埋め合わせがしたい!
翌日の放課後、私は食堂の一室に招かれていました。殿下によるお招きです。入口に控えているのはシルヴァン殿です。私は彼をこっそり見ました。
「……」
彼にお礼を言いたい。贈り物の話がしたい。折を見てになってしまいますわね。
「殿下。文でもお伝えする形となりますわ。たくさんの贈り物をいただきまして――」
「すまなかった!」
「!」
殿下と向い合せに座った直後。殿下はまたしても机に額をこすりつけて謝られてきました。おそらく昨日の誕生日のことでしょう。
「いえ、お体が優れなかったと伺っておりますので。お加減はいかがですの?」
「……そ、そう。体調が悪くてだな? だからずっと寝てた、うん! 公務しながら寝てた、うん!」
殿下はやたらと早口です。信じたい気持ちはありますが、これまでがこれまででしたから。
「……本当だよぅ」
殿下は顔を上げられ、瞳を潤ませてます。甘えすがる声は私にだけでなく、シルヴァン殿にまで。
「なあ、シルヴァーン? そうだよなぁ? 俺、ずっと部屋にいたよなぁ?」
「……ええ、確かでございます。もっとも仮病でなければよろしいのですが」
「ちょっ! なんでそういうこというんだよ? シルヴァン、怒ってる? ねえ、怒ってる?」
「私が? 何故です?」
シルヴァン殿の若干怒りを含ませた声に、殿下は焦っています。シルヴァン殿は素知らぬ顔をしてますわね。
「……まあ、致し方あるまい。肝心な時に体調を崩した俺もよくなかった。婦人二人によくない思いをさせたままだ。それはよくないと思ってな!」
殿下は沈んでいたかと思いきや、勢いよく立ち上がりました。
「頼む、アリアンヌ! 今週末埋め合わせさせてくれ!」
殿下は懇願されています。ええ、断ることなどありませんが……。
「え、ええ。そちらはもちろん――」
「良かった!」
殿下はその流れでさらに前のめりになりました。おのずと彼の顔が近づく形となります。
「その、ブリジット嬢も一緒だけど。いいか?」
「……。ええ、かしこまりました」
私、一瞬無言になってしまいました。そのような予感はしてましてよ。これもまあ、断ることもないでしょう……殿下、あなたという方は。
「良かったぁ……あ、違うぞ? 違うんだぞ?」
それほどまで彼女と一緒にいたいのか、そういった私の思いを感じ取ったのでしょうか。殿下がされたのは否定でした。
「ほら、ブリジット嬢ってな――シルヴァンのこと好きだろ?」
「……!」
いじけているような殿下、気づいておいででしたの? ブリジット嬢の思い人のことが……シルヴァン殿であることを。私が困惑している間にも殿下は話を続けられます。
「俺はな仲をとりもってやりたいんだよ。その為に色々聞き出していたんだ。ブリジット嬢の好みとか……モロにシルヴァンだったけどな!」
くっ、と殿下は嘆いています。
「殿下、よろしいでしょうか? こちら、秘めた話でお間違いありませんの?」
「ああ、そうだぞ? 秘密の作戦会議だ?」
「……かなり筒抜けではございませんの?」
「あ」
殿下は通常の声、いえ、それより大きくもなってましたから。シルヴァン殿にもしっかりと聞こえてますわね。
「てへ」
まあ、聞こえていても越したことではなかったようです。殿下は舌を出して笑う余裕もありますもの。
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