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殿下に大切にされていますの……?


 教室に戻ってきた私たちを待っていたのは殿下でした。級友たちと雑談していたこともあり、彼は楽しそうにしていました。まあ……女子生徒と特に楽しそうにしていましたが、そこはまあ、殿下ですから。殿下ですもの。


「お、アリアンヌ! 待っていたぞ!」 

「殿下、お待たせいたしました。遅くなりまして申し訳ございません」


「いいんだよ。こっちが急に誘いたくなっただけだからな。よし、行くとするか!」 



 そのまま殿下に連れられ、私たちは都を巡ることにしました。シルヴァン殿も同席されています。


「お、今日も賑わっているな」


 私たちは市場までやってきました。殿下はよく市井に出られてますから、顔見知りも多いようです。よく声をかけられてますわ。

 買い食いも普通にされていますわね。私も倣いましょう。ちょうど今、おごってくださいましたし。私は礼を告げて受け取りました。


「――君のも美味しそうだな。食べさせてくれないか?」 

「……はい」


 私のフルーツ串が気になったようです。断る選択肢もないのでしょう。串、ですわね。直接食べていただく形でしょうか。私は手を添えながら彼の口もとへと持っていきました。


「……殿下?」 


 持っていったのですが……殿下は中々口にしてくださいません。殿下……この状況、かなり恥ずかしいですわ。


「……」


 私の顔が赤くなっているとおわかりでしょうに。彼は凝視するだけして、食べようとはしてくれません。


「……ぷっ」


 殿下は笑いをこぼしました。それから小刻みに笑っています。


「いやぁ、すまない! 愛らしくてな!」 

「なっ」


 あまりの直球ぶりに、私はさらに紅潮してしまいました。


「そうだな、いただこう」


 殿下はぱくっと一口。美味しいとご満悦です。そして、御自身のお肉の串も私に食べさせようと――。


「っと、貴婦人が人前だと厳しいかぁ……」


 と思い直し、殿下は結局食べ続けました。


「まあ、おほほ……」


 私はドキドキしてましてよ……かぶりついたらどうなることかと。色々な意味で。というか、食べさせている時点でも相当では? 



 それからも私たちは巡ります。通りすがる彼らの目に映るのは――仲睦まじき婚約者同士でしょう。

 そう……シルヴァン殿も称していたような。


「……」


 シルヴァン殿は笑顔を絶やさぬまま、控えていました――。


 殿下のお誘いも途切れることはありませんでした。私は私で困惑していましてよ。このようなこと、今までありませんでしたもの。


 シルヴァン殿と都合がつかない方が多いですから、私とイヴでダンジョンに繰り出したりもして。イヴはいつも付き合ってくれますわね……よいのかしら。


 ダンジョンで手に入れた宝箱をこっそりとシルヴァン殿にお渡しする日々。そんな日々がいつまでも続くのだと。


――いえ、そうとはなりませんでした。『彼女』の転入時期がやってきたのですから。



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