期待に応えるまで。
広々とした謁見の間。扉を開けた私たちを待ち受けていたのは――多くの魔物たちでした。そして。
「エミリアン様!」
「……!」
シルヴァン殿は真っ先に気づかれ、叫ぶ。私は両手で口を覆った。私たちの見据えた先に殿下のお姿はあった。けれども……。
殿下は御生存といってはよいのでしょう。ただ、彼は――。
「ああ……」
蠢く大型のスライムに吸収されていました。殿下は意識を失ったままです。
「今、お助けしますわ!」
最奥におられる殿下に到達するまでに、跋扈する魔物たちをどうにかしないと。私たちは剣を構えた。遮る獣人型や草花の魔物たちを斬り伏せていく。そこまではいい、でもそれが通用しない存在もいて。
「くっ」
私たちの目の前で分裂していくのは――スライムたち。自力で出来ますものね……!
「コアどうこうのレベルじゃねぇ……」
シルヴァン殿もごちていますが、全くもってその通りでした。コアを狙えばスライムは倒せますわ。それでも数が、あまりにも数が……!
「一網打尽するしかないか」
「ええ……同時に消滅さえできれば、ですわね」
同時に叩かない限り、永遠と増え続けていきそうです。私は横目で取り込められた殿下を見ました。目に見えて殿下は衰弱しておいでです。時間は残されていません。
「……お願いがあります。私に考えがありますの」
私はある考えに賭けることにしました。戦いながらもシルヴァン殿に相談してみます。
「……なるほどね。悪い、やったことはない。ぶっつけ本番になると思う」
「そうですの……」
無茶ぶりだったのでしょうか。ならば他の案を、いや、倒して倒しまくろうと考えていたところで。
「――だとしても、やってみせる」
「!」
シルヴァン殿はそう答えてくれました。
「ここらでケリをつけよう」
「……はいっ!」
私を安心させるかのような、力強い笑顔。とても勇気づけられました。
「さてと」
シルヴァン殿は床に片膝をついて、何かを詠唱していた。突如、辺りは薄桃色の靄がかかる。魔物たちの挙動がおかしくなっていた。彼らはふらつきながら、何かを求めているようで。
彼らはふらふらと、彷徨いつつあるようで――その実、ある場所を目指して歩いていた。そう、誘導されていたのだと、私は知ることになる。
「――頃合いだな」
シルヴァン殿の声と同時に、現れたのは巨大な光輪。魔物たちを包囲するとそのまま拘束していた。ええ、シルヴァン殿、ぶっつけ本番ながらもお見事でしたわ。上手くひとまとめにしてくださって。
「頃合いですわね!」
私も詠唱をしながら力を溜めておりましたの。私を両手を前面に押し出す。そこから放たれるのは巨大な光の弾。私の全魔力が込められていましてよ!
「はあっ!」
勢いよく放たれた巨大な光弾は、固まった魔物たちを消滅させていく。貫通して壁まで破壊してしまいましたが、そちらは致し方ないこと。
「はあはあ……」
魔力の激しい消耗により、頭がふらついてしまう。それを好機とみたのか、殿下を取り込んでいた大型スライムが私に襲いかかってきた。
「アリアンヌ様!」
立ち上がったシルヴァン殿が、駆け寄ってくる。彼は真っ青な顔をして。
「……ふふ」
ご心配なさらず、シルヴァン殿。私はあなたに倣うまでですわ。私だって。
「はっ!」
――期待に応えるまで。私は振り向きざまにスライムを切り上げた。ええ、分裂することでしょう。そうはさせない。切り上げによって露わになったのはコア。私は剣で突き刺して――今度こそ消滅させた。




