにと親指を立てた。セレステも満足そうにしている。セレステはピンブローチ……かな? 胸の辺りに飾っていた。似合っているわぁ。様になってるわぁ。


 こんな日々も幸せ。いつまでもって思っていたけど。




 いつもの雑談の時、やってきたのは番人さんだった。ブリジットが渡したブローチ、彼は身に着けていた。なんだこれ、微笑ましいな。きゅんきゅんする。


「――三人共。転生の日が決まった。急だが、明日になる」


 私達は急な申し出に驚いた。転生。ついにこの時がきたんだ……。


「規則上、転生先は明かせない。いずれも次の生をまっとうすることを願っている。――大樹のご加護をあなた方へ」


 番人さんは手で祈りの形を組んだ。彼を通しての大樹からの祝福、私はそう思えた。



 実感がわかない。急な話でもあった。でも、私達は明日になったらお別れだった。笑って別れようと思ったけど、それは無理だった。号泣したまま、三人で抱きしめ合っていた。



 いつ寝たかはわからない。次、目を覚ました時には私は――。

 アリアンヌ・ボヌールとして。しかも断罪されている時に、私は前世の意識として彼女に入り込んでいった。




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