蔑ろなどは。
そのままシルヴァン殿と雑談を続けていました。下校のチャイムが鳴っても殿下は戻ってくる気配はありません。やはりブリジット嬢と帰ったのが有力でしょうか……。
「――アリアンヌ様。ボヌール家の方々もお待ちでしょうから。お送りします」
「……ええ、お願いしますわね」
しびれを切らしたようなシルヴァン殿に提案されました。イヴたちも待たせていますから。これ以上粘ることもないのでしょう。
私たちが帰ろうとした、その時――扉が開かれたのです。
「……あれ、残ってた?」
開かれたのは殿下……帰っていたと思われていた彼でした。
「はあ……殿下、よろしいでしょうか?」
「な、なんだ? シルヴァン……?」
溜息交じりのシルヴァン殿は笑顔で迫っておられます。こちらからは後ろ姿となってますが、中々の迫力でしてよ……?
「アリアンヌ様はずっとお待ちでした――あなたの婚約者として」
「!」
静かな怒り、そういったものをシルヴァン殿は宿していました。私だけでなく、殿下も慄いているようで。
「そっか……悪かったな。あとな、ちゃんと君が婚約者だってことはわかってるからな」
「ご理解いただけてないでしょう。今一度申し上げます――あなたの婚約者はアリアンヌ様です。あなたがないがしろにするような方ではない」
静かに諭すようなのに、それでも怒気が含まれているような。
「……シルヴァン殿」
私を庇おうとしてくださっているの? それは嬉しくもあり……そうともいえなくもありました。彼の立場がおありでしょうに。殿下とて気を悪くされるような――。
「……シルヴァン、お前も大概わかりやすいな」
殿下は微笑んだまま、それなのに渇いた声音でした。
「ってな! あーあ、怒られちゃった。本当ごめんなー?」
殿下はシルヴァン殿をおしのけて、私の元へ。彼は両手を合わせて謝ってきています。
「いえ、待っている間も退屈もしませんでしたから。絵画も拝見しておりましたの」
私は私で嬉しかったのです。殿下がこうして戻って来られるなんて。笑顔にだって自然となりますもの。
「……アリアンヌ、君もなのか」
「殿下?」
「……いや、なんでもない。さあ、帰ろう帰ろう!」
殿下はそれ以上言うことはなく、踵を返されました。
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