ブリジット様……ブリジット様?
「昨日はお招きいただきまして、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ?」
教室に着いて早々、ヒューゴ殿に話しかけられました。下ろされた髪、いつもの姿ですわね。出ヒューゴ殿でしたから、こうみえて私驚いてはおりますのよ。
「あ、俺も俺も。すごく楽しかった!」
陽気にやって来られたのはオスカー殿。普通に割って入られたましたわね。ヒューゴ殿も顔を顰めているではありませんか。
それにしても、不思議な感じですわね。人当たりがいいオスカー殿もですが、ヒューゴ殿もまたそう。和やかな雰囲気で話しかけてくださるのですね。くすぐったくなります。
「……ねえ、お話途中だったよ?」
教室の中央からの声、ブリジット様からでした。彼女は笑んだままです。なのですが。
なんでしょう。この冷ややかな声は。いえ、私の気のせいでしょう。
「っと、ブリジット。ごめんね? じゃ、またね」
オスカー殿は軽く手を上げた後、彼女の元へ。
「……失礼します」
少し遅れて、ヒューゴ殿もまた戻っていきました。それから彼らは会話に花を咲かせております。ああ、楽しそうですこと。
『……ブリジットが、あなたを怖がっていますから。すみません、私達は貴女を招き入れるわけにはいきません』
そうでしたわね。ヒューゴ殿がそう仰ってましたわね。そう、ブリジット様。
「……」
セレステとの再会。ブリジット、あなたもそうでしたら良いのに。どうにか話せないものかしら。誤解されたままなのも、寂しく思えてなりませんの。
もし生まれ変わりだったのなら。そう思えば思うほどです。
「……ん?」
ブリジット様がこちらを見ておいでです。私の視線が気になってしまったのでしょうか。
目が合ったブリジット様は笑ってくださったので、私も笑みました。気分を悪くされてないようなら良かったですわ。
「――アリアンヌ様? お時間、いいですか?」
「ブリジット様? ええ、もちろん」
昼食時になると、ブリジット様がこちらにやって来ました。私が快諾しますと、アリアンヌ様は胸を撫で下ろしてました。
「良かった。あ……みんなごめんね。先行っててくれるかな?」
彼女はいつも共にしている方々に、話をつけているようです。
「ええ、かしこまりました。こちらは気にしないでください。お待ちしてますよ、ブリジット」
その中には、もちろんヒューゴ殿も。彼は優しい表情で言っていました。気にしないで。そう言ってもらえたことに、ブリジット様も安心していたのでしょう。ヒューゴ殿を見上げて、愛らしい笑みを見せております。
「うっ!」
なんてこと愛らしいこと! 私もくらっときましたもの。ヒューゴ殿でしたら、またしても悶えて――。
「……アリアンヌ様? どうなさったのですか? 妙な顔までして」
「はっ!」
あら……?ヒューゴ殿は呆れながらも、何かを言いたそうにしています。ヒューゴ殿……?
「……もしもですが。ブリジットの話がそこまで長引かないようでしたら……長くならないのでしたら」
こちらを見ておられますが、どうされたのでしょうか。そこから途切れてしまってますので、余計に気になりますわね。
「……あのね、ヒューゴ様? 話、ちょっと長くなるかもしれないの。待たなくて大丈夫だよ?」
あ、そういうことですのね。ブリジット様にお伺い立てていましたのね。いやだ、私ではなかったという。勘違いしていたのがバレないとよいですわ。――それにしても。
「でも、ヒューゴ様が待っていてくれるなら。私、嬉しいな……?」
「ブ、ブリジット!?」
まあ! なんとブリジット様ときたら、ヒューゴ殿の腕を組んで、み、密着しておられるではありませんか。さすがに動揺しておられるのか、彼の声は上擦っていました。
にしても、まずいのでは? 教室中から注目を浴びておりますわ。そうでしょう、彼女は婚約者がいる身であります。一国の王女としての慎みもですわね。
「おほん! ブリジット様? お話はおありでしょう? 早目に済ませませんこと? あなたも共に昼食をとりたいのでしたら、一層のことではなくて?」
私は大きめの咳払いをしました。響きますわね。私は笑顔のままで申したのですが、何故かしら。皆様がこうも慄いておられるなんて。
「……。はい、参りましょう? じゃ、みんな? またあとでね?」
ブリジット様も承諾してくれました。その時、ヒューゴ殿から離れることになったのですが。その……ですわね?
手を添わせる必要、ありますでしょうか。名残惜しそうに見つめる必要もあるのでしょうか。
「……」
彼女が話そうとしていること。まさかが浮かんでしまいますが、私の予想が当たらないことを願うばかりです……。




