助けたかったから。
「……終わり、ましたの?」
殿下を捕らえていた魔物は溶けて崩れていく。やがて、完全に消えていった。城内にとりまいていた異様な雰囲気もそうでした。私が思い浮かべたのは名無し殿たちの存在。彼らもまた、ダンジョン側の元凶を叩いてくれたのでしょうか。
「殿下!」
殿下はその場に横たわっていました。呻き声がします、意識は取り戻されているようです。私は駆け寄って、お声がけします。
「殿下……!?」
「……どうして戻ってきた」
殿下は朦朧とした意識の中、そう告げてきました。どうして、でございますか。
「単純に助けたかったからですわ」
「……俺もだよ。俺たちはそうしたかった」
それ以上の理由は見当つきませんでした。それは私だけではなくて、シルヴァン殿も。
「今更媚びを売ってくるか。俺を助けようと二人の不貞の事実は変わりない。無駄骨だったんだぞ?」
意識がはっきりされてきたのでしょう、殿下は自力で体を起こしました。彼は頑なでした。今回助けたことは、取り入る為と思われているのでしょうか……。
「無駄じゃない。俺たちはやっぱりあんたを助けたいし。戻ることも望んでいるわけでもない」
シルヴァン殿は殿下にも、そして私にも。優しい眼差しを向けていました。私も頷きました。
「ええ、そうですわ。覆らないのなら、それはもうよいのです。私たちがこの地を踏むのは最後。あなたにお会いするのも最後……今生の別れですわね」
「別れ、別れか……」
私が告げた言葉を殿下は繰り返しています。どこか茫然としたようなお顔で。さすがに考え過ぎでしょうか……。
「……そうだ、これが最善なんだ。『今は』これでいい」
「殿下……?」
以前にもお聞きしましたわ。ですが、今はとは――。
「……いいえ」
殿下が衰弱しているのは確か。今は追究することではないのでしょう。
「エミリアン様、治癒に長けた者を――」
早急に動こうとしていたシルヴァン殿でしたが、彼は足を止めます。私にもその理由がわかりました。
城内に降り注ぐのは、淡い光の雨。とても温かなものであり、満たしていくもの。
「――『聖女の力』」
私は自然とわかりました。この力は聖女――ブリジット嬢によるものだと。王城にまでやってきた彼女の力によって、癒しの力に包み込まれているのだと。
もう大丈夫なのでしょう。
「帰るとするか。イヴ様にも一声かけておかないと」
「ええ、そうしましょう」
私たちはもう、この国ですることはない。未練がないわけではないけれど、私たちには新たな故郷を待っているから。
「――殿下」
ぴたりと足を止めたのは……シルヴァン殿?
「どうか――『約束』を守ってくださいますように」
「……シルヴァン」
この言葉を残して、シルヴァン殿は殿下に背を向けました。私も微かに微笑みながら、彼についていくのでした――。
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