宝箱争奪戦、発生。
順調に宝箱を回収できております。
「ぴょ……ぴょんぴょん」
「はいはいっ! 良いですわよ、慣れていけば良いのです、イヴ!」
ラッキーラビットと連続でエンカウントしつつ、探索を続けております。イヴはまだ照れがあるようです。大丈夫、先方にも気持ちは通じていましてよ。その照れが良いと、報酬も弾んでくれましたわ。
「む? 堅牢なる檻の中にありますわね! イヴ、その位置から動かないことよ!」
石で出来た檻の中にあるのは、ひと際輝く宝箱。レアアイテムですわね! イヴも丁度遠くにいますからね。さあ、私のハンマーで砕いてしまいましょう。
「待って、解除――」
「ふんぬ!」
私は力を込めてハンマーで粉砕しましたっ! ああー、石が砕け散っていきますわ。
「おほほほほほほほ!」
力こそパワー。力技で解決するって、本当に爽快ですこと! 私の高笑いが反響しまくっておりますわ。
「さあ、イヴ。もう大丈夫ですわよ。もうじき最深部です。気を引き締めて……イヴ?」
「……」
もう近づいて良いのに、イヴはその場に立ち止まっていますわ。どこか引いてもいるのでは? あ、ぼそりと脳筋と言いましたわね。聞こえてましてよ!
「……う、うん。今そっちにいくから――」
イヴは気でも取り直したのでしょうか、私の元へとやってくる。そうかと思われたのですが。
「――誰だ!」
イヴは振り向きざまに、ナイフを投げつけていました。あさっての方向と見受けられましたが……いえ、イヴのことですから。
「……はあ。綺麗な顔して、こわい兄ちゃんですわぁ」
おそらくは投げつけられた相手。その割りには、ゆったりとした構え。
「うちの顔に傷ついたら、責任とってくれはりますの?」
その女性はナイフは地面に落ちていたナイフを拾い上げていました。換金したろ、とも言っています。ちゃっかりしておられること。
「お下がりください」
イヴは警戒しながらも、私を庇うように前に立っております。私は後方から観察することにしました。
「あなた達は……」
私はその女性の姿に驚きを隠せませんでした。その女性は……着物をはだけてきておりました。その胸の開き具合もですが、東洋の恰好でしてよ? こちらの世界にも存在していたとは。
女性に続いて、他の面々も姿を現します。男性ばかりですが、何ともまあ国際色豊かなものですこと。東洋の恰好はこの女性くらいですわね、各国からの集まりなのでしょうか。
彼らに共通しているのは――薄い茶色の瞳をしていること。同じ国? でしたら、服装がこうもバラバラなのでしょうか。
「……それにしても、困りますわぁ。うちらの狙い、無くなってしもうてますの。あんた方の仕業やろ?」
「狙い、ですって?」
「わかってはるやろ? ……紫の宝箱ですわ」
「!」
なんてこと。こちら以外にも、狙っている方がいたのですって?
「僕らが獲得している証拠、ありますか?」
イヴはまず白を切ることにしたようですわ。確かに。私達以外にもとっている可能性、ゼロでもありませんもの。馬鹿正直に答えることもないのかもしれません。
「ほーう、兄ちゃん? ええんやで? ――あんたらから強奪すれば、ええんやから」
女性はにやりと笑うと、背後の男達に指示を出してきました。彼女がリーダーのようですわね。言った通り、私達の戦利品を剥奪しようとしてます!
「どうする?」
イヴは私に確認をとってきました。私は考え、判断を下します。
「……いいえ。最奥までつっきりましょう」
「承知しました」
私は手っ取り早いことを選んだまで。このまま最深部まで走った方が、すんなりといきますわ。
もし彼らも宝箱を持っていたら奪い取るか。……いえ、その可能性も低そうですし。何より冒険者同士の強奪は禁忌ではなくて? 知りませんけど。
「強奪、ときましたか。そう簡単には捕まらなくてよ! さあ、参りますわよ!」
私は高笑いと共に駆けだしていきました。ああ、滑りますわね。気をつけて参りませんと。イヴも私の後方につきました。そうです、あなたもこのスピードについていらっしゃい!
「くっ、ちょこまかと!」
「このっ」
男達が私達を捕まえようとしています。ですが、追いつけないご様子。この脚力を侮らないでいただきたいですわ。
「何しとるん! おちょくられとる場合か!」
リーダーが一喝すると、男達は飛び掛かろうとしています。なんと。
「争いが避けられませんのなら……」
武力で襲いかかろうならば、こちらも武力で応じるしか。私はそう考えておりましたが。
「そのまま走って!」
「!」
イヴが私にそう言うと、彼は後ろ手に筒のようなものを投げました。張られたのは――煙幕でした。相手方は咳き込んでおります。
「お手柄です、イヴ!」
「……ありがとうございます。でも時間稼ぎだから」
粘着するかのように、煙幕は彼らを取り巻いております。おかげ様でこちらには実害はありません。感謝します、急ぎましょうか。
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