裏ルートで取得しましてよ!
それからのイヴは取り返すと息を巻いていました。自分が隠し扉を見つけてみせると誓い、私よりも早く見つけてくれました。さすがですわね。
地下にある一室。こちらもまた、冒険者ギルドの一部のようですわ。薄暗い部屋の中、柄のよろしくない男女が戯れておいででした。退廃的な雰囲気な場、イヴはより警戒しております。
「……」
私とてビビッておりますわ。ですが、心持ち心持ち。気持ちでは負けない負けない。
カウンターの奥にて新聞を読んでいる男性。ひとまず彼に話しかけてみましょう。一番、それらしい方ですもの。
「失礼しますわ。こちらで冒険者登録を行ってくださると、耳にしましたの」
「……ああ、はいはい」
男性は新聞をそこらに置いて、手続きはしてくださる様子。契約、といきたいところですが。
「――契約の文面、確認させていただけます?」
捺印をする前に。私は書面を確認したかったのです。無条件とも思えなかったものですから。男性は適当に渡してきました。イヴもまた覗き込んできました。
「……アリアンヌ様、やめた方がいいと思う」
イヴは顔を顰めてました。それもそう、中々条件の厳しいこと。
こちらの証は仮扱い。向こうの匙加減で、突然失効してしまうこともあります。
負担が大きいのはこちらでしょうか――上納金を納める必要があること。ダンジョンでは金策も可能です。金貨自体も落ちておりますし、換金アイテムも落ちていたり。この要求額ですと、かなり持っていってしまわれますわね。
「すみません。この内容だととてもじゃないです。他に何かありませんか? 善処しますので」
イヴの方で打診しています。それを受けた男性は、イヴをちらりと見ました。
「他、ねぇ? たとえば――偽造とか? 兄ちゃんが持っているのを、そっちの嬢ちゃんに置き換える、とかな? もちろん、手数料はふんだんに頂戴するがねぇ?」
「!」
イヴが正式な冒険者だと見抜いておられたのね。イヴ当人も驚いています。
「なんだ、それでいいのなら」
「なんですの、そちらでよろしいのですね」
イヴと私は顔を見合わせました。二人同時でしたもの。
「……うん、僕のはどうなっても構いません。その方向で――」
「あ、お待ちなさい。違うのです、違うのですよ!?」
周りの方からも視線が集中しております。いずれも私に向けて……人でなしと思われているようですね。本当に違うのですよ? イヴも投げ出さなくてよいのですよ!?
「ご納得いただける金額を納めてもよくてよ。他の文面も――ええ、問題ございませんわ」
「アリアンヌ様!?」
イヴも、いつの間に集まっていた冒険者の方々も驚かれていました。そのように驚かれましても、私の目当ては問題ないわけですし。
「……なんだかね。まあ、いいさ。捺印お願いできるかい?」
「はい」
私は文面での契約を成立させました。私の手に降ってきたのは、冒険者としての証。懐かしき冒険者ライセンスなのです。ゲーム画面では見られませんでしたから、実物が今、我が手に――。
「……」
黒く禍々しい色をしておりますが、気にしてはいられません。これで私も晴れて冒険者ですわ! ダンジョンもようやくですわ!
「……」
私の憶測に過ぎませんが、アリアンヌ様もこうした手順を踏まれたのかも。
「金目当てじゃなくて、名声目当てか。それとも肉体の修行目当てか――」
男性は私に向けて手をかざしております。権限がどうの呟いていらっしゃるわ。まさか、私のステータスを見ようとしているのでしょうか。まあ、良いでしょう。私も気になりますし、確認を――。
「な、なんだこれは!?」
男性は椅子から転げ落ちていました。お怪我はなさそうですわね。信じ難いものを見たと、彼は震えております。




