冒険者たちの共同戦線。
「――お疲れ様。着いたぞ」
「ありがとうございました」
「どうもです」
シルヴァン殿の一声。私たちは後部から出ます。ええ、今日も待ち構えてますわね――魔導研究所。
「あら?」
冒険者の方々が入口に集められていますわ。中心にいるのは――。
「歴戦の冒険者の皆様。さっきの女の人もそうだったんだ」
イヴがこっそり教えてくれました。先程のご婦人もそう、名だたる方々でしたのね。ただ一人――異様に目立つ殿方が。
「……あの人はトップランカー。独特な格好してるけど」
「それは……否定はできませんわね」
あの魔物の頭を被った半裸の男性、彼も実力者でしたのね。それも頂点に立つような。
「――今回のダンジョンは、罠にかかった数によって崩壊する仕組みとなっている。そこまでは周知のはずだ」
よく通る力強い声。トップランカーたる彼を中心に話が進んでいきます。
「もちろん、皆、気をつけていはいるのだろう。それでも姑息で巧妙な罠が立ちはだかる。だが――皆の力添えがあって、罠の設置場所を完全網羅できた」
場に歓声が上がりました。大きな巻紙が開かれていきます。そこにあるのは、このダンジョンの完全マップ。罠の箇所も記載されていました。冒険者たちは頭に叩き込んでいます。
「……え、そこにもあったんだ。僕もまだまだだな」
イヴの探査スキルをもってしても、気づかないところがあったようです。よほど手の込んだ罠ですのね……。
冒険者の皆様は顔が晴れ晴れとしています。全員が全員気をつければ、途中で断念することもない。彼らはそれぞれの入口から赴いていきました。
「――シルヴァン殿」
「お疲れ、『名無し』殿?」
やってきたのは、陣頭指揮をとっていた彼でした。シルヴァン殿と面識がおありなようです。コンタクトも取っていたのでしょうか。そして……名無し?
「通称らしいよ。あの方、名前を名乗らないんだって。本名で登録するからギルド側は知っているようだけど」
「助かりますわ、イヴ」
イヴが補足してくれました。なるほどですわ。便宜上、名無し殿とお呼びしましょう。
「あなたの尽力があってこそだ。本当は大々的に知らしめたかったが……」
「あー、やめてやめて。俺、あまり目立つわけにはいかないから。つか、まとめたのはあんただろ」
名無し殿とシルヴァン殿はお互いを労っていました。彼らの御力があってこそでしたのね。
「――では、これにて失礼させてもらおう」
名無し殿は颯爽と去っていかれました。
「シルヴァン殿。あなたもご尽力してくださいましたの?」
「はい、やめてやめて。そういうのいいから」
「ま」
取り付く島がありませんこと。まあ、よいですわ。
「皆様も、もちろん私も喜ばしく思いましてよ――って、シルヴァン殿?」
ああ、シルヴァン殿? あなた、スタスタと行ってしまいますの?
「なにあれ、照れ隠し?」
「照れ隠しじゃねえよ。ああ……わかった、説明しておく」
イヴが揶揄すると、シルヴァン殿は引き返してきました。彼は嫌そうな顔をして説明します。
「そんな褒められるほどじゃない。俺にとっては造作もないことだからだ。俺が特化しているのは『罠』のスキル。蛇の道は蛇、解明にももってこい。それだけだ」
だから大したことはないのだと。シルヴァン殿はそう主張しています。
「まあ、シルヴァン殿。すごいではありませんか! 充分に誇れるスキルでしてよ。やはりあなたのご尽力あってのことではありませんの!」
ああ、息が荒くなってしまいましたわね。それでも私は興奮が冷めませんの。心の底から彼を褒めたくなりましたの。ああ、伝わってほしいですわ!
「くっ……そんなキラキラした瞳で俺を見るな……!」
シルヴァン殿は今度こそ顔を背けられ、そのまま歩まれました。あら、かなり先に行ってますわね。急ぎませんと。




