それぞれの戦い。
飛ばすに飛ばした馬車により、私たちはダンジョンへと降り立ちました。入口でお見かけしたのは名無し殿でした。
「――シルヴァン殿。それに……」
名無し殿は私を凝視しておいでです。こういうことでしょうか? 私が変装用の仮面を着けていないから。何故令嬢がいるのかといったところでしょうか。
「名無し殿。文、助かった。手紙の内容通りなんだな?」
「……ああ、そうだ。我々はダンジョンにて元を絶つ」
……! 名無し殿に限らず、精鋭の皆様が集められています。冒険者たちが一致団結して、元凶を討伐するのだと。それが彼らの戦いですのね。
「わかった……こっちは王城へと向かう」
「ええ、そうですわね。こちらはお任せくださいませ」
私たちは私たちの戦いへ。
ダンジョンを介して、私たちは都へと到達しました。王城へは途中で馬を拾い、向かうことにしました。道中魔物も跋扈しており、私たちを襲撃してきます。
「はっ!」
私は馬上から剣をもってして振り払います。名無し殿は私たちに武器を貸してくださいました。感謝してもしきれ――。
「せいっ!」
しきれませんことよっ!
「……魔物がこんなにも」
シルヴァン殿は焦れる気持ちで先を見ています。王城もみえてきました。じきに辿り着くことでしょう。
「ええ……」
あの美しかった王城も襲撃を受けており、損傷しております。皆様方が脱出しているとよろしいのですが……。
城門を越えた先に、臨時のテントが張られていました。ここは魔物の手が及ばないように術を施されているようです。私たちは馬から下りて、周囲を見渡しました。
「……」
「……」
兵士方の刺すような視線が痛い。私たちを信じられないような目でみてきます……醜聞が広まっているのでしょう。この状況では現状の把握が難しいと思っていましたが。
「――お嬢様!」
「!」
私の元へと駆け寄ってきたのはイヴでした。彼は今にも泣きそうな顔をしていました。それは私だってそう……私も彼との再会を喜ばずには――。
「……いいえ」
弁明も事情説明も、再会の喜びも。今は後回しにするべきでしょう。
「失礼しました、シルヴァン様もおいででしたね。状況の説明させてください。主に都が襲撃を受けています。オスカー様は防衛にあたっています。ヒューゴ様も治療するブリジット様の補助に」
「ええ」
「僕は王城の方へ。こちらが一番被害を受けているんです――ご覧ください」
イヴは私が真っ先に王城にくるとふんだのでしょう。イヴが指し示すのは王城。
「……内部はダンジョンと化しています。軍が突入しているものの、まだどなたも戻られていません」
ダンジョンですって……そんなこと、ありまして!? まさか、と私の脳によぎります。それは。
「――王太子殿下だけが残されたままです」
「!」
イヴの言葉を受けて、いきり立ったのはシルヴァン殿。彼は我先にと城内に入ろうとしています。
「シルヴァン殿!」
「あ……悪い、冷静にならないとな」
私は強めにシルヴァン殿のの腕を掴みました。ハっとした彼は立ち止まってはくれました。
「中がダンジョンだというのなら、こちらにも利がある。僕はそう思っています。僕もお連れください」
「……イヴ。ええ、お願いしますわね」
目指すは――殿下の救出。私達は王城という名のダンジョンに挑むことになったのです。




