表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

212/438

いざ、アルブルモンドへ。


 私たちは港に到着しました。もう深夜を回っており、人の気配はありません。


「……」

「……」


 私たちは顔を合わせて頷きました。無人ならばこっそり乗り込んでしまおうと。あの温かい人たちを裏切ることになろうとも――。


「――おーい、アリアンヌちゃーん! ついでにシルヴァン殿。なにやってんだー?……ま、その様子からして良からぬことだろうけどな」 

「……領主様」


 どうしてあなたが……真夜中の港にいらしているの。それにですわ。彼は漁師の方々を引き連れています。腕の立つ屈強な海の男たちを。


「……こっちの行動を読んだのか」

「!」 


 シルヴァン殿も警戒しています。私を後方にやりました。


「えー、なんだよ? なに怖い顔してんだよ?」 


 領主様一人が笑っていました。私たちはこれほどまでに緊張が高まっているというのに。


「……なんなんだよ――夜釣りにいこうと思っただけなのに」

「え……」


 シルヴァン殿、なんとも気の抜けた声なのでしょう。私までつられてしまいましてよ。


「船を出すんだよ――行先はアルブルモンドだ。お前達も乗っていくか?」 


 領主様、あなたという方は……本当に読まれていたのですね。


「ありがとうございます――」


 シルヴァン殿は頭を下げようとしましたが、制したのは領主様でした。


「……生きて戻ってきてくれればいい。俺達はな、同胞だと思っているからな」


 優しい声で仰ったあと、領主様は船へと向かわれていきました。私もそしてシルヴァン殿も。彼の背に向けて頭を下げたのでした――。



 船上では朝日が拝めていても、アルブルモンド領に入る頃には空が曇りがかっていきます。黒く淀んだ空の下、船は進んでおりましたが。


「……っ!」 


 近づくにつれ荒波が。立っているがやっとなほど船は揺れています。デッキにも出られないでしょう。


「くっ、これ以上は近づけないぞ!」 


 領主様のお言葉通り、船はこれ以上進められないでしょう。


「シルヴァン殿、泳ぎましょうか」

「……すーぐ、そっちの考えにいくのな」


 私の提言に対し、シルヴァン殿は思いっきり呆れられていました。『本当に泳ぎきりそうでこえぇわ』とも。そんな彼が懐から取り出したのは、冒険者ライセンスでした。なにやら薄く発光しているようですわ。


「ここはもう自国領だ。ダンジョンを介して乗り物移動ができるってことだよ」

「まあ!」 


 私は感動のあまり声を上げてしまいました。そう思い至ったシルヴァン殿も尊敬せずにはいられません。


「……領主様。お礼は改めて」

「ありがとうございました!」 


 会釈したシルヴァン殿は、私の手をとってデッキに向かっていきました。私も頭を下げ、立ち去っていきました。


「――おう、生きて戻ってきたらな。たっぷりしろよー?」 


 領主様のお見送りの言葉が耳の残ります。ええ、そうですわね。必ずや生きて戻りましょう――。



 荒れ狂う波の上、シルヴァン殿は乗り物を召喚しました。


「レンタル期間残っていて良かったわ……」


 現れたのは馬車でした。この船の上から飛び立つことになります。


「アリアンヌ様は後部に――いや」

「ええ、シルヴァン殿」


 私はあなたの隣りがいい。シルヴァン殿もわかってくださったようで、頷きました。


 私を隣に乗せた彼は、馬車の手綱をとります。馬車が今、嵐の中へと駆けだしていく――。


「――殿下がわからない」


 そう呟いたのはシルヴァン殿。彼は手にしたライセンスを見ています。


「……あの人、戸籍抹消してないだろ」

「あ……」


 こうして使える、それが意味すること。ギルドにも登録されたままで……私たちの戸籍も残されたまま。それなりの日数が経っているというのにです。


「――今は救出することを考えるか」

「ええ……」



お読みいただきまして、ありがとうございました!

明日も続きを投稿予定です。

気に入っていただけましたら、高評価・ブックマークをしていただけますと

大変励みになります!よろしくお願い致します。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ