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意外も意外過ぎて。

「……でもアリアンヌ様? 一応は、ほら」


 今度はイヴが教えてくれました。ええ、確かに。この中で一番液体が溜まっている方。とても有難いではありませんか! 私も確認することにしましたが。


 こちら……何かの間違いではありませんの?


「……これ、何かの間違いとかじゃないよね。信用していいものなんだよね?」


 イヴと被りましたわ。ああ、私だって――まさかと連呼せずにもいられない! ですが……。


「……いえ、これもまた現実。有難い、有難いではありませんか」


 私は書物にあるデータを直視することにしました。目を背けてはならないと。たとえ。

 前回、ブリジットと結ばれた相手だろうと。

 今回も尚、彼女への好意は据え置き、そう思わしき相手だろうと。

 まともに話したこともない相手だろうと。

 というか、今だからはっきりと言えますが――汚物のような目で見てくる相手だろうと。だとしても。


――ヒューゴ・クラージェ殿が一番好感度が高いのが事実なのでしょう。


 這うような好感度の中、唯一人。積もった思いもおありのよう。ならば、ここは腹を括りましょう! 前に焚きつけたような気もしますが、それはそれですわね! 


「……はあ、友人。友人だから」


 イヴは何やら念押しをしているようですが、私の視線に気づくと笑顔になりました。


「ほら、もうじき――お誕生日ではありませんか」

「あ……」


 そうでした。来る四月の下旬。アリアンヌ・ボヌールの誕生日。毎年、屋敷にお客様を招いてパーティを開いてもらっているのです。お祝いの話に私の気持ちは明るくなりましたが、それだけではないようですね。


「招いていない可能性もありますので……こちらの方でも、手は回してみます。ヒューゴ様。念の為、オスカー様も。さすがに殿下達は控えるでしょうし」

「!」


 私の誕生日に、あの方たちを招くと。ああ、素晴らしいですわ! これまで機会がありませんでしたわね。イヴ、よろしくてよ、イヴ! ……イヴ? 


「……僕はないんだ」


 イヴは攻略情報のページをじいっと見つめています。確かにイヴは対象ではありません。彼は主人公をアシストする立ち位置です。イヴ相手でしたら、攻略対象達よりは心を通わせやすいのでしょうが。


「……私は、あなたにそこまで背負わせたくありませんわ。義務と責任故、良くしてくれているのですから。私は充分でしてよ? ほら、心配なさらないで。あなたの思い人が私であるように、なんて。そのような強制など致しませんから」

「……!」


 イヴはどうしたのでしょうか。そんな、唇を噛み締めるかのような……。


「……イヴ?」


 心配になる様子ですが……。私の視線に気づくと、彼はなんでもないと笑っていた。


「……はは、本当になんでもないから。――ところで、アリアンヌ様。期限、あるのでしょう? おそらく、前の時だって」


 イヴは話の矛先を変えてきました。といっても、大事な話でもありますわね。


「……ええ、どう申してよいものか。前回と色々と異なっていますので、一概には言えませんが」


 ブリジットの登場も、婚約破棄のタイミングも異なっている。それでも、リミットは見据えていた方がよろしいでしょうね。早まる可能性も有り得なくはないですが……。


「……いえ」


 私がプレイしていた時、決まってこの日にエンディングを迎えていた。でしたら、この日であると信じることにしましょう。


「――五月末日に決行されておりました」

「……近いね」


 イヴの言う通り、時間に余裕はありません。それでも、この日までには。


「ええ、それでも。――ヒューゴ様との関係を築き上げてみせましょう。協力お願いしますわね、イヴ」

「……はい」


 イヴは引き受けてくれました。眉を下げていたので、本当は乗り気ではないのかもしれません。面倒事とは存じております。ですが、あなたの協力が不可欠になるでしょうから。

 よろしくお願いしますわね、イヴ。




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