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小川結衣の最期。

 それから寝不足のまま次の日がやってきて。私は、頭がぼうっとしたまま一日を過ごした。教室内でも寝てしまったのか、起きた時にはすっかり暗くなっていた。

 おかしかったんだ。友達や先生、警備の人。誰も起こしてくれてることもなく。門限もとっくに過ぎている時間、そんな夜道を私は一人、帰ることになった。



 迎えに来てもらおうと思っていた。こんな時間まで残っていたのは私だけど、それでもだった。何かあった時、私は全力疾走が出来ないから。そう思って親に電話をかけるけど、つながらない。


 おかしい。交番とかいった方がいいのかな。でも、なんで? 原因不明だけどおかしいからって?

 私は首を振った。急ぎ足で、出来るだけ人の多そうな通りを選んで帰ろうとする。タクシーでも拾って帰ろう。財布も確認した、うん、ぎりぎり足りる。


「……ユウ君」


 弟の名を呼んだ。彼にはまだ電話はかけてなかった。私はスマホを取り出そうとするけど、それを止めた。


「……ううん」


 自分でもよくわかってない不安感。両親ならともかく、疎遠となった弟を巻き込むのも気が引けた。


「……」


 後ろから人の足音がした。唐突だった。さっきまで、人の気配なんてなかったのに。


 殺意があった。怯んだ私は反応が遅れてしまい、振り向いた時にはもう――。




 今でもわからない。通り魔だったのか、それとも。私に……恨みがあった人物だったのか。


 よくわからないまま、私の人生は終わってしまった。最初は飲み込めなくて、茫然としたままだったけど。私は気づけば泣き出していた。もう止まらなくて、泣きじゃくっていた。


 選手生命を絶たれて、今度は自分の人生まで。

 それにもう、会いたい人達にも会えないんだって。どれだけ泣いたって、私はもう会えない。その事実に慟哭が止まらなかった。


 私は泣いて泣いて、気がつけば。

――泣き疲れて眠っていた。



 

 目覚めた私は、その光景に目を奪われた。

 壮大な大樹がそこにあった。取り巻いているのは、淡く白い光たち。数は数えられないほど。


「……」


 私は草地にそっと触れた。どこか温かい。感触がある、それなら私は生きているのかな。わからない。

 とりあえず、立ち上がった。神聖な場所みたいで、危険はなさそう。ここには、悪意もなにもない。そんな場所だからこそ。


「――ようこそ、小川結衣。生命を終えたあなたは招かれた」


 全身黒づくめの覆面の人。声からしておそらく男性。そんな人が目の前に現れても、私はパニックになることもなく。


「いずれ転生の時が訪れる。その時まで、羽を休めるといい――」


 彼の言葉をすんなりと受け入れた。私はただ、この温かな場所で待っていればいいんだって。




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