表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

189/438

喜ばしき婚約者。


 その日の授業を終え、私は学園の図書室へ訪れていました。

 私はシルヴァン殿のことを知らない。調べてわかったことは、イヴによってですものね。手始めに彼の父君の作品を調べることにしました。ここでわからなければ、今度は国立図書館に行ってみましょうか。


「……」


 美術のコーナーですわね。私は以前のことを思い出そうとしています。かつて食堂の一室で拝見した絵画。サインが記されていたはずです。名前は……確か、確か。


「!」 


 ええ、思い出しましてよ! 画集自体は無いと思いますが、文献でもありましたら。


「……あ」


 父君単独のというわけではないですが、私は関連してそうな書籍を見つけました。『若き才能たち』と記された本です。そちらに名が連なっていましたから。

 父君はとても評価されていた。若くして才覚を発揮し、多くの作品も生み出していたと。温かな画風が受けていたのに――一枚だけ。その絵は掲載されてはいなかったけれど。


「……狂王」


 タイトルでだけでもそう、ただならぬものでした。ダンジョンでイブも口にしていましたが、これは偶然なのか、それとも――。


「――あなたが目にするものではありませんよ、アリアンヌ様?」 

「!」 


 本は取り上げられてしまいました。私は何事かと思いましたが――そうしたのはシルヴァン殿でした。


「……ああ」


 こんがらがるところでした。今のシルヴァン殿は前髪も上げられており、佇まいもきっちりとされていますもの。


「シルヴァン殿……」

「調べ物も結構でございますが、程々になさってくださいね? ……気が滅入るだけですから」


 勝手に調べた。私は責められる覚悟でした。実際はそのようなことはなく、シルヴァン殿は咎めることはありませんでした。


「見つかってよろしゅうございました。私はあなたを捜しにきたのですから」 

「そうですの?」 


 どうやら彼は私を捜しまわっていたようです。私は首を傾げました。


「ええ。殿下があなたと放課後出かけたいと。お待たせしておりますし、早速ではありますがご同行願えますか?」 

「ええ、かしこまりました」


 シルヴァン殿は命を受けてのことでしたのね。それもそうですわね。


「エミリアン様、待ち遠しそうにしておられましたので」

「……そうですの?」 


 にわか信じ難いことではありますが、シルヴァン殿は嘘はいってないようです。少なくとも、彼の目にはそう映ったのでしょう。


「……愛されてますね」

「!?」


 それはさすがに、と私は反論をしかけました。いえ、それはまずいでしょう。


「……それでしたら、喜ばしくはありますわね。ほほほ」


 仮にも殿下の婚約者であろう者がですもの。私はうまく笑えていたでしょうか。


「……喜ばしい」


 反芻するのはシルヴァン殿です。彼の表情はどこか……茫然としているとも。さすがに気のせいでしょうか……。


「……。ええ、婚約者であらせますからね。仲睦まじいことは素晴らしきことでございましょう」


 シルヴァン殿は秀麗なる笑みをみせました。彼は私に伝えます。


「――アリアンヌ様が殿下の婚約者であること、それは私にとっても喜ばしいことです。どうか、どうか末永く殿下を支えてくださいませ」


 彼は深々と頭を下げてきました。その表情は窺えません。


「シルヴァン殿……ええ、誓いますわ」


 ええ、私は……アリアンヌ様もそう。昔から決まっていることを守ろうと頑張ってきた――王太子殿下のお傍にいるということ。


「……」


 ……決まっているのでしょう? そうして生きてきたのではありませんか。私は何を考えようとしているの。


「重々承知していますわ。だから面を上げてくださいませ」

「……かしこまりました」


 面を上げたシルヴァン殿は綺麗に微笑んでいました。それはまさに、主の婚約者に向けられたもの。そうですわね、私たちの関係はそう。


「……」


 きっと彼と望めるのは友愛まででしょう。私たちの関係に恋愛が成立することなどない。そうでしょう、シルヴァン殿? 




お読みいただきまして、ありがとうございました!

明日も続きを投稿予定です。

気に入っていただけましたら、高評価・ブックマークをしていただけますと

大変励みになります!よろしくお願い致します。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ