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どうしても俺は。


「なんだなんだー?」 


 殿下は不審に思われたのか、そう思いきやそうではありませんでした。


「アリアンヌ、良かったな。ちゃんと気に入ってくれてるようだぞ」


 殿下はにこやかに話しています。そうでした、殿下はあげたところを目撃した上で、容認もされていましたわね。彼は部屋の至るところを指しています。


「ほら、あの置き時計も。ネクタイピンもそうだろ? 香水も綺麗に飾ってるなぁ」


 各所で飾られていました。複数個あるものも全部。私が差し上げたものが――全部。


「あ……」


 目に入ってきたのは、色鉛筆セットと――あの画集。そうでしたのね、あなたはちゃんととっておいたのですね……。


「……あ、時計といえば。頃合いか」


 殿下は御自身の腕時計で確認されてました。


「ブリジットがな? 夜なら予定が空いてるってことで、来るって約束してくれたんだ。あとで二人も顔を出してくれよなっ!」 


 じゃ、と殿下は退室していきました。いえ、殿下……さらりと何を!? 


「……ありえねぇ。こんな時間からとか、婚約者を置いてとか」


 殿下がいなくなると、シルヴァン殿はごちていました。


「本当にありえない……なんで部屋に連れてきてんだよ」

「……シルヴァン殿」


 殿下の動向も気がかりですが、私はどうしても目の前の彼にも意識がいっていました。あれだけ売った、売り払ったと豪語していたのに――実際は違ったのですから。


「……なんだよ」

「……いえ」


 私は自分で思った以上に、彼のことを見ていたようです。それでもどうしても言いたくて。


「……売っても良かったのですよ。あなたの足しになったらと」


 私はそう思って、そう割り切ってましたのに。


「……本音は?」 

「……!」 


 私から言わせようとしているのかしら。シルヴァン殿はずるい。ずるいけれど……。


「こうして大切にしてくださったこと……嬉しく思います」


 私からすとんと落ちた言葉。取り繕えなくなっていたのです。


「……そっか」


 優しい声。シルヴァン殿は柔らかく笑っていました。


「……俺も正直な話。もらった直後は売ろうとしていた。けどな、どうしても気になって……俺はまずは調べてみることにしたんだ。別に調べてからでも売ればいいって」

「……」


 私はまた彼の顔を見ました。彼は私を見ることはないけれども。


「……売る気にはなれなかった。どうしても手放したくなかった。どうしても俺は――」


 彼は何かを言おうとしたけれども、それ以上のことは――。


「――殿下がうるさそうだから、顔出しにいくか」


 私の方を見るようになったものの、シルヴァン殿は気まずそうにしています。話題をそらしたいほどに。


「……ブリジット様、自室に招いているだろうから。それも今に始まったことじゃなくて」

「!」 


 シルヴァン殿が語る事実、私は衝撃を受けるのみです。考えてみればではありました。このような夜の時間帯でも会う約束をしていること。それにです。日頃の様子からしてみれば、部屋に招き入れるのも納得のいくものであるとも。


「……俺からしてみれば急変だよ。確かに彼女はえぐいくらい可愛いし、財力あるし、孤児院の援助も申し出てくれたけど。俺との『交流』を増やしてくれたらって」

「えっ……」


 次から次へとでありますが、落ち着きましょう、私。シルヴァン殿は好みというのもあるようですが、そこはまあ仕方ありませんわ。私もお気持ちはわかりますもの。

 気になるのは後半の部分です。財力となれば……孤児院の力となれば、シルヴァン殿の心が揺らぐのもおかしくはないと。


「マザーが断ったよ」

「あの方が……」

「そう。俺も……正直安心した。孤児院のこと考えれば、なんだけどな。それでも勝手ながらも安心したし、俺がもっと稼げばいいだろってなった」

「そうですのね……」


 その方が彼らにとっては良かったということ、そういうことでしょうか。




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