首都、魔物の襲撃。
カフェのテラス席に案内された私たち。広場を一望できる、目立つ席でもありますわ。
「……」
今でも注目を浴びています。通り過ぎる人々は私たちを横目で見ていますわ。見目麗しいシルヴァン殿が何よりでしょう。普段と違う姿の私も、そろそろアリアンヌ・ボヌールであると気づかれているのでしょう。
――婚約者がいる令嬢が、別の男と出歩いていると。
「……悪い、失念していた。出るか」
「ええ……」
シルヴァン殿も感じ取られていたようですわ。私たちは急ぎ気味に飲料を飲みきりました。
「……?」
それにしてもなんなのでしょう。この……身震いするような感覚は。悪目立ちしていた時とは異なる、不安になる何かが。
晴れやかだった空は暗雲がたちこめていく。私が上空を見上げた時には。
「……え」
初めは小さな影が点々と。けれどもやがて――『それら』がおびただしい数であることに気がつく。
「……」
同じく空を見ていたシルヴァン殿も絶句をしていて。それらは姿を現わしていき、私たちは悟る。
――天空のダンジョンより、魔物が襲来してきたと。
「……なんてこと!」
魔物が襲来してきたこともそう……殿下とブリジット嬢とはぐれたままなのもそう!
「……こちらへ。私は殿下方の捜索にあたります」
シルヴァン殿は私を逃がそうとしています。近くに控えていた護衛の方に私を託そうと。
「私も……私もご一緒しますわ」
「そういうわけには参りません」
ぴしゃりとシルヴァン殿は言い切ります。ええ、確かに……アリアンヌ・ボヌールは公爵家の人間。
「……ああ、その、あれです。軍は有事に備えておりますので。すぐにでも駆つけては鎮圧することでしょう」
シルヴァン殿の言葉通りになりました。すぐに駆けつけてきたのは、軍たち。我が兄ディディエも加わっていました。見事に陣頭指揮をとっていたのは――殿下でした。
「殿下……」
あれだけ恋に浮かれていた彼が、別人のよう……いえ、それでは語弊がありますわね。公務の時のお姿そのものでした。
「!」
ブリジット嬢の姿も発見しました。聖女と呼ばれる彼女は治癒の力も備わってます。後方にて治療も行っていました。
広場の魔物たちは制圧されたけれど、それだけでは終わりません。彼らは空へと駆り出されていきます。
「あ……」
小さく声を漏らしたのは、シルヴァン殿。彼の顔は青褪めていました。
「悪い、アリアンヌ様。俺は……!」
「シルヴァン殿……?」
支払いを済ませた彼はどこかへ走ろうとしている。どこかへ……きっと、孤児院の方へ。私を護衛に任せて、自分だけで――。
「……お待ちになって」
「うわっ」
私は先行く彼に追いつきました。シルヴァン殿、そこまで驚かなくても。まあ……本気走りした分、息も荒くなっておりますが。
「私も参りますわ」
「……っ」
シルヴァン殿、あなたは葛藤しているのでしょう。あなたが困ることになっても、私はあなたを一人にはしたくなくて……。
「はあはあ……」
「終わったか……」
街から外れるほど、魔物の残党は残っていた。私たちは邪魔だてする魔物らを狩りつくし、周囲にいないことを確認した。私は手に馴染む鉄の棒をそこらに立てかけました。
「くそっ……」
シルヴァン殿は駆けだしていく。向かう先は孤児院でしょう。私もまた、彼を追いかけていく。




