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報われた思い。

「イヴー?」 


 私たちは王城をくまなく捜し回りましたが、イヴを見つけることはできませんでした。石化のこともブリジット嬢によって問題ないと思われましたが。


「イヴ様、帰ったのか」

「そんな……でも、そうとしか」


 これだけ捜しても痕跡がないのですから。最後に挨拶をしたかったのですが、本来は国外追放された身。留まるにも限界があるのでしょう。名残惜しくは思いつつも、私たちは城から出ることにしました。



 夕日が眩しい。もうこんな時間になってましたのね。


「――両名、止まれ」


 城から出た途端、私たちは包囲されてしまいました。取り囲むのは軍人たち、中心にいるのは。


「……」


 ディディエお兄様と。そう声に出すところでした。兄は冷徹そのものの目を向けてきていた。ええ、そうですわ……彼が愛した妹ではなくなった。公爵家の名を汚した存在なのだと突きつけられているよう。


「我々はこれより連行せねばならない――王太子殿下の命によってな」

「!」 


 連行ですって。それも殿下の命だと……。私もシルヴァン殿も疲労の限界であれど、そうは言っていられません。いつでも動けるようにと構えることにしました。


「……シルヴァン殿」


 シルヴァン殿は私に体を寄せてくれています。私を守ろうとしている、その気持ちが伝わってきます。


「……」


 そんな私たちを一瞥してくるのは兄でした。咳払いをした後、彼は宣告してきます。


「……貴公らは、孤児院――そしてボヌール家へ。一晩だけ過ごしてよいと、殿下からの恩赦である。有難く賜るとよい」

「……!」

 

 一晩だけ。そうだとしても……私は戻れますの? シルヴァン殿も驚いていました。そうですわね、思ってもみなかったことですから。


「馬車はイヴ・ポルトに手配させている。さあ、行くがいい」


 ああ、イヴ。彼は無事でしたのね。私は安心しつつも、やるせない気持ちでもありました。今も鋭い目つきである軍人たち。結局誤解されたままでした。


「……」


 私はいい。ただ、シルヴァン殿が――共に殿下を支えてきたでしょうに。本当にやるせない。シルヴァン殿にそう聞いたところで、彼は何てことないと答えるのだとしても。


「――色々とありがとうございました。行こう、アリアンヌ様」

「ありがとうございます……ええ、シルヴァン殿」


 シルヴァン殿は立ち去りたそうでした。私にもそのお気持ちはわかります。そう思った去り際の時。


「まあ……」


 軍人たちは一斉に動かれていた。一糸乱れぬ、軍人らしき――敬礼。それは私たちに向けたものでした。


「……」


 報われた、そのような思いになりました。何よりシルヴァン殿がそう思われたはずです。そうでしょう? 


「……ディディエ。皆様も」


 シルヴァン殿は彼らを呼び、彼もまた敬礼をしていました。その動きもまた、とても美しいものでした――。




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