待ちに待った開封作業。
「……あー、こんなん渡してたねぇ。エミリアン様の趣味なのか? 希少価値のばっかなんだよなぁ」
「……」
彼は後ろから立って覗き込んできます。あの、シルヴァン殿? いえ、開封開封。彼に見られながらも、虹色のものは終えました。まあ……そうですわね。独特であれど、売れば高値がつきそうですわね。
いえ、次々といきましょう。イヴは大人しく本棚を見てますわね。彼を待たせるわけにもですわ。シルヴァン殿? ……知りませんわ。
「あー……その草から煎じるのがな、美容効果があるってさ。若返りもするって話」
ヒューゴ殿特化の紫の宝箱を開けても。
「あー……呪力がある玉だ。見つめ続けると闇に魅入られるとかで。それでも一部には需要があるとか」
オスカー殿特化の緑の宝箱を開けてもです……ええと、オスカー殿?
「……申し上げますわ。シルヴァン殿、お休みになられては? 私、ソワソワしますのよ」
「なんでだよ。別に見られて減るもんじゃないだろ。つか、気になってたんだよ。どうやったら開くのかって……なあ、チラ見しているイヴ様?」
「ちょっ、イヴまで巻き込みますの!?」
大人しく本を読んでいたイヴは、肩がびくっとしていました。
「ぼ、僕は本しか目に入ってないから! ああ、続きが気になるなぁ! どの本も読みたいなぁ!」
イヴ……。
「イヴもご一緒にいかが? ……もう、シルヴァン殿にも見られてますもの。気になるようでしたら」
「……ううん、大丈夫! 僕、嫌がることはしないからっ」
「よろしいですのに……」
遠慮なしに見てくるわ、値踏みしてくるわなシルヴァン殿もいますわ。あなたも気にせずと思うのですが……イヴはなんて。
「イヴ様、健気だわー」
「まあ、私もそう思いましてよ。イヴは本当に健気であると」
「……。おーい、イヴ様ー。主がなんか抜かしているぞー」
「まっ! なんでですの!」
急に妙な顔をしたシルヴァン殿、なんてお声掛けをしてますの!?
「……僕のことは気にしないで。ちょうど気になる本が」
イヴはイヴで本に夢中になっているようです。彼は背表紙辺りを気にしているようです。私の優れた視力からみて、一部が掠れているようですわね。
「うーん……『狂王――』? 肝心な名前の部分が」
「……ちょっと気になりますわね」
狂王。一気に興味を惹かれましたわ、私。
「……」
シルヴァン殿は急に黙られてしまいました。あれだけ明るかった表情に影がかかっているかのようで。
「……ほらほら、手を止めない。はよはよ」
私の視線に気がついたのか、すっかりいつものシルヴァン殿でありました。
「早く、早く」
こうして催促するシルヴァン殿もおられますし。続けての開封、ですわね。
「――で、俺好みのやつか。よし、今回はたくさんあるな!」
シルヴァン殿は両腕を組んで満足そうにしています。ええ、開けて参りましょう。
レアはなかったものの、いずれも高級品ばかり。シルヴァン殿は上機嫌です。もう口出しもしてこなくなりました。さあ、一気に開けてしまいましょう。
「――以上ですわ」
今回、かなりの量がありましたからね。時間がかかってしまいました。
「シルヴァン殿。前もっての話の通り、他のお三方にはお渡しすると。その点、御承知いただきますわね?」
「いやぁ、売らない? 黙ってりゃわからなくね?」
「こればかりは何卒御承知を。還元という形でお返ししたいですの」
「……はい、承知しましたっと」
シルヴァン殿は渋々納得してくださいました。
「もちろん、茶色の宝箱経由のものはシルヴァン殿のもの。お受け取りくださいな」
私は両手を広げました。ええ、たくさんありますわね。収納技術により持って帰るのは容易ではありますわ。
「……そうか、包装ないのか。手作り感満載の」
と、ぽつりとシルヴァン殿。
「あら、そうですわね。直渡しになってしまいますわ。ご了承くださいませ」
「……あ。いや、いい。そうだよな、売るし……売るわけだし! まあ、ありがとうございます?」
シルヴァン殿は悪いな? とお茶目に笑ってます。あざとさの極みでしてよ。
「……イラってするなぁ」
耳には届いていたイヴが、そう口にしてました。シルヴァン殿は悪い笑顔をしたままでした。
その後もいくつかのダンジョンを巡り、最終地点に着く度に開封作業をすることになりました。またしても、シルヴァン殿が後方に陣取って作業を見ていますわ。絡むことも忘れることもなく。




