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従者からのお願いという名の念押し。

 私達はダンジョンの地へと降り立ちました。と同時に、乗り物も消失しました。一旦、役目を終えたのでしょう。


「ありがとうございます。帰りもお世話になりますわね」

「いえ……はい。帰りも、ですね」


 あなたには助けられましたわね。目を伏せていますが、怒っているようでもないです。まあ、よいでしょう。さて。

 空に近いこちらですが、曇っておりますわね。この地に訪れた途端にですわ。それに蒸し蒸しもしています。日本の夏を思い出しますわね。湿度ではこちらの方が上回ってますわ。


「あ……」


 ぽつりぽつりとした雨は、やがて勢いを増していく。ああ、傘を持ってきておりませんでしたわ。天候の要素もあったなんて、思いもしませんでした。


「よっと」

「!」


 イヴはどうとでもないといった模様。彼が手を一振りすると、なんということでしょう。私達の頭上に薄い膜が張られてます。雨を弾いているではありませんか! 


「僥倖です、イヴ! あなた、魔法が使えましたのね! ああ、あなたは本当に……」

「あー……」


 心浮かれている私とは異なり、イヴはどこか気まずそう。どう説明したものか、と。そんな彼の心情が伝わってくるではありませんか。


「……その、あれ。ダンジョン限定というか。僕、そういうの中心に覚えてきたから。補助的なものを念頭に」


 イヴは言いにくそうにしていますわ。そうでしたのね。私ときたら、浮かれ過ぎましたわ。魔法ときたら、でしたから。

――セレステ。セレステは魔法を扱えたと話していましたから。生まれ変わりというイヴもまた、と思ってしまいましたの。ああ……何でも前世が反映されるわけでもないでしょうに。


「イヴ、補助的なものとなりますと」


 現世のイヴもまた、大事ですもの。そう、攻撃特化の私を補佐するかのように、スキルを選択した彼のこと。どこまでも私を優先しようというのですね。従者としては素晴らしいことですが。


「その、良かったのかしら。あなたも他の能力を伸ばしたかったのではなくて?」


 冒険者の件も、私がそうしようとしたから。だから、あなたは忙しい合間を縫って取得したのでしょうから。嬉しくはあるのですが……。


「アリアンヌ様。僕はあなたの従者ですよ? 何を優先するかって……あなたです」

「そうではありますが……」


 ええ、そうですね。あなたはどこまでも従者であろうとしています。私も何を言っているのでしょうか。彼を困らせるだけでしょうに。


「時々、主らしくないところありますよね。ちょっと困ります」

「う、そうですのね……」


 敬語喋りにもなってますわ。よっぽど線を引きたいのかしら。


「……ほんと、困るなぁ」


 戻りはしましたが、イヴは憂いを含んだ表情をしていました。私には、彼の本意はわからないままでした……。


 

 ジメジメは続いたままです。湿地帯を歩き、洞窟達が見えてきました。冒険者達の姿もあります。入口にたむろっておられますわね。


「うわ、どこから入ればいいんだろ……」


 イヴの言う通り、形が異なる洞窟が並んでおります。

 しらみつぶしに入りますか? いいえ。私は最適解がわかるのです! どの洞窟が一番効率がいいのか――お目当ての物を入手しやすいのか! 


「イヴ、こちらです。さあ、入りましょう!」


 私は俄然張り切っております。先導して、手を振っているのです。イヴもやれやれといった感じでやってきました。


「良いですか、紫の宝箱ですよ? そちらを見かけたら、知らせるのですよ?」

「うん、わかった。紫ね。小さめね」


 私は手でサイズ感を伝えました。通常の宝箱より小さめなのです。色は珍しいですから、すぐにわかりますわよ。イヴも承知してくれたようです。

 そう、目的のもの。換金は出来ないアイテムとなっているのです。攻略対象のみに渡せますから、通常の冒険者でしたら見向きもしないもの。それが私に好都合! あの契約にも至ったわけですのよ! 


「……アリアンヌ様。もう一つだけ」

「なんですの」

「僕が先導するから。探知スキル使いながらじゃないと、危ないでしょ」

「まあ……そうですわね」


 私には習得することはありませんでした。大事なことではありますね。鍛え目的でもありませんし。

 イヴに先を任せ、私達は洞窟内へと足を踏み入れていきます――。




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