空飛ぶ迷宮へ。
「……まあ」
私は胸が高鳴って参りました。どうやら、私のパラメータはとんでもないようです。まずは一安心ですわ。実感はあったものの、私のやり込みは反映されていたようです。そうでなくては。
「ふふふ……」
これは、あの展開ですわね? 私のパラメーターを見て、一同驚愕するのですわね? とんでもないと。鬼のような強さであると! どれだけ修行をしたのだと! ふふ、やり込んだかいがありましたわ!
「の、の、脳筋だー!」
「ふふ、そうでしょうそうでしょう……え?」
褒められておりますの? 私、持ち上げられてますわよね? そんな、ねえ……?
物理全振りかー、とか。でも魔力も上げてるぞー、とか。こいつ攻撃のことしか考えてねぇ、とか。でも素早さもあるし、回避もある。どっちもそこそこだけど、とか。
「探索スキルとか。採取スキルとか。補助スキルとか! 色々あるだろうに、攻撃することしか考えてねえ!」
戦闘狂か! と、一同嘆かれているではありませんか! なんですの、なんなんですの!
「なんたること! 先手必勝ではありませんか。叩けば良いのです、叩けば発見次第、即、ではありませんか。モンスターさえどうにか出来れば、その後探索もしやすいではありませんか!」
私はそう主張しますが、なんでしょう。この孤軍奮闘ぶりは。イヴ、ねえイヴ? 何故目を背けているのです。あなたはこちらサイドではありませんか、イヴ!
「脳筋とは。いえ……脳筋かもしれません」
タイトルにもありますからね。ですが、私も、アリアンヌ様もきっとそう!
「ただただ攻撃力を鍛えたわけではありませんわ。素早さを鍛え、手数を増やすように! 回避を上げて、カウンターを仕掛けられるように! 防御力は生存力を上げる為の保険! 防御力に頼らなくて良いように、動くまでですわ!」
わかっていただけたかしら? 考えあってのことでしてよ?
「……結局は戦闘狂じゃないか」
ある一人の言葉に誰しもが賛同するかのように……頷いているではありませんか。イヴ、あなたまで……。
「……脳筋じゃありませんったら。私、個人の力にどうともなると思ってなくてよ?」
いえ、プレイ中はソロでしたが。イヴという協力者も得られたのは今回初です。これも何かのご縁、他の方も組めたらそれはそれで素晴らしいではありませんか。
「さあ、私達と組みませんか? 共に乗り越えて参りましょう!」
私が高らかなる誘いをかけると、まあまあなんてこと。
サーっと、人の波が去っていくではありませんか。彼らはそそくさと去っていくではありませんか! 火力面では御力になれますのに!
「……アリアンヌ様、僕がいますから」
困り笑顔でイヴはそう言ってくれました。ああ、イヴ。ありがとう……。あなたはやはり、私の味方でいてくれのですね……。
「ここまでだとは思ってなかった……。これは撤退の判断は早目にしないと……」
「……」
なんてことなの。味方ではあれど、油断は出来ませんわね。
「あー、そうだ。うち、乗り物の提供はできないし、資格もやれないんでね。うちの連中は、高額ワープゾーンを使ってる。嬢ちゃんらもそうするかい?」
男性がくいっと顎でさしたのは、奥にある通用口。高額ワープゾーン。どこまでもお金を絞り取るのですね。
「……っと。嬢ちゃんはまだお金がだったな」
「ええ、これからですわ。となりますと、別の道でもありますの?」
私が尋ねてみると、なんでしょう。男性はにやりと笑いましたわ。
「いんや? 頼み込むしかねえな? 手段を選ばず――」
「――ご心配なく。僕がお連れするので」
割り込んできたのは、イヴでした。私に聞かせたくないと、そういった様子です。男性はニヤニヤしたまま、それもそうか、とも。
「助かりましたわ、イヴ。私を乗せてくれるのですね」
「……ええ、まあ、はい」
イヴはしどろもどろになっています。顔も赤いようですが、イヴは突如――。
自身の両頬を叩きました。気合を入れた、といったところでしょうか。どうしたのかしら。
冒険者ギルドの外に出ると、イヴはライセンスを空にかざしました。白い羽が舞うと、現れたのは乗り物でした。バイクに似た形状のそれは、空中にあるダンジョンに連れていってくれるもの。
「後ろ、乗ってください。しっかりと掴まってください。ゆっくり行くようにはしますから」
イヴは事務的にそう言ってます。二人乗り、ですのね。慣れ親しんだイヴとはいえ、密着することになりますから。妙に照れはします。
「ええ、わかりましたわ。よろしくお願いしますわね」
私はイヴの言われた通りにしました。
「ひゃっ!」
私が腰に抱き着いたタイミングで、小さく悲鳴を上げたのはイヴでした。私は照れているのに、イヴはなんでしょうか。嫌がっているとか……? ちょっと傷つきましたが、私は何てことなく相乗りしましてよ。あなたが提案したのですのよ?
「雑念は捨てるんだ雑念は捨てるんだ雑念は捨て――」
イヴは唱え続けています……謎のフレーズを。ちょっとわかりませんわね。
「……失礼しました。アリアンヌ様、お連れするから」
「ええ、イヴ」
私達は空へと駆けだしていきました。
「まあ……」
速度はぐんぐん上がっていきます。都もあっという間に小さくなっていき、近づいてきたのは空に浮かぶダンジョン――洞窟群です。
天に浮かぶは、自在に姿を変える『迷宮』。
元は女神『マーサ』が創り出したもの。それは迷宮としてではなく――『楽園』として。
叡智や富が眠る、訪れた人々に恵をもたらすものとして。
いつしか楽園は迷宮へと変貌していったのです。それは――悪意ある人物によって。
魔物がはびこるようになり、地上への侵略もしてくるようになりました。そこで名乗り出たのが、各地の冒険者達でした。
ある者は自国を守る為に。ある者は名声の為に。多大なる富や、秘宝。封じられた書物、秘法。修行の為にと潜る者も。
一見、何の役にも立たないようなもの。使用用途がわからないものもそう。
理由はそれぞれ。とはいえ、平和が成り立っているのも、冒険者や兵のおかげといえましょう。
空に浮かぶ迷宮。彼らは本日も旅立っていくのです。
さあ、私達も赴きましょうか。




