ブリジット嬢からのお呼び出し……?
放課後を迎えようとした時、私の机の中に手紙が入っていたことに気づきます。差出人の名を確認してみましょうか。贈り主は――ブリジット嬢からのようです。
「……いらっしゃらない」
当の御本人はもう向かわれたのようでしょうか。中身も開封してしまいましょうか。学園の倉庫に来てほしいと――シルヴァン殿の件で話があるのだと書かれていました。
「……」
教室でするような内容なのではないのでしょう。しかもでしてよ? 定番スポットともいえる、温室近くの場所でもないようですわ。ブリジット嬢、いつもそちらにお呼び立てしますのに。
この愛らしい筆跡はブリジット嬢によるもの、そのはずです。ですが、いつもとも違う感じもしてはいます……。
念には念を重ねましょう。私はイヴに一声をかけてから向かうことにしました。
学園内の最も北に位置する、連なる倉庫。人気などありません。生徒が訪れる機会もそうない場所ともいえましょう。
「ブリジット嬢?」
私は辺りを見回すも、彼女の姿が見えません。すれ違ったとも考えらますわね――。
ふと、私の目に止まったのは扉が開いていた倉庫。そちらで物音もしてます。ブリジット嬢、そちらでしょうか。私は近づいていきます。
「――おいでになったのですか、アリアンヌ様」
「あなたは……」
あの可愛らしい声ではない。この低い落ち着いた声は――シルヴァン殿? 彼が倉庫の中にいるではありませんか。
「この手紙は本物か……一応、悪戯かと警戒もしておりましたが」
私は倉庫内を覗き込むと、そこにいたのは確かにシルヴァン殿でした。彼もまた一通の手紙を手にしていたのです。何をもってして本物かは謎ではありますが、尋ねてみましょう。
「シルヴァン殿? あなたもブリジット嬢にお呼出しされましたの?」
「……何故ブリジット様が?」
シルヴァン殿は心当たりがないといったご様子です。彼はそう、本物と仰ってましたわね。私がやってきたのを確認した上で、本物なのだと。
「……アリアンヌ様からかと。前に孤児院に訪れた時、話せなかったことがあるからと。どうしても一目を避けたかった、誰にも打ち明けられない話をしたかったってな」
「……!」
私が孤児院に訪れたことまで記されている。そこまで書かれていたからこそ、シルヴァン殿も確認ということで来られたのでしょう。ただ、肝心な話。
「シルヴァン殿……私は差し上げていなくてよ。むしろ私もお呼ばれしましたの」
「……なるほどね」
私たちの視線はすぐに合わさり、状況を察知しました。これは――罠なのだと。シルヴァン殿は急ぎ倉庫内から出ようとしましたが――。
「――アリアンヌ様!?」
シルヴァン殿の叫び声によって、私は知る。私は――誰かに背を押されたのだと。前に倒れ込む体は思い通りにならない。そのまま顔面ごと打ちつけようと――。
「あっぶな……」
そうはならなかった――私はシルヴァン殿に受け止められていたから。彼に抱きとめられることによって支えられていたから。彼に助けられた。私はお礼を言おうにも。
パタン。開き戸だった扉は閉じられてしまった。
――私たちは閉じ込められてしまった。それも何者かによって。




